マーケティングの世界に大きな変革が訪れている。従来あまり活用されることのなかった多様なデータを分析し、企業のマーケティング戦略決定に生かす動きが急速に広がってきた。デジタル革命により、世界の情報量は今後10年で数十倍に増えるという予測もあり、今やビッグデータを企業活動に生かせるかどうかで命運が分かれる時代になった。
そこで、ベストセラー『SEXY LITTLE NUMBERS データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』の著者で、米国におけるデータ分析の第一人者ディミトリ・マークス氏に、ビッグデータを経営に活用する意味について伺った。

革命的な成果を生むビッグデータ

――いま、ビッグデータの活用は世界のビジネス界の最大の関心事です。その可能性の大きさについて、どのように認識されていますか。

マークス 可能性の大きさについては、もはや自明の理です。もともとデータの活用は目新しいことではなく、1世紀以上にわたってビジネスの現場で実践されてきました。しかし、近年、デジタル革命によって膨大な情報収集が可能となり、劇的な変化が起きているのです。

まず統計的に巨大なデータを入手できるようになりました。構造化されたデータだけでなく、文書・画像・音声・動画などの非構造化データも、従来とは異なる手法によって分析できるようになっています。
他にも分析のテクニックやプロセスが進化し、自動的に処理を行えるようになりました。以前は統計の専門家が知識を駆使して解析していましたが、現在はコンピューターのアルゴリズムを使った新しいやり方で解析できます。
今や技術的な課題はそれほどありませんが、大切なのは、ビジネスやマーケティングの局面で、そのデータ分析を元にどんな戦略を立てて行動するかです。新たに得た洞察を基に、さらにその先にある自社の競争優位に向けた活用に挑戦する、これが大切です。

――ビッグデータをどう活用するかで企業の命運は変わると。その科学的アプローチの重要さを、マーケターだけでなく経営者自身が理解して戦略を考えることが大切だということですね。

マークス その通りです。ビッグデータは適切に使えば革命的な成果を出せます。これまで企業の戦略決定はとかく経営陣の直感で行われることが多く、あまりデータを使っていませんでした。データ・サイエンティストは下から積み上げるような戦術レベルに留まっており、役員が決定をする戦略レベルとの間に大きなギャップがありました。ここを急いで埋めないと、企業としての存続が難しくなると思います。

それには両サイドから歩み寄る必要があります。最近は経営トップのデータに対する認識はだいぶ改まってきましたが、データ・サイエンティストの方も、専門的な分析に終始せず、データがいかに利益を生む手助けとなるかをトップ層に提案できるよう努力する必要があります。

まず、手元のデータをセグメント化する

――マークスさんは、計量経済学と実務経験を基にした独自のデータ分析手法を開発され、これまで数々のWEB広告、WEBキャンペーン、インターネット通販などの分野で大きな成果を上げて来られました。具体的にビッグデータをどのように使っていらっしゃるのですか。

ディミトリ・マークス氏

マークス 私はマーケターが探している答えを導く手助けとなるように、長年データ分析に関わってきました。顧客リストに基づいて、誰をターゲットにして話をするか、そして何を話すか。そのためにはセグメント化や予測モデルの作成といった手法を使います。マトリックスやダッシュボードなどの革新的な利用法も提案してきました。

私は2004年にシスコシステムズで働くようになり、セグメント化のチームを立ち上げました。企業がシスコ製品をどのくらい使い、その社内でのシスコのシェアはどうかなど、細かく項目ごとに見てセグメント化を行っていったのです。
これは従来大まかなくくりで見ていた顧客を、1つひとつ「粒」のように捉え直して対応する、つまり多項目にセグメント化されたものをさらに細かくセグメント化し、カスタマイズしていく作業でした。

私のチームは、手元にあった顧客データを有効活用してより多くの売上高を実現するためのプログラムを提案し、シスコはそれを全面的に採用しました。結果は大成功でした。さらに顧客ごとに今後12カ月以内に購入する次の製品を予測するモデルを作り、販促活動に力を入れました。その結果業績は大きく向上しました。
同じような成果をブリティッシュ・テレコム(BT)や米国の大型小売りチェーンなどにも適用し、次々と成果を上げることができました。

text:木代泰之

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ディミトリ・マークス
Dimitri Maex 

ディミトリ・マークス氏は、オグルヴィ・アンド・メイザー・グループのデジタルおよびダイレクトマーケティング部門「オグルヴィ・ワン」のマネージング・ディレクター。同社のデータ分析の第一人者。米フォレスター・リサーチ社が業界NO.1と認めるグローバル・データ・プラクティス・チームのリーダーでもある。計量経済学と現場の経験を基にした独自のデータ分析手法を開発し、グラクソ・スミスクライン、IBM、フィリップス、シーメンス、UPS、ユニリーバ、シスコシステムズなど、さまざまなグローバル企業に適用し、各社で実績を上げている。


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