視覚障がい者や高齢者など、書籍を思うように目で読むことができない人が、日本全国で数百万人にのぼるとされています。彼らの読書体験を支援しようと活用されたのが、クラウドソーシングでした。

書籍をクラウドソーシングで電子テキスト化

日本点字図書館をはじめとする全国の点字図書館では、視覚障がい者や高齢者など印刷物の読書が困難な方々(読書困難者)向けに、国際標準規格に基づいた点字図書や音声図書、電子図書の製作を行っています。これらの図書は、日本点字図書館が提供するオンラインサービス「サピエ図書館」を通じてダウンロードすることができますが、新刊書を読めるようになるまで何ヶ月も待たなくてはならないのが現状です。

そこで日本IBMは、社会貢献活動の一環として、読書困難者向け電子書籍化プロジェクトを支援しています。具体的には、日本IBM東京基礎研究所で開発を行っている書籍電子化支援システムを、日本点字図書館に提供。市販のOCRツールで読み取ったテキストデータの誤りを、書籍電子化支援システムを活用して検知・修正します。このテキスト修正を行ったのが、クラウドソーシングで参加したボランティアでした。全国から集った不特定多数の参加者の協力によって、迅速かつ効率的に校正され完成した電子書籍は、サピエ図書館の蔵書に加えられていきます。これにより、読書困難者がいち早く新刊書を読めるようになったのです。

クラウドソーシングの活用、そして、新しい活用の可能性

今回のプロジェクトで、大きな役割を果たしたクラウドソーシング。作業を小さく切り分け、多くの人々で分担するという効率化を実現するクラウドソーシングは、今回のように誰でも取り組むことができる仕事には大きな効果を発揮します。また、デザイナーやライター、プログラマーなど、専門性が要求される仕事にも活用されています。

クラウドソーシングは今後、どのような形で活躍されていくでしょうか? 発展の道は、大きく2つあると考えられます。1つは、リアルとの連携。ウェブの世界で完結せず、たとえば町工場などの製造業と連携をとることで、クラウドソーシングを生かしながら、新しいアウトプットを生むことができるかもしれません。もう1つは、クラウドワーカーを束ねるという考え方です。力のあるメンバーを束ねてチームとして動かすことで、個々人では生み出せなかった付加価値を持つようになるでしょう。
ビジネスから社会貢献まで。「みんな」の力は、多くの可能性を秘めています。

photo:Thinkstock / Getty Images