ビッグデータを使ったあるソフトウェアの登場により、運送業界に大きな変化が起こっています。

交通情報最適化ソフトウェア「ORION」とは

アメリカ三大運送会社の1つとして数えられるUPS社は、交通情報最適化ソフトウェア「ORION」によって、配達において最適なルートを即時に見つけ出すことが可能になりました。

ORIONとは「On-Road Integrated Optimization and Navigation」の略。同ソフトウェアには、2億5000万件以上の住所データや、配送に関する顧客の要件、カスタマイズされた地図が搭載されています。これらの情報は、2008年から2011年にかけて、同社の所有する車両にGPSと車載検知器を導入し、実際の配達作業を通して収集したデータ。ORIONを用いることで、同社で働くドライバーは事務所を出発するまでの間に、数万件の中から最も効率的なルートを知ることができます。

UPS社は2010年からORIONを本格導入した結果、年間で3,500万マイル(1マイル=約1,609メートル)の走行距離短縮を達成。また驚くことに、2010年からの2年間で300万ガロン(1ガロン=約3.78リットル)の燃料を削減し、結果的に28,000トンの二酸化炭素排出を削減しました。このことは、同社のCSR活動の一環としても評価されています。

UPS社の計画によると、2017年までに全ての車両にORIONを搭載することで、年間5,000万ドルのコスト削減が期待できるとされています。

テクノロジーの足りない部分を人の力で補完

ますます高度化されつつあるテクノロジーの可能性。とはいっても現段階では、ORIONにはリアルタイム分析機能は搭載されていません。しかし、それを補うのが、UPSで働くベテランのドライバーたち。天候や事故、交通渋滞などのロスタイムとなる原因も、彼らの長年の経験と勘によって、把握できる範囲の最適なルートを生み出せます。

また、顧客にとって、UPS社の顔となるのはドライバーです。顧客と接触する機会があるドライバーの態度やサービスは、テクノロジーには置き換えられません。同社の情報サービス部門長ジュアン・ペレス氏も「ドライバー自身の積み重ねてきた経験値は企業の成功には不可欠です」といいます。テクノロジーによって人が淘汰されるのではなく、人とテクノロジーが共存していることこそが、同社が成功している秘訣なのかも知れませんね。

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