2013年に公開された、とある映像が、「世界最小の映画」としてギネス記録に認定されました。撮影に用いられた最先端の技術は、今後のビッグデータ処理にも大きな役割を果たしそうです。

映画の主人公はなんと「原子の粒」

一人の少年が踊ったり、キャッチボールをしたり……。心が和む楽しげな映像です。どことなくレトロな雰囲気を感じさせる、1分半ほどの作品ですが、あなどってはいけません。その名も「A Boy and His Atom」というこの映像は、IBM研究所が最先端の技術を用いて撮影したもので、動き回る1つ1つの球体はなんと「原子」なのです。

2013年5月に発表されたこの映像は、「世界最小のストップ・モーション映画」としてギネス世界記録に認定されました。しかし、この映画が持つ意義は、単に「世界一小さい」ということを示すだけではありません。

「データ記録の限界」への挑戦から生まれた映画

IBM研究所では、次世代のデータ記録方法を探究する中で、かねてより「原子」に注目していました。現在、1ビットのデータをコンピュータや電子機器に保存するために必要な原子の数は、およそ100万と言われています。しかし、同研究所は、なんとわずか12個の原子を用いて1ビットを保存することに成功。これまでのデータ記録の限界を軽々と超える、「世界最小の磁気メモリー・ビット」を開発するにいたりました。この技術を使えば、今まで作られてきた全ての映画を、指の爪ほどのデバイスに記録することも不可能ではないのだとか。

この研究を支えたのが、同研究所の持つ「走査型トンネル顕微鏡(STM)」という設備です。総重量が2トンにも及ぶ超巨大な顕微鏡が、原子を動かすツールとして活躍しました。今回発表された「世界最小の映画」にももちろん、このSTMが撮影機材として用いられています。研究所の職員たちは、この研究成果を分かりやすく伝えるべく、STMを用いた映画の撮影に臨んだというわけです。

原子レベルの磁気メモリが実用化に至れば、今後もますます増え続けるビッグデータの処理などへの利用が期待され、まったく新しいコンピューティングの可能性を拓くことになるはず。そんな素敵な未来を予感させる映画のご紹介でした。