たとえどんなに成功しても、一つのビジネスモデルだけに頼っていると、企業の寿命はせいぜい30年といわれる時代になった。一方で職業寿命は50年におよんでいる。長い職業人生に見合った持続的な成長を企業が成し遂げるには、非連続のイノベーションを不断に仕掛けていくしかない。新しい世代のリーダーにはそれが求められている。
経営チーム強化コンサルタントで、リーダー育成のプロでもある株式会社プロノバ社長の岡島悦子氏に、これからリーダーをめざすビジネスパーソンへのアドバイスを伺った。

「共感力」を発揮しストーリーを語れること

――「経営のプロを増やす」というミッションを掲げておられますが、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか。

岡島悦子氏岡島 一言でいうと、経営チームを強くする仕事です。もともとはヘッドハンティングで経営のプロを外部から補強する「外科医」のような仕事をしていましたが、ここ7〜8年は、より包括的に経営チームをどうするか、というご相談を受けています。たとえば、次世代経営者予備軍の方々に会って選抜し、タレントパイプラインという母集団をつくり、子会社の社長への抜擢や幹部研修などを一緒にやらせて頂いています。いうなれば「漢方医」のような仕事ですね。それでも不足の場合には外部から経営のプロを招き入れます。

このように手段が変わってきた理由の一つに、サービス業のクライアントが増えたこともあります。労働集約型の産業で、現場への権限委譲が進み、マニュアルやルールよりも理念で統率する企業が多くなっているため、いうなれば「養子」のような立場の外部から来た経営のプロが理念を口にしても現場での腹落ち感が弱いのです。また、日本企業では生え抜きの幹部社員が多く、そこへポツンと外人部隊が入ると根付き感も悪い。そのため、たとえ時間がかかっても内部昇格のほうへと、企業の要請は傾いています。

――お仕事を通じて、いまリーダーに求められていることは何だと感じられていますか。

岡島 さまざまな経営課題がある中で、どの企業にも共通する最大の課題は「非連続のイノベーション」を仕掛けることです。これまでのビジネスモデルが金属疲労を起こしているのは薄々感づいている。とはいえキャッシュを生んでいるので潰したくはない。意思決定の舵切りに逡巡している企業は多いです。

しかし持続的な成長維持には非連続のイノベーションが欠かせません。顧客のニーズが多様化・細分化し、商品・サービスの寿命が短くなっているからです。そこで経営者に求められているのは、新規事業のリーダーに優秀な人材を抜擢する経営資源配分です。そうやって種をまき次の収益の柱を複数、育てていく。

とはいえ、何でもやればいいわけではありません。青臭い話ですが「どのような価値を提供するために我々は存在するのか」という理念やビジョンやミッションを言語化し現場に浸透させ権限委譲することが重要です。その際、仕組みによる感化だけではなく、人による感化も必要なので、合理性に加えて「共感力」を発揮しつつストーリーを語れる経営者も求められています。

あなたはバッターボックスに立っているか?

――そうした中で、これからジュニアマネージャー、シニアマネージャーになる人たちは、どんな姿勢で日々の仕事に取り組んだらよいでしょう。

岡島 身も蓋もない言い方に聞こえるかもしれませんが、仕事を一生懸命やるしかないのです。人はポジションでしか育ちません。OJTが、ほぼすべて。

ビジネスのプロに必要な能力のうち「技」の部分――つまり論理的な思考力、伝える力、経営知識・スキルといったものでは、もう差別化できません。なぜなら、そうしたノウハウは世に出尽くしているといってよいからです。したがってそれらは最低限の常識として勉強しておいてほしい。

技に基づいて正しい戦略をつくるのは誰でもできるようになっているので、それを実行する力とスピードをどれくらい担保できるか、ということが勝負の分かれ目になっています。それには「あの人が言うなら一肌脱ごう」と思わせるような人間力も必要です。こうした実行力と人間力は、残念ながら座学では身につきません。だから、とことん目の前の仕事に打ち込むしかないのです。

私はよく若いビジネスパーソンに「バッターボックスに立ってますか?」と聞いています。体験して成長する場にいるかどうか、修羅場をくぐっているか。ドキドキしたり、胃がキリキリするような意思決定を経験したことがあるか。ずっと二軍でボール拾いをしていてはいけません。若いうちに、どんなに小さな試合でもいいから出ておく。その体験量で大きな差がつきます。

text:谷川国彦

後編はこちらから

岡島悦子氏

おかじま・えつこ
岡島悦子

株式会社プロノバ代表取締役社長。グロービス経営大学院教授。筑波大学国際関係学類卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社、グロービス・マネジメント・バンク立ち上げに参画。2005年より代表取締役。2007年、「経営のプロ」創出のコンサルティング会社として株式会社プロノバを設立し、成長ステージに合致した経営チーム組成のための経営チーム診断、強化コンサルティングサービスを提供している。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leader 2007」に選出された。著書に『抜擢される人の人脈力』(東洋経済新報社)がある。


Sponsor Content Presented ByIBM

※日本IBM社外からの寄稿や発言内容は、必ずしも同社の見解を表明しているわけではありません。