2014年4月16日、IBM Cloud Vision 2014が都内のホテルにて行われ、各業界から数多くのリーダーが集まった。主催の日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役社長、マーティン・イェッター氏はオープニングで、「今、東京で、そして世界各地の主要都市で、歴史的な転換期を迎えている」と訴えた。その理由として、第一に、データが今や世界の天然資源としての役割を果たしていること、第二に、クラウドによって世界のITインフラストラクチャーが劇的に変革されつつあること、第三に、IBMがエンゲージメントと呼んでいる動きで、ソーシャル・ビジネスやモバイル・テクノロジーを通じて、個人が関わりあい、共感し合い、価値を交換し合っているという世界規模の動きであると述べる。
日本だけではなく世界各地のビジネスリーダーが一堂に会した本イベントを通じて、クラウドに対する理解と関心がさらに深まることへの期待と、新しいビジネスの創出に寄与できる喜びを語った。

※各セッションの講演内容をWeb動画にてご視聴いただけます。
http://www.ibm.com/ibm/jp/cloud/event/iclf/digital_library.html

ビジネス成長の原動力としてのクラウド

基調講演は、「ビジネス成長の原動力としてのクラウド」と題して、IBMコーポレーションのソフトウェア & クラウド・ソリューション 上級副社長のロバート・ルブラン氏が登壇した。

「クラウドがビジネスを変えていくのか、それとも、ビジネスがクラウドを変えるのか――。この両方が正しい」
ルブラン氏は、IBMが提唱するシステム・オブ・エンゲージメント(SoE)とシステム・オブ・レコード(SoR)という2つの概念を披露し、「システム・オブ・エンゲージメントとシステム・オブ・レコードが統合し、ハイブリッド環境を作り上げることによって、ビジネスにとって新たな価値が生まれる」と主張した。
システム・オブ・エンゲージメントとは、オープニングでも触れたソーシャル・ビジネスやモバイル・テクノロジーを通じた個人と社会の動きを扱うシステムであり、システム・オブ・レコードは、金融やビジネスを支えるバックオフィスのシステムである。

顧客をセグメントとしてではなく一個人として扱い、リアルタイムでお客様が必要とするものを提供するため、ビジネスプロセスそのものをスピーディーに変えていく柔軟性をもったシステムを活用することの重要性を述べた。

IBMは昨年、SoftLayer社を買収し、さらにアプリケーション開発環境としてコードネーム「Bluemix」を開発している。基調講演中には日本アイ・ビー・エムのGTS事業クラウド事業統括理事でありクラウド・マイスターの紫関昭光氏によってBluemixのデモも行われた。
ルブラン氏は言う。「インフラの上にソフトウェアを組み込んでいく上で、柔軟性や可視化、スピードを備えた最良のクラウド環境を提供するのがSoftLayerであり、あらゆるウェブサービスやデータサービスをクラウド化するPaaS(Platform as a Services)の根幹をなすのがBluemixです」

クラウドの活用によって開発者の役割だけでなく、ITマネージメントの考え方も変わっていくと指摘し、講演を終えた。
「コードを使ってゼロから作り上げるのではなく、自動車製造のように組み立てるという感覚になり、従来18カ月かかっていたものを18日で開発することが可能となる。次世代の開発者は、自社システムのみを使うのではなく、クラウドを通じて、他社の作ったシステムを活用するようになる。また、ITマネージャーの仕事のやり方や責任も変わり、複数のクラウドを管理しながら、次世代のビジネスプロセスをサポートするために何をするのかという観点のみで仕事ができるようになるだろう」

クラウドに対する官民の視点を知るパネルディスカッション

次に「ビジネスの成長エンジンとしてのクラウド」をテーマに、株式会社野村総合研究所 情報技術本部先端ITイノベーション部の上級研究員 城田真琴氏をモデレーターに、パネルディスカッションが行われた。

パネラーは、東芝の執行役常務 下辻成佳氏、総務省の大臣官房審議官(情報流通行政局担当) 渡辺克也氏、日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役副社長執行役員 下野雅承氏の3名で、それぞれ異なる視点からクラウドに対する現状と展望が議論された。

ICTの活用でスマートコミュニティを推進する東芝では、初期からテレビに付加価値をつけるサービスの提供からパブリック・クラウドを使用していたと説明。今後クラウドが次のステップに向かうためには、3つのS(シンプリファイド/シングルユース/シングルSLA)から3つのM(マルティプルSLA/マルティプル・ステークホルダー/マルティプル・プレイヤー)への移行が重要で、ビッグデータでよく言われる3つのV(ボリューム/ベロシティ/バラエティ)という視点がクラウドにも活かせると指摘する。

渡辺氏からは、国のIT戦略の変遷から「世界最先端IT国家創造宣言」をひも解き、積極的にITの活用を推進する4つの分野(高齢者の健康、エネルギー問題、インフラの再構築、地域産業)でクラウドを最大限に活用することが、今後の日本の成長戦略の要になると説明。ビッグデータ、オープンデータ、パーソナルデータ、という3つのデータをうまく流通する社会をつくるため、ポイントになるのがクラウドだと話した。

お二人の発言を受けた下野氏は、従来はいわゆるバックオフィス改善するためのコンピューターが、フロントオフィスに出たというのが、今のクラウドの流れだとの認識を示した。また、クラウドによって、社会や企業を変えるようなコンピューターの仕組みが進化しつつある今、現場を直接支援する、多様なIT支援の仕組みを作ることができれば、必然的にクラウドが加速し、定着すると予測した。

SoftLayerが持つ無限の可能性

パネルディスカッションに続いて、来日した2名のスピーカーによって特別講演が行われた。
特別公演の1人目、IBMコーポレーションのゼネラル・マネージャー、ジェームス・コンフォート氏は、「これほど多くのことが業界の中で同時に変化している時代は、前例がない。俊敏性が求められる」とし、IBMが全社的にSoftLayerを推進している理由を、「地域分散に対応したシステムが多国籍企業にとって重要であり、ひとつのメニューで管理できることを始め、すべてのインフラがひとつのプラットフォーム上で機能し、ユーザーはポータルを使って、的確に必要なものを組み合わせ、それぞれのビジネスニーズにあった形で導入できる。柔軟性、俊敏性、スピードを実現できるのがSoftLayerであり、顧客がパフォーマンスやセキュリティーにおいて妥協する必要はないからである」と語った。

特別講演の2人目は、SoftLayerのチーフ・ストラテジー・オフィサー、ジョージ・カリディス氏。
「SoftLayer は2005年、これまでと違った形のデータセンターサービスをいかに提供するか、ということを追求するために創立され、業界そのものを再構築しようとしている」
カリディス氏は創業時から貫かれるSoftLayerの姿勢について、「イノベーション、エンパワーメント、オートメーション、インテグレーション、この4つの言葉が我々の創業精神である」と語った。

クラウド・プラットフォームを提供するSoftLayerでは、昨年末の時点で全世界あわせて13カ所のデータセンターを所有していたが、現在IBMとともに、数10億ドルかけてデータセンターを増設している最中だ。
「我が社の顧客は、ネットサービスを提供して急成長を遂げている広告マーケティング会社、予約システムでクラウドを活用している航空会社、石油やガス田の開発企業など、幅広い大企業が我々を選んでいる。ひとつのデータセンターだけを利用する顧客もいるが、多くの顧客が国境をまたがった複数のデータセンターを利用しているケースが多い」

多国籍企業にとって地域分散に対応したシステムが重要であり、柔軟性、俊敏性、スピードを実現できるのがSoftLayerだと強調し、SoftLayerの無限の可能性を示唆した。

フランチャイズだからこそクラウドを活用したい(株式会社リラク)
朝に問題を見つけ、夕方には解決する(ヤフー株式会社)

リレー・トークでは、株式会社ロフトワーク代表取締役でMITメディアラボ所長補佐の林千晶氏をナビゲーターに、クラウドでビジネス・イノベーションに取り組む2社を紹介。リラクゼーション業界でフランチャイズ展開を進める株式会社リラクの代表取締役 江口康二氏と、ヤフー株式会社 友澤大輔氏が登壇し、それぞれにクラウド活用の実践例を聞いた。

日本で初めてストレッチをフランチャイズ展開しているリラクでは、ハイペースで開店する店舗間で、お客様の健康管理情報をクラウドを利用して一元管理している。今後は、クラウド・ビッグデータを使って、顧客の位置情報に合わせたマーケティングや来店予測のAI化を推進し、経営効率をより高めたいと言う。

売り上げが年間4000億円近くにのぼるヤフーで、利益率を保つために行っているのが、クラウド・ビッグデータを活用した毎日の業務改善だと明かす。朝、課題を発見し、午後に改善、夕方には課題が解決する、という「爆速」とも呼ばれるスピードで業務改善を行う。すべての対応スピードをあげるため、ハイブリッド・クラウドを利用し、事業展開を行っており、いまや失敗する怖さよりもスピードを失い、利益を失うことのほうが怖いという社風が組織の末端まで浸透しているという。
この先、パーソナルデータがもっと整備され、パブリックデータとしての性質を持つデータと企業側が持っている情報とを組み合わせた際に、ビジネスの可能性がますます広がるだろうと展望を示した。

ヘビは脱皮しなければ死んでしまう

リレートークの終了後、再び日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役、マーティン・イェッター氏が登壇。クロージングのスピーチを行った。

イェッター氏はこの日のイベントの中で、「ヘビは脱皮しなければ死んでしまう」というニーチェの言葉が出たことに触れ、この言葉こそが、まさに今の状況を表していると会場に語りかけた。
現在起こっている変化は、過去30年を見ても大きなものであり、ソーシャル、モバイル、クラウド・コンピューティング、ビジネス・アナリティクスといった一連の変化を同時に経験していると分析。しかし、この変化の中から新しいビジネスが生まれ、それはクラウドに基づくことは間違いないと力強く訴え、会を締めた。

会場では、SoftLayerやBluemixのさまざまなサービスや事例を紹介する展示スペースが設けられ、IBMワトソン(質問応答システム)によるレシピに基づいて作られたスペシャル・ドリンクやカクテル、前菜などが、来場者にふるまわれた。こうして、クラウドがもたらす未来への期待感が高まるイベントは、盛況のうちに幕を閉じた。

※各セッションの講演内容をWeb動画にてご視聴いただけます。
クラウドの理解をさらに深めるIBM Cloud Digital Library

text:野田香里


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