2014年5月19日、札幌市内のホテルにて 「IBMリーダーズ・フォーラム2014 Spring 北海道」が開催された。日本アイ・ビー・エム株式会社 北海道・東北支社長 樋口正也氏の司会進行のもと、多くの来場者が講演やパネル・ディスカッションに耳を傾け、会場にて交流を深めた。

Opening: テクノロジーで成長機会を

クラウド、ソーシャル、ビッグデータ、これらが手元の端末ひとつで操作できるようになるのは、5年先の話ではない。今日の現実である
日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役社長 マーティン・イェッター氏

日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長 マーティン・イェッター氏

日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長 マーティン・イェッター氏

イェッター氏は冒頭で、札幌市とミュンヘンが2012年に姉妹都市40周年を迎えたことを、自身がドイツ人であることから喜ばしく感じていること、そして、日本IBMが「スマーター・シティーズ・チャレンジ」を手がけた最初の都市が札幌であったことを紹介し、IBMリーダーズ・フォーラムを札幌で開催することについての感謝と喜びの言葉を述べた。
「18世紀は蒸気、19世紀は電力と歴史上大きな転換の要因があったが、21世紀、テクノロジーを考える上で、3つの重要なシフトが起こっている。第1に、データが新しい天然資源となり、企業の競合優位性の決め手となること。第2が、世界のIT基盤がクラウドコンピューティングによって変革し、新しいビジネスモデルが実現すること。第3に、エンゲージメントと我々が呼んでいる、ソーシャルやモバイルテクノロジーにより企業と見込み顧客や買い手の関係や、企業と政府がコラボレーションする方法も変わることである」

IBMは企業におけるビッグデータ活用のために、過去5年間に540億ドル以上を投資し、30件の買収を行うために170億ドルを投じている。SoftLayerを買収し、現在25カ所のデータセンターが世界中にあるが、さらに15カ所増やす予定であることを伝えた。
毎日、数億枚のDVDにあたる25億ギガバイトの情報が世界中で生成され、その8割は非構造化データだと指摘する。これらの情報から必要なデータを抽出できれば、企業はビジネスの宝庫を得ることになり、今日のフォーラムでは企業や政府が、互いにどのような対話をしていけばよいのか、皆さんと議論したいと締めくくった。

自然と都市の融合をテーマに、札幌市をIT活用都市に札幌市副市長 秋元克広氏

秋元氏は、自身の思い出として、「1986年に札幌市に作られた情報通信産業の研究開発型工業団地である札幌テクノパークに、IBMが1992年に入居したが、ちょうどその年の4月に自分はエレクトロニクスセンターに配属となった。札幌テクノパークができた頃は、民間企業が使えるインターネットがなかった時代であり、産学官共同で情報整備を行った。札幌市とIBMとはその頃からのおつきあいである」と、当時のことを懐かしく語った。

「IBM本社が2011年のスマーター・シティーズ・チャレンジにおいて、札幌市の提案を取り上げてくれた。その成果は、現在、札幌市の環境政策に取り入れられている」
札幌市におけるスマーター・シティーズ・チャレンジは、2011年3月にまとめられた「札幌市温暖化対策推進ビジョン」の実行計画策定に向けたIBMによる支援で、温室効果ガス排出量の削減や持続可能性向上をめざして、中期目標として2020年に温室効果ガス排出量25%削減を掲げた。

札幌市副市長 秋元克広氏

札幌市副市長 秋元克広氏

「札幌市は、自然と都市の融合をテーマに、ゴミの埋め立て地をイサム・ノグチの彫刻の公園とするなど様々な試みをしてきた中で、創造的な人々の活動や発想が新たな価値の転換を作り出すという観点から、昨年からは、ユネスコ世界創造都市ネットワークに加盟している。また、プロジェクションマッピングの技術が昨年から札幌雪祭りに活用されている」と、秋元氏はテクノロジーや情報活用に積極的な札幌市の立場を語ると共に、この日、IBMリーダーズ・フォーラムに来場した人々を札幌市が心から歓迎していることを伝えた。

パネル・ディスカッション「スマートな時代の新たな価値創出」

モデレーター:慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科特任教授・北海道大学大学院農学研究院客員教授 林美香子氏

地域の産業を振興させる上で、ビッグデータは非常に重要
パネリスト:株式会社北洋銀行 取締役頭取 石井純二氏

自分で情報を取りにいくという姿勢が大事で、ITのおかげで、それができる時代になった
パネリスト:経済産業省 北海道経済産業局 局長 増山壽一氏

ITは、距離を克服できる。世界の北海道と言われるブランド力を
パネリスト:日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 エンタープライズ事業本部長 薮下真平氏

パネル・ディスカッション

左から、林美香子氏、石井純二氏、増山壽一氏、薮下真平氏

続いて、産官学それぞれの立場から行われたパネル・ディスカッションでは、林氏による「北海道の可能性をどのように活かしたら良いか」という問いかけから始まった。

「これからの北海道が強く生きるために、食を産業化すること、食産業を軸に観光化すること、医療を産業化することの3つが求められている。この3つの成長分野において、ITの力によって、大きく飛躍的に発展できる余地があると考えている」と、増山氏は指摘。
それを受けて石井氏は、「北海道の構造的な課題は、第1に、人口減少・少子高齢化による、生産年齢人口の減少とマーケットの縮小であり、第2に、第二次産業が9%ぐらいで全国平均の半分しかないことから、経済の瞬発力が弱い、雇用の吸収力が弱いこと、第3に、事務所数の減少だ。こうした課題に対しては、小さいパイをどう増やすか、ではなく、パイのあるところにどんどん進出していくという姿勢で、定住人口から交流人口へ向けてインバウンドを増やすほか、特にアジアに対する北海道ブランド力の強化や、福祉、居宅型の高齢者住宅なども含めて推進したい」と新しいマーケットに向かっていくことの重要性を強調した。

さらに石井氏は、札幌市と稚内市がコンパクトシティ構想に前向きに検討していることを挙げ、「中心街の土地の有効活用や、除雪などの面でビッグデータの活用が期待できる。さらに、企業において一番大切なのはスピードであり、どれだけ質の高い必要な情報が瞬時に入ってくるかということが、これから重要となってくる。また、北海道には優良なものづくり企業が存在するため、銀行では、これまでの融資中心から、出資、販路の開拓といったサポートを増やす方向転換を目指している」と銀行の立場から語った。

薮下氏は、「人々がハワイに行く際、特にアメリカの一部だと認識せずに訪れているように、北海道に来る観光客にも、ああここは北海道だと意識してもらえるように、東京あるいは日本だけを向いたマーケティングではなく、世界のマーケットを目標に、ITを活用した物流システムの積極的な活用を」と呼びかけた。「昔は大きな店舗をいくつも作らなければ売ることが出来なかったが、今は小さなお店が、一気に世界中に売ることができる。これからは、人々の知恵を伸ばすためにコンピュータを使ってほしい」

ITにかける北海道の期待は大きく、「つなぐ相手とつながるために、情報提供する存在が重要だが、それがこれまでの北海道には欠けていた。ITはツールで、使わない手はない」と、増山氏もITによって実現する北海道の可能性を強調した。

講演:「新たな価値創出に向けたビジネスとITの融合」

クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モバイル、この4つが再び大きくIT環境を変えようとしている
日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役副社長執行役員 下野雅承氏

蓄積されたデータは、すでにどの企業も持っている。それを体系化することが、ビッグデータ活用の第一歩
日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 エンタープライズ事業本部長 薮下真平氏

続いての講演では下野氏が登壇。IBMが提唱する「システム・オブ・エンゲージメント」という概念を挙げ、「エンゲージメントには適当な翻訳がないが、ソーシャルやモバイルが実現するものをエンゲージメントと呼んでいる」と解説し、これからは、いわゆる企業のバックオフィスを支えるシステム・オブ・レコードと、システム・オブ・エンゲージメントをバランスよく成長させながら、「事業部門とIT部門が一緒になって、ビッグデータの時代を勝ち抜いていく必要がある。それを実現する基盤がクラウドだ」と指摘した。

続いて薮下氏により、株式会社本田技術研究所が行った、電気自動車用バッテリーの性能と安全性を向上させるためにビッグデータを利用した例や、富国生命保険相互会社による、コールセンターなどに寄せられる年間約60万件のお客様の声を、苦情判別自動化により分類し、業務量を90%削減したという、ビッグデータ活用事例が紹介された。

最後に、日本アイ・ビー・エム株式会社 北海道・東北支社長 樋口正也氏が挨拶し、盛況のうちに閉会した。会場の外では、IBMが米国の医療機関と共同で実証実験を行った、ビッグデータを使った診断システムのほか、京都のスマーター・シティの取り組み、SoftLayerやBluemixに関連するさまざまなサービスや事例を紹介する展示スペースが設けられ、多くの注目を集めた。

※登壇者の所属組織、お役職は2014年5月19日時点のものです

text:野田香里

展示の様子


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