日本の文化の輸出を試みる国策“Cool Japan”。アニメやマンガ、ゲームといったエンターテイメントコンテンツは、海外の一部で熱狂的な人気を博している。その人気を支えている希少なメディアのひとつが「トーキョーオタクモード」だ。
今回はCEOである亀井智英氏に、米ベンチャーキャピタルの500 Statupsに参加した経緯や「トーキョーオタクモード」のビジネスモデル、そして海外を視野に入れたビジネスの展開についてお話を伺った。

起業をするなら海外に向けてと思っていた

――トーキョーオタクモードを立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

亀井 前職が広告代理店で、10年所属していました。そのうち7年半は出向社員として3社に携わっていました。
当時はインターネットの広告枠を売るといった仕事が中心で、そのほかTwitterの日本進出の支援に関わっていたこともあります。インターネットは国境がないサービスなので、世界中どこにいても情報発信や情報収集ができます。そういうことを知っていくうちに、自分でインターネットを使って起業したいなと思うようになりました。

私はTwitterなど海外発のサービスの日本進出支援をしていましたが、逆に日本のサービスを海外に持っていったらどうだろう。インフラがまだ整っていない国に日本のサービスを持っていけば、その国のインフラが整ったタイミングで、そのサービスが盛り上がるのではと考えていました。

――そのときに、日本向けではなく海外に向けてコンテンツを発信しようと思ったのはなぜですか?

亀井 当時、大企業にFacebookでプロモーションをしましょうと提案していたのですが、Facebookの全ユーザーが5億人くらい。一方日本のユーザーは300万人ほどでした。この300万人に向けて大金を投資してプロモーションをするというのは、あまり効果的ではないと思っていて。
どうせならもっとユーザーの多い海外に向けてアピールしたらいいのではと提案しても、企業側になかなか受け入れられなかったのです。それはもったいないと感じて、自分で起業するならこの方向性でというのは思っていました。

亀井智英氏

サラリーマン時代に、現地視察ということでアジアなどを自費で回っていたんです。そうすると、いわゆる海賊版で日本のマンガやアニメを楽しんでる人がいる。しかし、それではコンテンツをコピーしている人と、それを買っている人の中でしかビジネスや笑顔が生まれていない。コンテンツを作った人に還元されていないという状況を目にしました。
この状況は決して健全ではないですし、この状況が続けば、先細りするだけだと思っていました。逆に、この課題を解決すれば、ビジネスチャンスがあると思ったんです。

日本の人口は、これからどんどん減っていくというのは明白です。そうなれば、日本全体の景気が落ち込んでいく。今後できることといえば、外国とビジネスをして売り上げを手にするか、日本の人口を増やすこと。前者だったら自分たちでできるかもしれないと思ったんです。

情報更新性の高さからマンガ・アニメ・ゲームを選択

――そこでマンガやアニメ、ゲームといった日本発のコンテンツを紹介するという方向性にいきついたわけですね。

亀井 最初は、日本の伝統芸能や相撲といったコンテンツも考えていました。しかし、伝統芸能は情報の更新性がないんです。だからこその伝統芸能なのですが。また、相撲は年6回しか本場所がない。インターネット、特にFacebookは、情報がどんどん流れていくフローのメディアです。多くの読者を集めるためには、定期的なコンテンツの更新が必要です。そこで、もっと情報更新性の高いコンテンツはないかなと考えたときに、食やファッション、マンガ・アニメ・ゲームといったコンテンツを思いつきました。そのなかでも、情報がものすごく回転しているのがマンガ・アニメ・ゲームだったんです。

マンガは毎週、何冊もの雑誌が出る。アニメは毎日テレビで放送している。街を見渡してもいたる所にアニメのキャラクターが描かれた広告があったりと、情報が多いので更新頻度も上げられる。そういう側面から、マンガ・アニメ・ゲームを選びました。

――通常なら、オリジナルメディアを作ろうと思ったときは、ホームページなりブログなり、インターネット上に自分たちの専用スペースを作って発信するのが基本だと思うのですが、トーキョーオタクモードはFacebookというプラットフォームを選択しました。これはなぜですか?

亀井 トーキョーオタクモードを始めたとき、僕も含め参加しているメンバーはすべて会社員でした。時間もありませんし、お金もない。そこで、FacebookというSNSを使って情報更新性の高いコンテンツとそれを求めるユーザー側の情報格差を狙っていけば、広まっていくのかなという感じで始めました。すでにあるプラットフォームなら、気軽に始められますし。

2010年11月くらいに中心メンバーにこういうことをやろうと伝え、2011年の1月にはマンガ・アニメ・ゲームで行こうという話をしました。みんなそういうジャンルは嫌いではないんですが、社会人になってからは疎遠になっていたので、秋葉原に行ったりして情報を収集して。そして3月24日に最初の記事を投稿して、トーキョーオタクモードが始まりました。週末や平日の夜に集まってミーティングをするという、週末起業のような感じで始めました。

――ミニマムスタートのようなものを目指していたと。

亀井 そうです。そもそも収益をどうやってあげていけばいいのかわからなかったんです。eコマースも視野に入れていましたが、とりあえずメディアを作って人を集めないとモノが売れるわけがないと思っていたので、とりあえず始めてみたという感じでした。

意識するとネタは街中に転がっている

――Facebookをベースにしたビジネスを展開する上で、結果を出すためにどのような取り組みをしていたのでしょうか。

亀井 最初は、おもちゃメーカーなどの大代表に電話して「トーキョーオタクモードですけど、プレスリリースを送ってください」とお願いしていたのですが、海のものとも山のものともつかないメディアということで、全然相手にしてもらえませんでしたね。会社組織でもありませんでしたし。

そこで、コンビニなどでやっている一番くじの景品や、ファーストフード店のおまけなどを購入してきて、それを撮影して記事にしていました。ネタはないだろうかと意識してみると、意外と街中にあるんですよ。交通広告などもアニメのキャラクターが使われていますし、それを記事にしていけばいいかなと思い始めました。また、アニメやマンガのイベントに参加して取材したりもしていました。あとは、製品の新情報などをチェックして、英訳して記事にするということをやっていたんです。そうこうしているうちに、コスプレ関係の記事にLIKEがつき始めたりコメントが書き込まれたりするのが目立ってきたので、そういうイベントに参加するようになりました。

亀井智英氏

最初の頃は、トーキョーオタクモードは誰も知らない状態でしたから、ただFacebook上の記事だけが上がっているという状態が続いて。もっと知ってもらうために何をすればいいのかを考えました。
お金も潤沢にはなかったので、とりあえず日本にいる友だちに教えたりしていたんですが、英語の記事なのであまり読まれない。一方で、Facebookページにはファンが立ち上げた有名アニメに関するFacebookページがたくさんあったので、そこに宣伝ポストを書き込みに行ったりしていました。あまりにも書き込みすぎて、そのページの主催者に「もうわかったよ」と書かれたりしたこともありましたね(笑)。
多いときは世界中の300ほどのFacebookページに書き込みをしていて。その国で一番読まれそうな時間帯に書き込むために、夜中の3時に起きたりとか(笑)。投稿は僕がやっていまして、コンテンツ作りやシステム的なことは、他のメンバーがやっていました。

そのほか、海外の日本オタクの人を紹介する書籍に掲載されていたメールアドレスに、「僕たちのサポーターになってください」とメールしたりもしました。一番手応えがあったのが、イベント機能を使って、アニメの映画の公開日に、みんなでそれを見ようというエアイベントを仕掛けたときですね。このころから、トーキョーオタクモードを見てくれる人が増え始めました。しかし実際は、思いつくことをほとんど同時にやっていたので、どの施策が当たったのかわからないんですよ(笑)。

――当初はマネタイズはできていなかったわけですよね。

亀井 スタッフは全員ボランティアでした。日本語の情報を英訳する必要があるわけですが、僕は英語が得意ではないので、英語のできるスタッフに頼んだり、外国に住んでいる日本語ができる「オタク」の外国人に英訳をお願いしていました。僕はエンジニアスキルがあるわけでもなく、ファイナンスに強いわけでもない。できることは人を集めることしかなかったんです。サラリーマン時代に出向が長かったので、いろいろな人とつながっていて、自分ではできないけれどこういうことをやりたいんだと言って、それに共感する人たちが集まってきたという感じですね。

text:三浦一紀

後編はこちらから

亀井智英氏

かめい・ともひで
亀井智英

Tokyo Otaku Mode共同創業者/CEO
1977年生まれ、東京都出身。
大学卒業後、サイバー・コミュニケーションズ入社。2004年からNTTアド出向、2008年からCGMマーケティング/デジタルガレージに出向し、CGMメディア立ち上げ広告担当、Twitter日本進出広告展開を推進。2009年から電通デジタルビジネス局に出向、ソーシャルメディア担当を歴任。
2012年4月、Tokyo Otaku Mode Inc.を米国デラウェア州にて創業。同月、米国シードアクセラレーター500 startups プログラムに参加。
トーキョーオタクモード フェイスブックページhttps://www.facebook.com/tokyootakumode


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