F1のインフィニティ・レッドブル・レーシングは2004年の創設からたった6年で並み居る競合チームを抑え、世界制覇の快挙を成し遂げました。その後も一度も王者から脱落することなく、昨年まで王者を保ち続けています。この持続的勝利にはドライバー、エンジニアチームといった表舞台の奮闘ばかりではなく、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)システムを使った車体開発、レースデータの解析という裏舞台の支えが隠されていました。

高価なITインフラを最大限活用する技術

F1では年々規制が厳しくなり、トラックでのテストや風洞実験で使用できる時間が制限されつつあります。そのため車両開発ではコンピュータによる風洞実験シュミレーションやレースシュミレーションが重要な役割を担ってきており、インフィニティレッドブルレーシングでは以前からシミュレーションを行うITインフラに多大な投資を行ってきました。しかしHPC導入以前の開発現場では、スーパーコンピューターでのシミュレーションやデータ解析が一度に1つずつしか出来ず、車両開発の遅れの大きな原因となっていました。

そこでIBMのもつプラットフォーム・コンピューティングの技術を用い、HPCシステムを構築。また、ワークロード管理プラットフォーム「IBM Platform LSF」を導入。優先度を考慮してワークロードを管理、システム・リソースを動的に割り当てることでシステムの作業効率を最大化しました。

車両の高速化を支える開発スピード

HPC及びLSFプラットフォームの実装により、デザインの複雑化への対応、ワークフロー及び個々のジョブ・スケジューリングの自動化が実現され、全体で20~30%のパフォーマンスとスループットが向上。さらにはこの効果でこれまでの2倍の早さでの新しい車両の設計、テストを可能にしています。

リアルタイム解析が支える最適な判断

またレースでは戦略もレースの勝敗を分ける大きな要因です。そのためにレース時のデータ(車両状態やドライバー、コースコンディション等)を逐次集め、「IBM Platform Symphony」によりリアルタイム・データを処理し、レース・シミュレーションを行うことはレース展開を考える上で強い武器になります。つまり、ビッグデータ解析による戦略と幾重にもシミュレーションを重ねて開発されたマシンが組み合わさることで揺るぎない勝利を得てきた、とも言えるでしょう。

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