「そこでは、みんな仲良く暮らしていて、親しげに話し合い、争いもおきていません。私は、MOOCこそが世界を平和にするのではないかと思います」 2013年1月、スイスのダボスで行われた世界経済フォーラムで、パキスタンから来た12歳の少女はこのように語りました。
MOOCとは、大規模公開オンライン学習講座(Massive Open Online Course)のこと。ネット環境があれば、世界の有名大学の講義をだれでも無料で受けることができることから、人種・国籍・老若男女を問わず世界中から受講者を集めています。教育のイノベーションを推し進めるといわれる、MOOCが持つ革新性について、3つにまとめてみました。

1. 教育の民主化

冒頭のエピソードからもわかるように、MOOCは、教育の民主化、すなわち機会均等を世界規模で促進します。また、MOOCのなかには、修了証を発行するものもあり、たとえばUdacity(*1)は好成績を修めた修了生に対して就職先を斡旋しています。単なる「がんばったで賞」ではない実利を保証することは、MOOCの大きな魅力の1つです。

2. 反転教室

「反転教室」とは、「教室で講義や知識を得て、家で定着させる」一斉授業から、「家で動画による講義を受けたあと、それをもとに教室で議論や発展的な課題を行う」学習へと、学びの空間や役割を逆転させるというコンセプト。MOOCによって既存の講義の価値が揺らぐ今、こうした「反転教室」の提供にどれだけ真剣に取り組めるかが大切になっていきます。

3. 学びの共同体

MOOCは、オンライン上に学びの共同体を準備し、生徒間、生徒教員間の交流を促進します。大学の講義や教材を無償で公開するオープンコースウェアとは異なり、MOOCではオンライン上に教室を再現し、学習進度を計る試験や、生徒同士が相互レビューを行えるユーザーコミュニティも用意しています。これにより、さらに深い学びが期待されます。

日本においても、2013年9月より東京大学がCoursera(*2)とタッグを組み、2014年春より京都大学がedX(*3)と協働して、提供が始まるそう。世界中の教育者が、よりよい未来を目指すための知識や知恵を惜しみなく公開する。そして、老若男女あらゆる人々がともにそれを学び、受け継いでいく。パキスタンの少女が語った未来は、今まさに実現しはじめようとしています。

*1 Udacity…米ベンチャーキャピタルも注目する、コンピュータサイエンスに特化したMOOC。
*2 Coursera…スタンフォード大学の二人の教授が起業した同名スタートアップによる、400万人もの受講生を抱えるMOOC。
*3 edX…MITを中心とした米大学が立ち上げた、トップクラスの大学の講義を無償で提供するMOOC 。

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