昨年の12月初旬、西麻布で一風変わった試食会が開催されました。
「IBMコグニティブ・クッキング」と題されたイベントの会場は、フランス料理レストラン。IBMとフレンチシェフという、一見奇妙な組み合わせにも思えるコラボレーションで、どんな料理が供されたのか。それを裏側で支えたIBM Watsonの解説を含めてご紹介します。

キーワードは「未来を味わおう。」――

生江史伸氏

「レフェルヴェソンス」のエグゼクティブシェフ、生江史伸氏

イベントフレンチレストランは、2015年のミシュランガイドで2ツ星を獲得した「レフェルヴェソンス」。
エグゼクティブシェフ、生江史伸氏のパートナーは、IBMが提唱するコグニティブ・コンピューティング・システムのテクノロジーを集約した「IBM Watson」が務め、コラボによって生みだされる料理によって先進テクノロジーを五感で堪能しようという趣向でした。

コンピューターの歴史をひも解くと、第一世代は計算機から始まり、約50年のサイクルを経て、OSやソフトウェアなどプログラムで動く第二世代へと進化。現在普及しているPCやスマートフォンもすべて第二世代に属するコンピューターです。
IBMが第三世代として提唱するコンピューター・システムがコグニティブ・コンピューティングという概念で、第二世代とはまったく別次元のものと位置付けられています。なかでも、IBM Watsonはコグニティブ・コンピューティング・システムのひとつとして、2007年から研究開発が続けられてきました。

Watsonの大きな特徴は、自然言語を解釈し、蓄積したデータを解析。根拠をもとに仮説を生成し、自己学習できる点です。くわしくはこちらをご参照ください。
What is Watson?

Watsonがシェフの感性を刺激して生み出された料理

アペリティフ

最初に来場者にふるまわれたアペリティブ「リラックス」

Watsonは、生江シェフとのコラボレーションのために、事前に世界の食材や9,000種類に及ぶレシピを学習して準備を整えました。料理を構成する素材と調理法の組み合わせから成分組成レベルで分析し、おいしさを感じるパターンを抽出。生江シェフが問いかける「食材×調理法×気分や季節など日常に関わるフレーズ」から、Watsonは条件から推測し、自分で学習したパターンの中からオリジナルなレシピを提案。

 

料理

左上から順に前菜「冬の街で凍った体を」、蕪の料理「君の蕪」、肉料理「贅沢な冬」、デザート「気分は赤と白と緑」

そのコミュニケーションの中から、シェフのクリエイティビティを触発したWatsonのアイデアが、オリジナリティあふれるフランス料理に昇華され、食前酒からデザートまで全部で5つの料理がテーブルに並びました。

季節感を活かした料理は、美味しいのはもちろん、一皿ごとに意外なアイデアが散りばめられ、会場からは驚きの声があふれていました。
試食会の最後には、生江シェフがそれぞれの料理に込めた思いとメニュー構成に至ったWatsonとのコラボレーションを解説。通常フランス料理では使わない素材や、人間のシェフにはできない発想の食材の組み合わせの提案があり、当初想像していたコンピューターとの協業というイメージを超えたやりとりの楽しさがあったと振り返りました。

さまざまな可能性を秘めたWatson

今回はシェフとして独創的なレシピを生み出したWatsonですが、さまざまな分野に応用可能で、実際に米国の医療や金融などの分野ですでに活躍しています。学習する知識データベースが世界中のレシピ集か、医学の学術論文になるかの違いで、どんなジャンルにもWatsonは臨機応変に適応できるので用途は無限大です。

膨大な情報量のデータ群があり、組み合わせやパターンが複雑で正解が1つではない――。迅速な意思決定が必要な局面で、人間が属人的に判断せざるをえなかったケースでコグニティブ・コンピューティングからサポートを得られる時代が実現しつつあります。
人とコンピューターの関係性にパラダイムシフトをもたらすもの、それがWatsonなのです。