初めての有識者会議として第一回の天城会議が開催されたのは1970年。「時代の変化を予見し、日本のとるべき道について、幅広い視点から各界の有識者の方々に自由に議論していただく場が必要」と、当時の日本IBM副社長、椎名武雄氏が考えたのが発端でした。立場の違うリーダー層が一堂に会する斬新なコンセプトの会議は、さらに4つの派生する会議を生みながら、毎年着実に続けられています。

「継続」が生み出す、人と人とがつながりあう未来

年に一度、天城会議は、議論を重ねてきました。集まるのは、産業界、学会、官界、言論界、文化芸術の世界など、多岐に渡る分野の50名ほどの人々。今でこそインターネットが普及し、業種の壁を越えて交流する機会も珍しくなくなりましたが、1970年当時、限られたメンバーで直接膝をつきあわせて、言葉をやりとりするこうした試みを、一私企業が始めたことは画期的でした。会議の場所となる、静岡県伊豆市にあるIBMの研修施設「天城ホームステッド」の緑豊かなロケーションも、東京から少し離れて日本を俯瞰するという意味では参加者にとって最適な環境だったといえます。

毎年テーマは設けるが、「あえて結論は求めず、議論は原則非公開」がポリシー。1970年から今まで、日本が辿った道のりにはいくつもの山や谷がありましたが、そうした世相や社会情勢の変化を受け、毎年、テーマが設定されます。直近では、東日本大震災。会議に参加したメンバー同士の横のつながりが、東北でさまざまなプロジェクトを生み出しました。

今では4つの会議が、天城会議から派生して続けられています。第一線で活躍する中核の有識者が集う「伊豆会議」、若手の有識者が集う「富士会議」、大学学長が一堂に会する「天城学長会議」、そして北海道から九州まで、日本各地で有識者が集う「地域有識者会議」です。継続から生まれるものは確かな人のつながりであり、対話を重ねることで築き上げられるものがあります。有識者会議は、会議という枠を超え、人と人とがつながることで、未来を作り出そうとしているのです。

日本IBMらしさを生かした、高校生のためのグローバル人材育成プログラム「ヤング天城会議」

天城会議から比較的新しく生まれたのは、次世代グローバル・リーダーの育成を目的に、2010年から開催されている「ヤング天城会議」です。
ヤング天城会議は、日本IBM社員の提案により始まった、社員が部署横断的に集まって実施する、高校生のための人材育成プログラムで、毎年夏休み期間中に開催されます。「高校生が将来世界で活躍するために必要な視点や考え方を身につける『きっかけ』を提供する」ことを目標に、3日間のプログラムでは講義やディスカッション、発表を織りまぜ、最終日には生徒一人ひとりが自身の未来を見据えた「チャレンジ宣言」を行います。

高校生にとって、全国から集まる同年代の仲間と寝食を共にして語り尽くす3日間はインパクトが大きく、参加高校の教師へのアンケート調査でも「進路を明確に口に出すようになった」、「自分の考えと同じ考えを持つ方々や、また違う視点を持った人々と接して、更に将来への思いを強くし、学内でも積極的に活動するようになった」など生徒の変化をさまざまに認めています。

ヤング天城会議がきっかけとなり、高校生一人ひとりがグローバルな視点を得て、具体的に動き出すーー。天城会議と同じようにヤング天城会議も日本の未来を見据えた活動を継続しています。

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