世界中でもっとも観客数の多いテニストーナメント、全米オープン。この大会に対して世界から集まる注目への対応や、データを活かした新しい試合の楽しみ方をIBMのテクノロジーが支えています。

緊急時のデータ・トラフィックに対応するクラウド

全米オープンを運営する全米テニス協会(USTA)は毎年8月の最終月曜日から2週間、数十万人の観客をUSTAナショナル・テニス・センターに迎えています。一方、大会期間中のモバイルサイトへのアクセスも3億2500万PVあり、通常の約50倍の能力を持つインフラでなければ対応できないほどになっています。しかしサイトのインフラ容量をこのピークに合わせると、1年のうち、2週間以外はその容量のほとんどを使うことがなく、コストに見合いません。

そこでUSTAは、全豪オープンや、同様のテニスやゴルフのトーナメント、トニー賞といった一定期間のみアクセスが増えるイベントを抱えた他の団体と共同で、IBMのプライベート・クラウドを利用。これによってITインフラにかかる費用を最低限に抑えながら、データ・トラフィックの急な増加にも対応できるようにしています。こういったプライベート・クラウドは大企業内部で部署間やプロジェクトごとにITリソースをシェアする用途でも使われています。

試合の動向が“見える”ツール

また、USTAとIBMは新しい試合の楽しみ方を提供しています。
それはSlum Trackerと呼ばれるツールで、試合の動向や、選手情報、そして「Keys to the match」をリアルタイムに解析し、試合を予測、各種データを表示してくれます。
「Keys to the match」は選手が勝利を確実なものとするために取るべき、3つのキー・アクションを見極める革新的な指標です。IBMは過去8年間分のグランドスラムの試合データから、選手のプレイスタイルごとのパターンを見出し、拮抗した試合など4100万のデータポイントを解析しました。この結果として得られたキー・アクションは、打つサーブの種類ごとのパーセンテージ、ラリーのカウント、ショットタイプなどに焦点をあてて解析されています。

またSlum Tracker はTwitter上でつぶやかれる試合に関しての内容をリアルタイムに集め、ポジティブかネガティブか判断し分類することで、どちらの選手に視聴者の感情が傾いているかを識別しています。こうしたソーシャルデータの解析も試合予測に活かされているのです。

Slum Trackerと同様のリアルタイム解析と予測分析技術は、犯罪の抑止や販売拡張戦略の選定、金融機関での不正を防ぐためなど、幅広く使われています。

モバイルに最適化された配信アプリ

スマートフォンやタブレットの普及から、モバイルでアクセスしやすく、見やすいサイトやアプリの需要はとどまることを知りません。2012年の全米オープンでも、モバイルからのサイトアクセスは1億1700万という、全体の3分の1にも上るアクセスになりました。そのためにIBMはニュースや試合データ、選手の状態、試合のライブストリーミング、公式や選手のTwitterストリームを配信するアプリケーションを開発。ソーシャルメディアへのリンクもアプリ内に設置しています。

このアプリは400万ダウンロード近くに達しており、さまざまなデバイスへインストールされ、全世界どこでも好きな場所で全米オープンを楽しめるようにしただけでなく、視聴時のTVやPCのサブ画面としての利用も可能としました。

スタンドで見る臨場感もさることながら、デジタル配信による情報は世界中に試合の臨場感を伝えてくれます。こういったビッグデータ&アナリティクス、クラウド・コンピューティング、モバイル・テクノロジーの利用はテニスだけでなく、ビジネスシーンでも“ゲームチェンジャー”となる可能性を秘めています。

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