東京、渋谷。かつて「シブヤ系」という名のもと、音楽やファッションの発信地として全国区になったこの街は、ベンチャー企業のメッカとしても知られてきた。IT系を中心に様々な起業家たちがこぞって集まってはここにオフィスを構えたからである。そんなスタートアップの街・渋谷を今もっとも象徴する存在が、株式会社ツクルバが設計・運営を手がける会員制シェアードワークプレイス「co-ba shibuya」だ。
さまざまなジャンルの起業家やクリエイターたちがスペースを共有するだけでなく、アイデアやビジネスをも共有し、新たなプロジェクトが生まれる「場」として注目を浴びている。そこで、自身も起業家として事業を展開する株式会社ツクルバのCEO村上浩輝氏とCCO中村真広氏のお二人に、共創コミュニケーションの現在を聞いた。

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co-ba発のサービスが続々登場。100万DLを記録するアプリも

2011年末、株式会社ツクルバのCEO村上浩輝氏とCCO・クリエイティブディレクターの中村真広氏の手により、東京・渋谷で産声をあげたシェアードワークプレイスco-ba shibuya。誕生当初は二人が交流をけしかけ、会員同士のコミュニケーションを促していたが、やがてco-ba自体が多様な人間を飲み込んでは有機的なアウトプットを生み出す共創コミュニケーションの場へと変貌していく。

ここに来なければ関わることのなかった起業家やクリエイターたちが、co-ba shibuyaで出会ったことをきっかけにプロジェクトを組み、ビジネスへと発展するケースが出始めたのである。その多くは、渋谷という土地柄か、IT系の起業家やクリエーターたちによる新たなサービスやアプリの開発だ。主立った例としては累計100万DL超のスマートフォンアプリ「チロルチョコアプリ」や、音楽コミュニティアプリ「nana」など。また、ソフトウェア/クラウド開発会社から「co-baで何か出来ないか」と声をかけてもらい、有志の会員が集まってパンフレットを作ったりしたことも。

村上浩輝氏
「少数のチームに個人のフリーランスがジョインして1つのプランを作り上げることもあるし、チーム同士が融合することもあります。以前、co-baメンバーが「モーショングラフィック部」という動画の自主勉強会を開いていて、なかなかレベル高いなぁと思っていたら、ある日、仕事がきました!って(笑)。そういう知らせを聞いて驚きながら納得しましたけど、co-baをやってよかったなぁとしみじみ思いましたね」(村上)

上場企業とベンチャーをつなぐHubになれれば

ここへきて、「共創」の形はさらに進化を遂げている。co-baの中でコラボレーションが生まれているだけなく、co-ba自体が地域や外部のコミュニティとダイレクトに関わり合い始めたのだ。

「一時期は、環境保護や地方活性化系のイベントも行っていました。会員の中に、間伐材を利用した森の保全活動をされている方がいて、間伐体験を兼ねたキャンプを企画したり。地方の問題って、意外と東京で横のつながりを持つことで解決のヒントを探ることができるんです。秋田の問題を、徳島のケースを参照しながら考える、といったような場になれればいいですね」(中村)

また、2014年秋から日本IBMが独自に進めるインキュベーション・プログラム「IBM BlueHub」に、株式会社サムライインキュベートとともに協力。起業の場や機会を与えることでスタートアップやベンチャー企業のバックアップを行っていく。

それはすでに具体的な動きとなっており、2014年11月には、スタートアップやベンチャー企業がプレゼンテーションを競うイベント「sprout」の企画第1弾 「『渋谷系』〜今熱い、渋谷系のベンチャー8選(企画・運営=株式会社ツクルバ、株式会社トーマツベンチャーサポート、日本アイ・ビー・エム株式会社)」がco-ba libraryで開催された。このイベントには、co-baとは関わりを持っていなかった起業家たちも参加。渋谷というベンチャーの街を盛り上げるのが目的である。

「具体的なプランはまだまだこれからなんですが、co-baをメディアというかハブにして、出資者である上場企業とベンチャー企業をつなげていくっていう役割を果たしていきたいですね。そもそもウチと日本IBMさんとではお互い会社と場所の文化も違うので、まずはスーツと革靴を脱いでもらって(笑)、渋谷の空気感に触れてもらえればと思っています」(村上)

全国各地に特色を活かしたco-baが続々誕生

2012年現在、co-baはもはや渋谷だけのものではなくなっている。

ツクルバはフランチャイザーとして、赤坂、調布、大塚、気仙沼、小倉などにco-baを展開。あたかもco-baが一般名詞化したかのように、全国各地に広まっているのだ。ただし、ツクルバとしては、立ち上げ時のアドバイスは最小限にとどめ、コンセプトメイキングはあくまで各地のco-baのオーナーに委ねるよう心がけている。 

「オーナーを希望する方には、立ち上げに際してまずは自分の味方になってくれるスタッフを集めてくださいとお願いしています。それこそ空間デザイナーからグラフィックとかウェブのデザイナー、あとは雑用をやってくれる人とか。そうやっていろんな人とか地域、コミュニティを巻き込めるような人じゃないとなかなか務まらないんじゃないかと思って」(中村)

「各地域によってまったくカラーが違っていますね。大塚は賃貸マンションの中にあって、起業以前のアクションとかチャレンジを応援したいというマインドがある。すぐ隣には保育スペースがあるのでママさんの会員も増えています。調布だと郊外ということもあって、自分の地元でスキルアップしたいサラリーマンの方が多いですね。あとはもっと社会と関わりを持ちたい学生とか。どういう形であれ、地域のホットスポットになってもらえれば本望です」(村上)

IT系/非IT系、東京/地方。多様化する起業スタイル

2011年12月の立ち上げから3年あまり。co-baをめぐって目まぐるしく変化を遂げてきた起業のスタイルや、クリエイターの働き方はどう変わったのだろうか。

村上氏が実感としてまず挙げたのは、起業のハードルの低さだ。

「この3年で起業のハードルはどんどん下がっていますね。ネット環境を整えるのも以前よりははるかに安くなったし、投資家からの資金を調達しやすくなっているように感じます」(村上)

2010年代に生まれたIT系ベンチャー企業が成長を遂げ、上場や売却で得られた資金は、さらなる起業者へと投資される。こうしたある種の循環体系がこの3年で出来上がったことでアイデアと事業プランが実現に向けて進みやすくなったという。しかも、それは何もIT系に限った話ではなさそうだ。

「最近、盛り上がっているのは新興市場。これまではITに特化されていたようなプログラミング技術をDNA解析に応用してガンの特効薬を開発するようなプロジェクトを僕らよりも若い世代が考えていたりする。今後はこういった医療系のベンチャーや、エネルギー系ベンチャーなど、いろんな業種の起業が出てくる可能性がありますね」

もはやベンチャー=IT系という固定観念は取り外した方がよいということか。同じ質問を中村氏に投げかけてみると、今度はまったく別ベクトルの答えが返ってきた。

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「村上が話したのはあくまで東京サイドだと思うんですけど、僕はむしろ地方でしか出来ないビジネスの可能性に注目したいなと思っていて。たとえば、Amazon.co.jpの中古本部門でいちばん業績をあげているのは長野県の上田市の業者なんです。広大な土地っていう地方ならではのリソースを上手く利用している好例ですよね。

他にも、北欧から輸入した家具をリペアして都内のおしゃれなショップに卸したりとか、デザインはするけど実際の施工はセルフビルドをしてもらう新しいタイプの建築設計事務所とか、既存の職種を現代的にアレンジしたビジネスがいっぱい生まれている。

ただ、やっぱりどこも共通していえるのは、ITを少なからず活用している点。そういうテクノロジーと地方の特殊性の掛け合わせの場として、co-baのようなスペースが関わっていければいいのかなという気はしています」

起業スタイルやクリエイターの働き方は、これからますます多様化していくことだろう。co-baがそこに応じてどんな「場」を提供していくのか、興味はつきない。

text:宗像幸彦

村上浩輝氏

むらかみ・ひろき
村上浩輝

株式会社ツクルバ 代表取締役 CEO
1985年東京都生まれ。立教大学社会学部産業関係学科(現・経営学部)卒業。「場づくり」に関心があり、不動産デベロッパーの株式会社コスモスイニシア(旧:リクルートコスモス)に新卒入社し、主に事業用不動産のアセットマネジメント業に従事するが、リーマンショックの影響を受け入社7ヶ月目でのリストラを経験。その後、株式会社ネクストにて、ウェブサービスの企画・プロモーション・営業などを経験。2011年8月に(株)ツクルバを共同創業。

中村真広氏

なかむら・まさひろ
中村真広

株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO / クリエイティブ・ディレクター
1984年千葉県生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。大学院時代に渋谷「みやしたこうえん」のスケボーパークの基本設計を担当。この経験を通じて、建築が生まれる前段階=枠組みのデザインに興味を持ち、株式会社コスモスイニシアに新卒入社。しかし、リーマンショックの影響で入社7ヶ月で転職。その後、ミュージアムデザイン事務所(株)ア・プリオリにて、ミュージアムの常設展示の企画など、空間を埋めるコンテンツづくりを経験した後、フリーランスとして活動。2011年8月に(株)ツクルバを共同創業。「場の発明」を通じた、ソーシャル・キャピタルの構築を目指して活動している。


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