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情報技術を駆使して生み出される芸術表現、メディアアート。
日本を代表するメディアアーティストである真鍋大度さんは、「無駄だと思われるデータや作業に、新しい価値をもたらすこと」が、メディアアート的な発想だと語る。

(出典:ProVISION No.83 コグニティブ・コンピューティングが拓く未来 P30-32 ザ・プロフェッショナル コンピテンシーの道程[第47回]より転載 2014年10月31日発行)

 東京オリンピック招致の映像、Perfumeのステージ演出、さまざまなCM・広告クリエイティブなど、幅広い分野で活躍するメディアアーティスト、真鍋大度さん。身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作られる作品は、世界で高い評価を受けている。

 「大学時代、数学を学びながら、趣味でバンドやDJなどの音楽活動を行っていました。今ではパソコンやモバイル端末を使ってDJができますが、当時はDJというとアナログレコードやCDが中心で、楽曲を“情報”として扱うことが難しかった。音楽に、数学やプログラミングを組み合わせると面白いのではないかという発想が、僕のメディアアートの活動の出発点になっています」

 子どもの頃から、自分の手で何かを作ることが好きだったという真鍋さん。レッスンを受けていたピアノの知識と、見よう見まねで覚えたプログラミングの技術を使い、MSXでゲームやゲーム音楽を作っては、友達に披露していた。

 真鍋さんの仕事は、大きく分けて2種類ある。広告や舞台演出といったクライアントから依頼される仕事と、自身が興味のあるテーマに基づいたアートプロジェクトだ。前者では、クライアントから提示されたテーマに対して、いかに新しいアイデアでスマートに応えるかが重要になるという。

真鍋大度氏 「例えばPerfumeのオープンソース・プロジェクトは、彼女たちの肖像以外の魅力をアピールするWebサイトを作ってほしい、という依頼をいただいたところからスタートしました。そこで、Perfumeのモーション・キャプチャー・データや楽曲を公開し、ファンがそれを使って2次創作できる環境を用意したのです。その結果、予想をはるかに超える数の人が、その素材を使って映像やサイト、アプリを作ってくれて、Perfumeのファンが多岐にわたる層によって形成されていることが分かりました。自分の作ったものが、2次創作で多様な広がりをみせたことが、とても興味深かったです」

 一方アートプロジェクトの場合には、何もないところから始まる。自身が面白そうだと感じたテーマを見つけ形にしていくわけだが、真鍋さんが最近気にかけているのが「どんなデータを使うと面白いか」ということだ。東京都現代美術館の「うさぎスマッシュ展」に展示した作品も、データに着目した作品だ。同作品では、東証の実際のトレーディング・データを使用し、株式の売買の動きをリアルタイムで可視化・可聴化した。

 「昼休みに入る直前に売買がすごく盛り上がって、昼休みに入った途端、静かになる。トレーディング・データが映像と音に変換されるだけなのですが、それらは人間の営みのようにも見えるし、人間とコンピューターが戦っているようにも見えます」

 無機質な株式のトレーディング・データも、映像や音に変換することで、意思を持った人間のように感じられるわけだ。インターフェースを変えることでまったく違う意味や価値をもたらす、こうしたメディアアートならではのアイデアを、今度はスマートフォンのゲームに応用してみたいと真鍋さんは考えている。

真鍋大度氏 「電車に乗ると、たくさんの人がスマートフォンでゲームをしていますが、ただゲームをするのではなく、一見ゲームをやっているようでいて実は裏側で別の“課題解決”につながっている…といったことができれば、なんだか面白いしエコなのではないでしょうか。ゲームを楽しみながら、それが同時に何かの役に立つような仕組みができれば、時間つぶしのゲームにも違った価値が生まれると思うのです。インターフェースを変えることで、無駄だと思われていたデータや作業に意味を与える。こうしたアプローチが、メディアアート的な発想だと思います」

 真鍋さんは世界各国でワークショップを行うなど、教育普及活動にも力を入れている。単にプログラミングを教えるのではなく、誰もが創作できて発表できるような環境を作りたいと考えているという。「誰もが簡単に創作できる環境を提供してあげて、それを使ってみんなに何かを作ってもらいたい。Perfumeのオープンソース・プロジェクトの時もそうでしたが、必ず僕の予想を超えたものを作ってくれる人がいます。そういう作品を僕自身、見てみたいのです。だれでも参加できて、それでいて深く追求したくなる、そんな環境を提供していきたいと思っています」

 ジャンルやフィールドを問わず、プログラミングを駆使してさまざまなプロジェクトに携わっている真鍋さん。その活動の舞台は日本にとどまらず、世界各国に及んでいる。

 「例えばコグニティブ・コンピューティングや機械学習といった分野は、メディアアートのシーンでも注目されています。そうした最新のトレンドを捉えつつ、誰もやっていないことを見つけることが、世界に通じる道だと思います。アートやエンターテインメントには、言葉の壁を越える力があります。世界に出て行くことで、表現の本当の楽しさが味わえると思います」

 プログラミングと自由な発想によって、見る人に驚きや発見をもたらすメディアアーティスト、真鍋さん。今後、さらに新しい情報技術を取り入れながら、その独創的な作品で世界中に新鮮な感動を届けてくれるに違いない。

まなべ だいと
真鍋 大度

1976年、東京都生まれ。東京理科大学理学部数学科、国際情報科学芸術アカデミーDSPコース卒業。2006年にウェブからインタラクティブデザインまで幅広いメディアをカバーするデザインファーム「ライゾマティクス」を設立。グッドデザイン賞、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞など受賞作多数。


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