IBMとメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターは、コグニティブ・コンピューティングを皮膚の症状の画像分析に応用する研究を行っています。このシステムは、医師ががんの症状を早期診断する際の支援ツールとなることが期待されているものです。

皮膚がん診断の重要性

アメリカにおいて、皮膚がんはよく知られているがんです。がんの中でも診断数がもっとも多く、毎年500万人が治療を受けており、その治療費は81億ドルにまで及びます。なかでも、悪性黒色腫はもっとも致死性の高い皮膚がんで、毎年9000人の死者を出しています。

がんと医療の長きに渡る戦いの結果、いまでは治療の選択肢はいくつもあります。しかし、早期の診断こそが治療のベストな結果を産みます。そのためには良性腫瘍から初期の悪性腫瘍を分類して見つけることが必要不可欠ですが、腫瘍の画像データから診断を下す病理医にとっても正確な判断を下すことは困難なのが実情です。現在、診断の正確さは病理医によって異なり、仮に機材を最新のものにし、知識と経験を可能な限り高めたとしても、75~84%だと言われています。悪性である明らかな兆候が微細であるときも多く、経験と慎重な調査が必要だからです。そこで、がんの画像を認識して、わずかな変化も見逃さずに解析をおこなうコンピュータがあれば、診断の助けになるとIBMは考えたのです。

”人の目”と”学習”が起こす革命

IBMの開発したコグニティブ・コンピューティングを使えば、コンピュータは色や形などの画像の要素を認識して、これまでに残された膨大な悪性腫瘍の画像パターンを学習できるようになります。そしてその学習を積み上げることで、コンピュータはベテランの病理医以上の測定技術を持てるようになるかもしれないのです。準備段階の実験でもコグニティブ・コンピューティングを用いた診断は高い精度を誇っています。97%の精度で画像を認識し、94%の精度で悪性腫瘍を特定したほどです。

IBMはメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターが主導する世界的な協力体制の中で、自動画像診断の研究を続けています。遠くない将来、どの病院でも早期のがん診断が実現される日がくるかもしれません。

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