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日々生活をしていく上で不安や知識不足を感じ、誰かにアドバイスを求めたいと思うことは多い。そんな時、さまざまな分野の専門家による有用な情報を提供してくれる総合情報サイトとして、圧倒的な支持を得ているのが「All About」だ。900人ものその道の専門家が、インターネットを介して、マネー、住宅、暮らし、健康、ビジネスから旅行や恋愛まで、多岐にわたる疑問や悩みに応え、情報を提供してくれる。
創業者は、かつて「リクルートの立ち上げ屋」と呼ばれた江幡哲也氏。㈱リクルートにはエンジニアとして入社し、その後営業や経営戦略を担当し辣腕を振るった経験を持つ。
近年、株式会社オールアバウトは人々の生活をより豊かにしたいと、新たに試供品を格安で提供する「サンプル百貨店」や生涯学習の場を提供し、最近では中古車の個人間売買にも進出している。
少子高齢社会や国内市場の縮小の中で、同社の売上高はこの3年間で2.4倍と好調だ。江幡社長はビジネス・チャンスをどのように見いだし、発展させてきたのか。その軌跡や発想の秘密を語ってもらった。

人々のニーズに的確に応えられる専門家の情報を幅広くネットで伝えたい

――「オールアバウト」のコーポレートサイトにある社長メッセージで、「不安なく、自分らしく、賢く生きる生活者の役に立ちたい」と創業の志を語っておられます。これはどのようなお考えから出たものでしょうか。

江幡 今の日本を見ると、先々に不安を感じている方が実に多い。特に東日本大震災の後はそうです。一方で、誰もが自分らしく生きたい、賢くいろいろな情報を調べて損をすることがないように暮らしたい、何か機会があればチャレンジしたいと願っている。この「不安なく」「自分らしく」「賢く」という3点に、人々の生活のニーズは集約できると思うのです。

また、世の中にはさまざまな分野の専門家たちが豊富な知識や経験を持っています。それなのに、情報がその人の中だけに閉じられていることが多い。それは社会全体で考えると大変もったいない。その情報を多くの人に伝えることができれば、必ず役に立つはずです。ちょうどインターネットという素晴らしい道具ができた時期だったので、その仕組みを作ったわけです。

専門家たちは「ガイド」としての自分のポジションを
ネット上で確立でき、活躍の場も広がる

――サイトを拝見すると、テーマ数が実に多岐にわたり、専門家の人選も充実していることに驚きます。

江幡 テーマ数は今1300ぐらいですが、日々増やしています。あくまで生活のハウツー情報が中心で、新しいニーズを科学的な手法を使って取り込むようにしています。簡単に言うと、検索エンジンで高い頻度で検索されているワードを調べ、ビジネスとの関係も踏まえて優先順位を決めて選びます。その分野に専門家がいなければ、育てることもします。当面の目標は2000テーマぐらい。範囲は「揺りかごから墓場まで」網羅しますが、いくらネットの受けが良くても芸能、アダルト、スポーツニュースは極力扱いません。

個人を豊かに、社会を元気に。 ――1人ひとりが「自立と自律」をして活躍できるための情報を(前編)

私たちが「ガイド」と呼ぶ専門家は約900名います。自分なりのコンセプトに基づいて有益な情報を発信してくれますが、名前と顔をネットにさらして発信するわけですから時に批判もあり、結構苦労されています。でもなぜ皆さんが頑張っているかと言うと、人の役に立つ喜びがあるし、その道の専門家としてのポジションをネット上で確立できるからです。

私たちも、ガイドの方をテレビ番組のコメンテーターとして使ってもらえるよう関係を付けたり、本の出版をお手伝いしたり、企業の商品発表会に出席したりできるよう努めています。互いに持ちつ持たれつの関係がうまくできていて、今では「こういうテーマでガイド募集」とサイトに掲載すると、多くの方が手を挙げてくれます。

リーマン・ショックや3.11を機に収益源を広告から個人に転換

――情報サイトの業界では、創業したものの成長できずに撤退したケースも多くあると聞きます。オールアバウトの経営はずっと順調に伸びてきたのですか。

江幡 いろいろ紆余曲折がありました。当社の収入源は創業以来、企業からいただく広告が主な収益源でした。サイトには、これを知りたいというニーズが明確なお客さまが来るので、それに関連する商品やサービスをアピールしたい企業さんを結び付けています。いま流行りの「コンテンツ・マーケティング」を、我々は当初からやっていたわけです。 

しかし、2008年にはリーマン・ショックが起きて広告が激減し、2011年の大震災の時も1年ほどは経営が大変でした。その経験から広告のみに依存するビジネス形態は良くないと判断し、4年前に中期経営ビジョンを練り直したのです。

中期ビジョンでは「企業からいただく広告の売り上げを全体の2分の1にし、その分、個人からいただく売り上げを2分の1まで増やす」と宣言し、3年後に目標を達成しました。2015年3月期の売り上げは63億円で、3年間で2.4倍に伸ばすことができました。今は拡大基調に入っています。

サイトの月間総利用者は3360万人(スマートフォン、モバイル含む)です。2013年夏にはスマホからのページビュー数がパソコンを超え、現在では全体の6割がスマホからのアクセスです。

メーカーも消費者もオールアバウトも
皆がWin Winのビジネスへ

――個人からの売り上げというと、具体的にはどのようなビジネスなのでしょうか。

江幡 1つは「サンプル百貨店」という、会員制で「お試し買い」をやっていただくEC(電子商取引)サイトです。食品・飲料メーカーなどが新商品を出すとき、会員はそのサンプル、と言っても流通されるものと同じ商品を市価の半額以下で購入して試すことができる仕組みです。

個人を豊かに、社会を元気に。 ――1人ひとりが「自立と自律」をして活躍できるための情報を(前編)

元々は買収した会社(現オールアバウトライフマーケティング)がやっていたビジネスでした。その当時は「メーカーがお金を出し、会員はサンプルを無料でもらう」というビジネス・モデルでしたが、自宅へのサンプル配送料がかさむために利益が出ず、業績は伸び悩んでいました。
私たちはそれを、「企業からはお金をもらわず、配送料と当社利益を加えた価格で会員にサンプルを試し買いしてもらう」というモデルに180度変えたのです。価格は格安ですが、会員は同じ商品を1回しか買えないようにして、2回目からは店頭で買っていただきます。
つまり企業はサンプルを無償で出すだけ。当社は販売促進のお手伝いをする。これが倍々ゲームで成長し、商品は酒や薬にも拡大。会員は100万人近くまで伸びています。今では本体の情報サイトの売り上げを抜くまでに成長しています。

サンプルを購入した会員が感想をブログなどに書く仕組みも作りました。中には私たちが「プロシューマー」と呼ぶ、商品開発に参加するぐらいの意気込みの方もいて、企業はその意見を商品開発に生かします。

地方、女性、モノづくりという
日本の重要課題に資するプラットフォーム

――まさに企業と個人が共に協力してイノベーションを生みだすプラットフォームを提供する、ということですね。

江幡 もう1つの個人向けビジネスは、手芸領域での先生を育成するという生涯学習のモデルです。これも買収した会社(現オールアバウトライフワークス)が手掛けていたもので、主婦の方たちが「好きを仕事にする」というコンセプトの下で、ジュエリー、クラフト、お花などを学び、やがて自らも先生になっていく。自宅で教室を開けるように技能、教本、道具立てをすべて提供しています。
42講座あり、すでに2万4000人の先生が生まれています。全国津々浦々に広がり、女性が活躍し、モノづくりもあるという、日本の3つの重要な視点をすべて備えています。

業界の不合理や不条理を排し
社会のイノベーションを促す会社になりたい

――社長メッセージの中に「業界の構造を知る中で、たくさんの不合理や不条理があることを目の当たりにした」とあります。それは具体的にどのようなものだったのですか。

個人を豊かに、社会を元気に。 ――1人ひとりが「自立と自律」をして活躍できるための情報を(前編)

江幡 私はリクルート時代に事業立ち上げを数多く手掛けてきました。コスト構造を分析してみると、ムダが多いとか値段が高いとか、なぜ改善できないのかとか、いろいろな不合理がありました。不条理というのは、社会の既得権益とか、時代遅れなのに慣習として残っている仕組みなどで、これらがイノベーションの障壁となっています。
オールアバウトは、世の中がイノベーションを起こすのをお手伝いする会社になりたい、業界のコスト構造を変えたい、権益を突破するよう頑張っていきたいと考えています。

――その改革の道具としてインターネットの活用があるわけですね。

江幡 インターネットで顕著に起きたことは「知の流通」、つまり口コミです。その量や鮮度が増す一方、匿名だったり、いい加減な情報であったりするので、使う側にリテラシー(利用する能力)が求められます。これまで専門家の情報は、本や新聞で読むとか面談で得るしかなく、コストが高かった。オールアバウトはそれを100分の1のコストで提供できるよう構造を変えたのです。

これからは個人の「自立と自律」。
的確な情報を得て、自分で強くなるしかない

――日本は超高齢社会に入り、国の社会保障や企業の終身雇用が揺らいでいます。江幡社長は個人の「自立と自律」による「世直し」を訴えておられますが、その思いを聞かせてください。

江幡 「失われた15年」とよく言われるように、戦後社会を支えてきた仕組みが根底から崩れつつあります。終身雇用はなくなり、退職金も不確か。健康保険は負担増が進んでいる。消費税率は15~18%に上げないと財政は理論上成り立たなくなっています。

それなのに人生の基盤である「お金」「健康・医療」「職・キャリア」の3つについて、学校では何も教育してくれません。その辺は国や企業が守るから大丈夫だという理屈だったからです。
これからは自分で気づいて知恵を蓄えておかないと、人生を楽しむどころではありません。自分で強くなるしかないのです。それが「自立と自律」。こういう基本的な構造を変えていかないと、世の中は変わりません。オールアバウトが生活情報を重要視しているのはそのためです。

テキスト: 木代泰之

後編はこちらから

江幡哲也

えばた・てつや
江幡哲也

株式会社オールアバウト 代表取締役社長
1965年、神奈川県生まれ。1987年に武蔵工業大学(現東京都市大学)を卒業し、株式会社リクルート入社。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後数多くの事業を立ち上げ成功させ、社内外から 「リクルートの立ち上げ屋」と呼ばれるように。その間、1993年には早稲田大学ビジネススクール修了。2000年6月に株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパン(現オールアバウト)を設立し、総合情報サイト「All About」をスタート。2005年9月にJASDAQ上場を遂げる。著書に「アスピレーション経営の時代」(講談社)。


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