世界で最も高い顧客価値を保有する銀行として、ランキング一位に輝く、米国メガバンク、ウェルズ・ファーゴ銀行。そのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)であるクリス・モロニー氏(写真中央)、米国モティビティ・マーケティング社のケビン・ライアン氏(写真左)を迎え、デジタルインテリジェンス代表の横山隆治氏(写真右)が米国ビッグデータ最前線とデータ・マーケティングについて聞いた。

銀行には、夢があふれている

横山 ウェルズ・ファーゴ銀行は、ビッグデータの活用において世界で最も積極的に取り組んでいるメガバンクとして評価されていますが、今日はその具体例を聞かせていただければと思っています。

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クリス・モロニ―氏

モロニー 朝起きて、真っ先に自分の銀行について考えるのが楽しみだ、という人たちがウェルズ・ファーゴ銀行の顧客にはたくさんいます。データ・マーケティングを通じて、そういう人たちをつくったこと、つまり銀行に対する人々の「価値観」を変えたことが、我々の功績であると感じています。

ライアン そこがウェルズ・ファーゴ銀行のマーケティングの特徴であり、成功の秘訣です。誰だって、お金のことや、銀行のことなんてできれば考えたくありません。でも、あなたたちの銀行は違う。その秘密を知りたいところです。

モロニー 私たちは、お金ではなく、人々の夢や、未来への願望、思い描く将来、といった「ストーリー」に焦点を当てることにしたのです。お金を、夢を実現するための欠かせない要素と考えました。人々の夢や人生設計に銀行が密接に関わっていることをアピールしようと決め、1年前からフェイスブックを始めました。今では毎日、フェイスブックを通じて、どんな人たちが、どんな風に「銀行」について話しているのか、知ることができます。

フェイスブックの成功の鍵は「ストーリー」

モロニー フェイスブックに参入する際、その手法、目的、評価方法といったものに私たちは多くの準備時間を費やしましたが、成功の鍵は、銀行が提供するあらゆるサービスを、人々の人生に重ね合わせてストーリー化したことにあります。ホームページもライフステージにあわせてストーリーを打ち出した構成になっているため、フェイスブックを見た人がホームページにアクセスした際にも、スムーズにほしい情報を引き出すことができます。

クリス・モロニ―氏人々がどんなストーリーを求めているのか、データを見ればわかります。オンライン上のアクセスデータすべてが、CMOである私にとって、マーケティングのための貴重なデータになっているのです。マーケティングはストーリーでなければならず、データはストーリーを語らなければいけない。これが鉄則です。

ビッグデータを活用して解明する顧客のパーチェス・ジャーニー

横山 ビッグデータを活かすためには、逆に、定性調査を徹底的にやることが必要だと僕は考えています。つまり、全数データが集まれば集まるほど、いかに個々の事例を深くミクロで見るか、たとえばインタビューを非常に多く行う、といったことがデータ分析のために欠かせません。ウェルズ・ファーゴ銀行では、データに関して仮説立てをする際、定性調査を重要視していますか?

モロニー もちろんです。アイトラッキング調査だけではなく、ご指摘のとおり、フォーカス・グループによるヒアリングといった定性調査にも、かなり力を入れて行っています。社内では「パーチェス・ジャーニー」という言葉を使っていますが、顧客が最初に何らかの行動を起こしてから、口座を開くまでの過程を非常に詳しく検証しています。たとえば、ある人が最初にキーワード検索を行い、3カ月後に口座を開くまでの間、どのような行動を取っているのかをオンライン上で追跡します。

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ケビン・ライアン氏(左)とクリス・モロニ―氏(右)

ライアン パーチェス・ジャーニーとは、カスタマー・ジャーニーなどとも言われている、顧客を中心とした考え方ですね。

モロニー パーチェス・ジャーニーを考えるうえで、銀行は、医者にたとえられます。昔は、医者を探したければ近所の人に聞き、評判のよい医者に電話をして予約をとりつけました。今は皆、まずネットの検索エンジンに聞きます。そのとき見るのは、広告ではなくエディトリアルデータ、つまり誰かが書き込んだ「評価」です。特にLinkedInなどのソーシャル・メディアの評価は信頼度が高く、広告費用を支払って出す広告と、ソーシャル・メディアを互いに関連づけて活用することが非常に重要だということがわかりました。

データのハブは、全米の営業社員1万5,000人

モロニー 金融の専門家であり、営業部員でもある我々のファイナンシャル・アドバイザーが、ソーシャル・メディアでどのように顧客に対してアプローチしているか、こちらですべて把握できるシステムも使い始めました。グーグルプラスにログインすると、良かれ悪しかれ、あなたが何をしているか、グーグルに全部わかってしまいますが、このシステムは、グーグルプラスに似ています。

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横山隆治氏

横山 その手があったか、という感じですね(笑)。御社にとっては、1万5,000人のファイナンシャル・アドバイザーこそ、データ収集におけるハブであり、最も強力なリソースとなり得るのですね。

モロニー ネットにあふれる情報を、いかに「収益」に変えていくか、という観点からは、まだまだ人材教育の必要があり、今後はファイナンシャル・アドバイザー向けのトレーニング教育にも力を入れていく予定です。

text:野田香里

後編はこちらから

クリス・モロニー
Chris X. Moloney

米大手銀ウェルズ・ファーゴの資産管理・証券部門であるウェルズ・ファーゴ・アドバイザーズの上級副社長兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)。同社のマーケティングや広告、デジタル戦略、ソーシャルメディア戦略全般を担当する。エクスペリアン社、スコットレード社などのCMOを歴任後、2010年より現職。ワシントン大学およびリンデンウッド大学の大学院にてマーケティングを教える助教授でもある。

ケビン・ライアン
Kevin Ryan

アメリカの大手企業をクライアントに持つ、モティビティ・マーケティング社の創立者兼CEO。ソニー、サムスン、ヒルトンホテル、ロレックスなど、世界的企業のマーケティングを成功に導いてきた実績を持つ。世界最大のデジタル・マーケティングの祭典、アドテックの運営者会議メンバーも務めている。

よこやま・りゅうじ
横山隆治

デジタルインテリジェンス社代表取締役。1982年株式会社旭通信社(現株式会社 アサツー ディ・ケイ)に入社。96年インターネット広告のメディアレップ、デジタルアドバタイジングコンソーシアム(株)を起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2011年7月より現職。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組んできた。


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