世界で最も高い顧客価値を保有する銀行として、ランキング一位に輝く、米国メガバンク、ウェルズ・ファーゴ銀行。そのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)であるクリス・モロニー氏(写真中央)、米国モティビティ・マーケティング社のケビン・ライアン氏(写真左)を迎え、デジタルインテリジェンス代表の横山隆治氏(写真右)が米国ビッグデータ最前線とデータ・マーケティングについて聞いた。

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データを「翻訳」する能力が社内で求められる

横山 7,000万人もの顧客がいれば、日々蓄積されるデータも膨大ですね。データを必要な社内の部署に必要な形で届けるために、いわゆる触媒的な、データを「翻訳」することのできる存在が必要となってきますが、御社ではどのように行っていますか?

モロニ―氏

クリス・モロニー氏

モロニー そのための専門の部署が社内にあります。非常に優秀なマネージャーが統括しており、彼のおかげで、マーケティング部門とのコミュニケーションもスムーズで、非常に助かっています。ちなみに、私の部署で扱うデータはマーケティングに関するデータに限られており、日常的に、データ全般を取り扱う部署や、顧客データ扱う部署とのやりとりが多くあります。

横山 実は、ここ最近気になっているのが、「誰でも、都合のよいデータを見たがる」という傾向です。今、日本ではデータ解析をするデータ・カタリストから、必要とするデータを「プル」の形で取ってきた人が、データを自分の解釈したい方向に持っていくケースが多く見られます。しかし、それではダメで、データを所有する側、つまり企業が自社の社員のために全データを常に提供し続ける「プッシュ」の状態をつくりなさい、と言っているけれど、なかなかそうはなりません。この点、今の日本はまだ過渡期です。

モロニー その意味では、我々もまだ過渡期にあります。たとえば今、カスタマーサービスの部署が見られるデータと、マーケティングの部署が見られるデータは違います。将来的には、皆が同じデータを見ている状況をつくりたいと考えています。

横山 僕も最終的には、データをオープンに共有することで、恣意的にデータを使用することが避けられると思っており、誰でもデータにアクセスできる形になるのがビッグデータ活用の最終形ではないか、と考えています。ただ、マーケティングの人間と、データを扱う人間とでは、同じテーブルにつくとしても、コミュニケーションが難しいというのが難点です。

モロニー たしかにそうですね。私がCMOとして、普段から気をつけていることが2つあります。1つ目が「データを視覚化する」こと、2つ目が「ミーティングをデータで終わらせない」ことです。特にミーティングの最後には、次にどんなアクションをとるか、について言及するようにしています。

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ここ数年で急激に変化したCMOの役割

ライアン氏とモロニー氏

ケビン・ライアン氏(左)とクリス・モロニ―氏(右)

モロニー CMOの役割は、ここ数年で急激な変化がありました。3年前の2010年、CMOにとって重要なのはブランド・マーケティングで、デジタルは一段格下の位置づけでした。2013年の今年の状況は、その順番がひっくり返り、CMOにとって1番がデジタルで、2番がブランドマーケティング、3番目がソーシャル・メディアという位置づけです。3年後の2016年には、ソーシャル・メディアがトップに来ているでしょう。2番目がデジタル、つまりオンライン・マーケティングですが、従来型のブランド・マーケティングは、ずっと下のほうに位置づけられていることでしょう。

こうした流れのなかで、これまで行ってきたブランド・マーケティングを、早急にインターネット戦略やソーシャル・メディア戦略に融合させる必要があります。けれども残念ながら現状では、ブランド・マーケティングの部署とソーシャル・メディアを扱う部署、さらにオンライン・マーケティングを手がける部署が別々に存在し、別々の目的に向かって仕事をしています。

横山 日本でも同じ状況です。データ・マーケティングができる環境をいかにつくっていくかが重要だと思っています。部署間の連携や統合の問題もその1つです。

03ライアン 予算面でも、マーケティングの部署とデータ分析の部署は、せめぎあいになるケースが多いですね。これまでマーケティング予算とIT予算を別々に組んでいたため、データ分析の部署が新たにつくられた場合、マーケティング予算とIT予算の両方を少しずつ削って、予算を回すことが多いからです。

モロニー 私はもともとグラフィック・デザイナーでしたが、ダイレクト・マーケティングの仕事に携わり、データ分析を専門とするようになり、CMOになりました。CMOを目指すなら、昔は大学でマーケティングを専攻すれば良かった。今は、情報工学、マーケティング・サイエンス、マーケティング・エンジニアリング、といった専攻が役に立つと思います。

 

横山 僕も経歴的には一緒です。最初は広告代理店にいて、テレビコマーシャルを15、6本撮った後で、データ・サイエンティストの世界に転向したという点で、ケビンさんに親近感を覚えます。

text:野田香里

クリス・モロニー
Chris X. Moloney

米大手銀ウェルズ・ファーゴの資産管理・証券部門であるウェルズ・ファーゴ・アドバイザーズの上級副社長兼CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)。同社のマーケティングや広告、デジタル戦略、ソーシャルメディア戦略全般を担当する。エクスペリアン社、スコットレード社などのCMOを歴任後、2010年より現職。ワシントン大学およびリンデンウッド大学の大学院にてマーケティングを教える助教授でもある。

ケビン・ライアン
Kevin Ryan

アメリカの大手企業をクライアントに持つ、モティビティ・マーケティング社の創立者兼CEO。ソニー、サムスン、ヒルトンホテル、ロレックスなど、世界的企業のマーケティングを成功に導いてきた実績を持つ。世界最大のデジタル・マーケティングの祭典、アドテックの運営者会議メンバーも務めている。

よこやま・りゅうじ
横山隆治

デジタルインテリジェンス社代表取締役。1982年株式会社旭通信社(現株式会社 アサツー ディ・ケイ)に入社。96年インターネット広告のメディアレップ、デジタルアドバタイジングコンソーシアム(株)を起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2011年7月より現職。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組んできた。


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