モバイルがつなぐ食物生産―世界の食料を支える中国の農業

世界の一大穀物生産国である中国。この中国の農業と食糧の安定供給は、中国一国のみならず、世界の食糧マーケットにとって重要な要素です。そして食糧が安定的に生産されるためには、適切な時期に必要な量の肥料を使用することが欠かせません。そこで、中国最大手の肥料メーカーであるSinofert Holdings Limited(以下、Sinofert)は、国中の何億もの農家に、より効率的に肥料を供給できるよう、専用のモバイルアプリを開発しました。これにより農家は、肥料の調達を気にかけることなく、米や小麦、大豆といった穀物の収穫高の増加に向け、生産に集中できるようになっています。

流通プロセスの効率化を求めて

Sinofertには、17の支店、1700の販売店、600以上の倉庫、2,100の流通センターという営業ネットワークがあります。Sinofertは、自らの優位性を活かしつつ、さらにビジネスを成長させ続けるためには、営業や流通に関して、そのネットワークをより効率的なものにする必要があると考えていました。そして得た結論が、モバイルへの投資だったのです。モバイル技術によって、現場での営業担当者の意思決定力を強化し、より正確に需要を予測し、いっそう顧客の要望に沿った製品とサービスを提供できるようにしようと考えたのです。

開発にあたりSinofertとIBMのビジネスパートナーであるEnwaysoft Software Technology(以下、Enwaysoft)は、現状の販売・流通プロセスを変えるためのモバイル・プラットフォームとして、IBMのMobileFirstを選択しました。そしてEnwaysoftが開発した専用のアプリによって、Sinofertの営業担当者は遠隔地や農村部で未着手のマーケットを開拓しただけでなく、適時の正確な受注・配送を実現できるようになったのです。

アプリが繋ぐネットワーク

このアプリを使うことで、2,000以上のSinofertの営業チームは、製品価格や顧客情報、新しい取引口座の開設、顧客の購入履歴の更新、顧客訪問の予定や発注の確認をいつでもどこでも簡単にチェックできます。発注は即座に確定され、また販売プロセスも合理化されたことによって、これまで1ヶ月かかっていた配送期間を平均で10日まで削減することが可能となりました。

ほかにも、アプリにはSinofertの膨大なデータベースにアクセスする機能があり、農家からのさまざまな疑問に営業チームが即座に答えることができるようになっています。また、インターネットが普及していない遠方の地域でもスムーズな受注が行えるようになったことで、手作業による受注作業はなくなりました。さらにこのアプリはSinofertの在庫管理システムと直結しているので、数日かかっていた配送にかかる調整が、数分ですむようにもなったのです。

モバイルは、手頃に手に入れることができるコミュニケーションツールですが、それは、地方と都会のデジタル格差を解消し、さらに地方の経済発展の機会をつくり出すポテンシャルを秘めています。そしてそのことに、中国の農業団体も気づきつつあるのです。彼らがさらにモバイルを活用するようになれば、それに合わせてこのアプリも、中国の農業の発展に寄与し続けることでしょう。

photo:Thinkstock / Getty Images