クラウド時代の気象予報がビジネスを変える―The Weather Companyの取り組み

世界最大の民間気象情報提供会社であるThe Weather Companyは、IBMのクラウドコンピューティングやアナリティクスを利用してリアルタイムな気象データとその分析を企業の意思決定プロセスに取込むことで、気象変化が及ぼす経済的影響を考慮に入れたビジネス展開が可能となるプラットフォームを開発しました。

ビジネスに大きく影響する気象

日本でも、突然のゲリラ豪雨や落雷など、急激な気象変化の発生頻度が高くなっており、被災地には大きな経済的な損害がもたらされています。
また、そのような急激な変化ではなくても、雨不足が農作物の価格に影響を与えたり、冷夏によって小売業の売上げが変動するなど、気象がビジネスに与える影響は多方面にわたります。
ある調査によれば、気象は、米国だけでも年間5000億ドル近くの影響を経済に与えていると言われるほどです。
しかし、気象が経済に与える影響はマイナス面だけではありません。気象データや予測を適切に活用することで、売上げの向上やコストの最適化を実現できる可能性は十分にあります。
そこで、企業の経営判断となるような気象情報を提供するのが、このシステムなのです。

気象予測を取り入れるメリット

このサービスの開始にあたり、The Weather Companyでは、自社の気象データのプラットフォームをIBMクラウドに移行。10万基を超える気象センサー、航空機や無人機、何百万台ものモバイルデバイスなど、何千ものソースからデータを取込み、気象予測システムで処理・分析することで、世界約22億の予測ポイントに対して1日に100億件もの予測を提供する能力を備えています。
そこで得られた気象データと、従来のビジネスに関するデータ、サプライチェーンや顧客の購買パターンなどから得られたデータを組合わせることで、企業側は経営判断に活かせる、より有益な情報を得られるようになるのです。

このシステムが実現する具体例は、以下のようなものです。

たとえば、急な天候の変化への対応であれば、ひょうによる被害の防止です。米国では、落ひょうが引き起こす車両損害は毎年10億ドルを超えており、保険会社を悩ませています。しかし、このシステムを利用することで、保険会社は契約者に対して落ひょうに関する警報と安全な避難場所を連絡でき、それを受けた保険契約者は事前に自分の車を移動できます。これによって保険会社は、落ひょう地域において保険契約者当たり年間25ドル(年間何百万ドル)のコストを削減できます。

また中長期的な予想であれば、寒波が例にあげられます。

毎冬、降雪の多い地域では暴風雪の予報が出るたびに、食料品、シャベルなど災害対策用品の売上が急増する一方で、悪天候で消費者が屋内にとどまる傾向があるため、小売の売上高が下がることも知られています。たとえば2014年1月に発生した米国の大寒波では、気温が5.5度以上下がった地域では売上が15.5%下がりましたが、気温の低下が5.5度未満の地域では2.9%の減少にとどまりました。気象の予測とその影響をあらかじめ把握できていれば、小売業者は、人材配備とサプライチェーン戦略の調整が可能になるのです。

気象の変化が激しく、またその規模も大きくなりがちな昨今。このようなシステムを活用することで、気象変動によるリスクを避けていくことも、経営者にとって大切な課題になりそうです。

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