未来のコンピューター「量子コンピューター」実現へ向け、新たな一歩

「量子コンピューター」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、現在のコンピューターをはるかにしのぐ演算能力を持った、まさに未来のコンピューター。その実力は、今では何千年もかかるような複雑で難解な計算をわずか数時間で解いてしまうというほどで、医薬品開発のシミュレーションや暗号化の研究などの分野でその能力が発揮されるとされています。

現在のコンピューターと比較すると、まさに「飛躍的」という言葉がふさわしい進化ですが、それは、量子コンピューターが現在のものとは異なる方法で情報処理を行っているからです。

量子力学がもたらす飛躍

ご存じの通り、現在のコンピューターは、情報を0と1のビット単位の組合わせで表し、その情報を1回につき1組、処理していきます。たとえば4ビットの処理ができるコンピューターであれば、1回について、0か1の2通りの4乗=2の4乗=16通り(0000から1111までの16通り)の組合わせのうち、いずれか1組を処理するということです。
一方、量子コンピューターには0と1の他に、0でもあり1でもある「重ね合わせの状態」が存在します。つまり「0000」という状態と「1111」という状態が、別々ではなく同時に存在するということになるのです。
この「同時に存在する」というのが量子力学の特徴で、量子コンピューターの単位を量子ビットと呼びますが、仮に4量子ビットの処理ができる量子コンピューターであれば、1度に2の4乗、つまり16通りの処理が可能になります。その結果、現在のコンピューターとは比較にならない高速な処理が可能になるのです。
仮に50量子ビットの量子コンピューターが完成すれば、現在のトップ500のスーパーコンピューターを組合わせても敵わない可能性もあると言われています。

このように、まさに夢のコンピューターである量子コンピューターですが、研究者にとって、実現に向けて解決すべき課題は多々あり、そののひとつに、熱や電磁放射によって引き起こされる、計算過程でのエラーを検出しそれを修正する仕組みを構築することがあります。

実現した「エラー対策」

どんな量子コンピューターでも発生するエラーに、保持しているデータの0と1の情報が反転してしまう「ビットフリップ」と、重ね合わせ状態でエラーが起こる「位相テロップ」があげられます。
これらの2つを同時に検出することは、量子コンピューターの設計にとって、高速かつ確実な計算を実行するために重要なステップですが、今までどちらか一方の検出には対応できていたものの、両方同時に検出することはできませんでした。

今回、IBMの科学者チームは2種類の量子エラーの同時検出に成功。さらに約四分の一インチ四方の基盤上に、量子ビットを2×2の正方形に乗せた回路も実証しました。これにより、2つの量子ビットがペアになり、それぞれでビットフリップエラーと位相フリップエラーの計測が可能になったのです。さらにこの回路は、標準のシリコン製造技術で設計・製造が可能なので、より回路数の多い基盤での検証についても、障害は低いと言えるでしょう。

検証が進み、量子コンピューターが実現すれば、さまざまな業界で、コストのかかる試行錯誤をすることなく、新薬や新素材の開発が可能になるかもしれません。
IBMの科学者チームがもたらした今回の成功は、量子というミクロの世界の話ですが、夢のコンピューター実現へ向けての非常に大きな一歩になったと言えるでしょう。

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