コンピューターが色の持つ意味を理解する日

「色」と「人」の関係

食欲の増す色、心に落ち着きをもたらしてくれる色、やる気が出る色など、人の感情は、色によって少なからぬ影響を受けるものです。
また、華やかな色や落ち着いた色など、服の色で自分自身を演出することもあるように、人は色の力を利用してメッセージを発信したりもしています。

さらに「色」の感じ方は、どのような状況でその色を見るかによっても違います。たとえば、同じ緑色でも、草原の緑色を見て感じるイメージと1ドル紙幣の緑色で感じるものはまったく違うはず。
このように、人間は色そのものだけでなく、画像の中でその色が持つ意味合いなど、いろいろなイメージを色から感じ取っているのです。

「色」を理解するコンピューター

ところで、いまやイラスト制作やデザインにコンピューターは欠かせませんが、そのコンピューターは色を16進数の組み合わせで認識しています。
赤、緑、青という「色の三原色」をもとにして、16進数のコードを組合わせることで、さまざまな色を表現します。たとえば、 ”0、0、0”が黒、”255、255、0”が黄色というように。また、色の鮮やかさや明るさも、同様に数字の組み合わせでコントロールされています。
このように、コンピューターも人間同様に多彩な色を表現することが可能ですが、当然ながら、コンピューター自身は特に色や画像の組合わせに意味を感じてはいません。

では、コンピューターに人間のような色に対する感性を持たせて、工業デザインや内装設計まで、あらゆることに活用することはできないのでしょうか。
IBMは、IBM Watsonとともに、このチャレンジに取組んでいます。

たとえばひとつの研究例では、先ほどの数字の組み合わせとして色を表現する際に、機械学習のアルゴリズムを追加しています。現在のコンピューターにとって、風景写真は単なる緑色の組み合わせでしかありませんが、この研究によって、コンピューターが風景写真を「自然」や 「静かで穏やか」なものと認識できるようになるかもしれません。

アーティストIBM Watsonの誕生

アーティストであるスティーブン・ホールディングは最近「ワトソンの世界」という壁画を作成するために、IBM Watsonによって開発されたシステムを使用しました。そしてそれによって得られた色の組み合わせは、彼がデザインの中で伝えたかった色の意味合いをしっかりと踏まえたものだったのです。彼の「創造性」は、もしかしたらこの作品で、最高レベルに達してしていたかもしれません。

IBMが次に目指しているのは、IBM Watsonを活用して、デザインを提供できる能力を持つシステムを開発することです。形状、質感、形、スペース、深さ、線などの他の視覚的な要素を理解できるようになれば、コンピューターは、より創造的、芸術的な能力を発揮できるだろうと考えているのです。

そしてそれは、たとえば、消費者にとって魅力的なパッケージデザインをつくるといったプロセスで、小売業者の手助けとなるかもしれません。

人間の想像力は豊かではありますが、ひとりの人間の表現パターンには、やはり一定の傾向があるのは否めません。
そのような枠にとらわれないIBM Watsonと人間が協力することで、人間のクリエイティビティはどこまで豊かになれるのか。アーティストIBM Watson の活躍が楽しみです。

photo:Thinkstock / Getty Images