デジタル企業が新たに市場参入する、ウーバー症候群の衝撃――「グローバル経営層スタディ2015」

「競争環境を予測することは極めて困難だ」

テクノロジーが進化し、まったく異なるビジネスモデルが新たに市場へ参入してくるようになった現代。将来の競合企業は同じ業界に潜んでいるとは限りません。オランダのIT企業のCEOが「競争環境を予測することはきわめて困難だ」と語るほど、事業環境が変化し続けているなか、世界のトップ経営者はどのようなことを考えているのでしょうか。

IBMでは、2003年から現在まで18回にわたり、延べ約28000名もの数の世界の経営者にインタビュー調査を行っています。「未来を知りたければ、その未来に対して影響力を持つ方々と会話をすればよい」という考えのもと、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)など、70を超える国々、21の業界、5247名の経営者を対象に調査を実施しています

それでは、業界をリードする企業の経営者が、自らの組織をどんな未来に導こうとしているのか、3つのテーマを軸に紹介していきましょう。

業界の境界線があいまいになり、変革がさらに進む

1つめのテーマは「デジタル企業の侵略に備える」。

米国のトラック輸送会社シュナイダーのCIOジュディ・レイクは、アメリカを始め、世界の各都市で展開されている配車サービスであるウーバーによって業界が変化していく様を、「ウーバー症候群」という言葉で表現しています。これはビジネスモデルが異なる競合が市場に参入し、既存の企業を破壊してしまう現象のことです。

このような競争環境の変化要因に、テクロノジーの進化が大きく関与していると、今回の調査結果で多くの経営者が答えています。テクノロジーの進化でより良い製品・サービスが開発できるという声もあれば、テクノロジーの進化に対応できない場合の負の影響についての声もありました

2つめに挙げられたテーマは「全方位を展望する」。

競合企業の姿がはっきりと見えないうえに、ビジネス環境の変化が早いので、経営者はより広範囲を遠くまで見通すことが必要になります。今回の調査では、自社の将来を左右する重要な要因は、クラウド、モバイル、IoTなどのテクノロジーだと多くの経営者が述べています。さらに、その一歩先のテクノロジーとして(自然言語を理解し、人間に応対し、自ら学習するシステム)の重要性も多くの企業が共通認識として持っています

3つめは「先行するか、ベストプレイヤーになるか、撤収するか」。

  業界をリードする「さきがけ企業」は新たなビジネスモデルを他社よりも早く展開しようとしています。「ウーバー(Uber)の時価総額は、すべてのレンタカー会社の時価総額合計よりも大きい。単なるアプリにすぎないのに」と米国のレンタカー会社のCMOが述べているとおり、製品レベルでのイノベーションよりも、ビジネスモデルでのイノベーションの方が高い収益性をもたらすということが認知され始めています。

他業界から入ってくる新たなライバルとどのように競争していくか、世界の経営者の言葉はとても示唆に満ちたものとなっています。今回公表されたハイレベルなレポートに続き、役割別のより詳しいレポートが順次公開される予定です。将来のビジネスを考えるうえで、必ずや有益となるであろう詳細レポートの公開が待たれています。

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