ビッグデータで変わりゆく医療現場最前線

医療技術の発展によって、人類は歴史上類を見ないほど長い寿命を手に入れました。

太古の昔から不老長寿を夢見続けてきた私たちにとって、それ自体は喜ばしいニュースだと言ってよいでしょう。しかし、寿命の伸長に伴って「老後」の時間が増えたことにより、医療と健康にまつわるさまざまな問題が顕在化してきているのも事実です。

例えば現在、アメリカのシニア世代は一人当たり年間平均7人の医師の診察を受け、14通もの処方箋を受け取っているといわれています。医療関連サービスの内容は必要以上に複雑化し、平均的な外科手術患者は27もの異なる医療関連機関の診察を受けているそうです。こうした状況から生じる医療費の増大が、今や深刻な社会問題となりつつあるのです。

医療ケアサービスに変革をもたらすコグニティブ・コンピューティング

IBMの研究員であるVanessa Lopezと彼女のチームは、BlueLENSの開発を通じて、このような問題の解決に取り組んでいます。

BlueLENSは、医療ケアを受ける患者のデータを統合的に管理し、必要に応じてスピーディーに情報を取り出すためのシステムです。患者の治療歴やこれまでに受けたあらゆる医療行為の記録、患者を取り巻く人間関係、精神状態や行動に関する情報、さまざまな統計情報などをまとめて管理し、それらへタイムリーにアクセスできる環境を医療関係者に提供します。

また、BlueLENSにはIBM Watson Personality Insightsと連携し、患者のウェブ上での書き込みやソーシャルメディアを分析する機能も搭載されています。医療関係者はこの分析結果を参照することで、患者をより深く理解するための手がかりを得られます。

医療コストの削減を目指す

BlueLENSの大きな利点の一つは、会話による情報入力や参照が行えるということ。

BlueLENSはIBM Watson Speech to Textとも連携しているので、新たな情報の記録も口頭で指示することが可能です。また、患者が使っている薬の副作用を知りたければ、システムに向かって口頭で質問するだけで求める答えを引き出すこともできます。

BlueLENSの持つこうした機能を活用することで、医療関係者は厄介な書類仕事から解放され、その分の時間を本質的な患者のケアに費やすことができるようになるでしょう。それによって病状が改善したり、病気の再発を抑えたりすることができれば、医療コストの削減にもつなげられるかもしれません。

いつまでも健康で長生きし、幸せに暮らしたいという人類の「夢」の背後には、未解決のさまざまな問題が潜んでいます。そうした問題を解決するための「処方箋」として、今後もコグニティブ・コンピューティングが活用されていくことを期待してやみません。

photo:Thinkstock / Getty Images

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