世界の救世主?人の脳がモデルのスパコン誕生

仏教の古い経典によれば、人の心は光の17倍ほどの速さで変化するのだとか。誕生から70余年を経てコンピューターの性能はあらゆる面で急速な進化を遂げてきましたが、ヒトと同じレベルで外界を認知し、思考することのできるコンピューターは残念ながら今のところ完成に至っていません。

そんな中、ここ数年の間に、コンピューターを取り巻く世界で劇的な変化が起こりつつあります。人工知能研究の分野では機械学習やディープ・ラーニングといった新たな技術が誕生し、その技術を支えるべく、ハードウェアの性能も日進月歩の勢いで進化を続けているのです。

脳の仕組みに着想を得た、比類なきスーパーコンピューター

2016年3月、ローレンス・リバモア国立研究所は、「IBM TrueNorth」と呼ばれる画期的なプロセッサーを搭載したスーパーコンピューター・プラットフォームを導入したと発表しました。IBM TrueNorthは人間の脳から着想を得た「ニューラル・ネットワーク」をベースとして開発された、従来とは全く異なるプロセッサーです。

このTrueNorthチップを採用することで、パターン認識や統合感覚処理といった複雑なタスクを、従来のチップよりはるかに効率的に処理することが可能となります。具体的には、1600万のニューロン(神経細胞)と、電気信号を化学物質の信号に変えて神経細胞に情報を伝達する役割を持つシナプス40億個分に相当する処理を行い、驚くべきことに16個のTrueNorthチップに対して、わずか2.5ワットの電力しか消費しないそうです。

世界の平和を支える先進のテクノロジー

今回導入されたシステムは、米国国家核安全保障庁(NNSA)においてサイバー・セキュリティーや国家の核抑止力強化、核不拡散といった問題を研究するために活用されます。機械学習やディープ・ラーニングの技術を用いた高度なシミュレーション処理を実行する上で、プロセッサーの処理速度向上や消費電力の低減は非常に重要な課題でした。それが、TrueNorthを搭載した今回のプラットフォームを採用することで、従来のコンピューターと比べようもないほどの低電力が実現できると考えられています。

この先進テクノロジーによって、より速く、そして効率的に「考える」ための基盤が形成され、コンピューターはまた一歩、人間に近づきました。我々の「脳」から着想を得た比類なきスーパーコンピューターが、この世界の平和を守る「ガーディアン」となる日が、遠からず訪れるのかもしれません。

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