スマート・ファブリックという名の「着るコンピューター」

昨今、IT分野において目覚ましいスピードで進化を遂げつつある医療業界。その進化を後押ししているのは、「スマート・ファブリック」と呼ばれる素材です。スマート・ファブリックは極小の半導体やセンサーなどを織り込んだ布地などの素材で、衣服制作に用いられるなど、まさに文字通りの「着る(ウェアラブル)コンピューター」です。

スマート・ファブリックに秘められた無限の可能性

スマート・ファブリックで作られた衣服は、着用した人の汗から収集したデータを解析し、体温や心拍数、発汗状態などを測定。そのようにして得られた情報をアプリで蓄積・分析し、さらにその情報をアプリ側からスマート・ファブリックへとフィードバックするような仕組みを作ることも可能です。

仮に病院の入院患者用の病衣をスマート・ファブリックにすれば、患者の健康状態をリアルタイムにモニターし、必要に応じて自動的に投薬を行うような仕組みが完成します。さらに、こうしたITの進化で医師や看護師のルーチン作業が大幅に効率化できれば、その分の時間を入院患者への手厚いケアに回すことができます。

「着る」を超えた「埋め込み型」スマート・ファブリックが、医療の歴史を塗り替える!?

また、前述のような「肌の上に着る」スマート・ファブリックだけでなく、体内で使用するタイプのスマート・ファブリックのアイデアも登場しています。

例えば、昨今注目を浴びている形状記憶ポリマーと呼ばれる素材をご存じでしょうか? 形状記憶ポリマーは、温度変化などの外的な刺激を受けると、成形された形から本来の形に戻るという特性を持つ素材です。それを用いて心臓血管用の医療機器を作製すれば、挿入時は可能な限り小さなサイズにしておき、目的の場所に到達した時点で本来の大きさ・形に展開させることができます。また、スマート・ファブリックと3Dプリンタ、そしてIoTの技術を組み合わせれば、医療技術の分野において、まさに無限の可能性を見いだすことが可能となるでしょう。

Apple WatchやFitbitの普及によって、「ウェアラブル・コンピューター」という言葉はすっかり身近なものになりましたが、スマート・ファブリックの登場により、その定義が大きく塗り替えられようとしています。これからのウェアラブル・コンピューターは「腕にはめて使うコンパクトなコンピューター」の域を超え、さまざまな形で人体と連携して動く革新的なテクノロジーへと進化していくに違いありません。

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