「生涯を通じて健やかに、自立した生活を送りたい」というのは、多くの人に共通した願いだといえるでしょう。しかし、世界的な高齢化率の上昇に伴い、晩年を病院などのベッドの上で過ごす人が増えてきているのも事実です。こうした状況を背景に、ベッドの上にいる人の安全を守るさまざまな技術が日々、新たに生み出されています。

リアルタイムに呼吸状態を把握すれば、多くの人命を救える可能性が…

ベアリングや小型モーターなどの製造・販売を手掛けるミネベア株式会社は、2015年、日本IBMや千葉大学と共同で、生体情報モニタリングシステムの開発に着手しました。

ベッド上の人の「呼吸の有無やその回数推定」「呼吸1回あたりの換気量(呼吸の深さ)」「呼吸のパターン」を生体情報と定義してモニタリングするシステムで、これらの情報をリアルタイムに把握できれば、多くの人命を救える可能性があります。呼吸状態は患者や非介護者の身体状態を見守り、睡眠時の呼吸障害や病状の急変などを把握する上で非常に有用な情報となるためです。

従来のようなセンサー装着型の計測システムには、患者や被介護者の活動を制限したり、不快感を与えてしまったりするというデメリットがありました。このシステムは後付けで設置して使用できるため、患者は不自由な思いに悩まされることなく、常に見守られている安心感の中で快適な生活を送ることができます。

データ分析で「命の危険」を予測する

また、センサーを通じて収集したデータを、リアルタイムに医療関係者と共有できるという特徴もあります。患者の呼吸状態を看護記録用システムに自動入力したり、モニターなどにリアルタイムで表示させたりすることで、病状の急変を早期に発見・対応できるようになります。また、看護師が夜間に病室を見回る頻度の低下などによる仕事量の軽減、患者の睡眠の質を改善するなどの効果も期待できます。将来的には、収集・蓄積されたデータを分析し、機械学習技術を用いて効率よく判別することで、睡眠の改善や医療事故の回避などにも役立てることも可能となるでしょう。

ミネベアは、自社の高精度荷重センサーと日本IBMの機械学習技術の連携でこのシステムを完成させ、2016年中の製品化を目指すとのこと。適度に離れた場所からベッド上の人を見守り、命の危険を予測する「賢いセンサー」は、高齢化社会における医療現場改革の強力な一手となりそうです。

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