東京大学の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞――。

2015年10月、このニュースに日本中が沸きました。受賞理由は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」。

東京大学宇宙線研究所

© 東京大学宇宙線研究所

しかしこの快挙が意味するところを理解できた人は、そう多くはないはず。ニュートリノとは、物質を構成する基本単位である素粒子の一つです。私たちの身の回りに無数にあるけれど、捉えることが難しく……いや、詳しい説明は後にしましょう。とにかく、ニュートリノという小さな粒子に質量があることを梶田先生が示し、それが物理学の新たな扉を開ける大変な成果だったのです。

そのすごい発見が、人里離れた岐阜県の山深い場所でなされました。それも地下1000メートルの実験施設です。まるで秘密の要塞のようなこの場所こそが、近年のニュートリノ研究において世界をリードしてきました。

名前は「東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設」(以下、「神岡研究施設」)。今回ぜいたくにも、施設長である中畑雅行教授にご案内いただく機会を得ました。

いったいどんな研究施設なのか、なぜこんな山奥の地下にあるのか、ニュートリノとはなんなのか――。しばし、物理学をめぐる旅に出かけてみましょう!

 

富山駅から南に約30km。バスで1時間ほど行った国道41号線沿いに、目指すべき場所はありました。住所は岐阜県飛騨市神岡町。まず向かったのは、地下実験施設のそばにある研究棟です。中畑先生がにこやかに迎えてくださいました。

中畑先生

「いま私たちがいる研究棟は標高340メートルです。このすぐそばに高さ1368メートルの池ノ山がありますが、実験施設はその山頂直下1000メートルにあります。そこに『カミオカンデ』を造ったのが1983年のこと。ここ神岡での研究の始まりです」

神岡には目的の異なる複数の装置がありますが、その中でも最も有名なのが「スーパーカミオカンデ」でしょう。梶田先生をノーベル賞に導いたのもこちらです。カミオカンデはその前身となる装置で、直径16メートル、高さ16メートルの円柱形の観測装置です。中に3000トンの水が入る巨大な水槽のようなものです。

2002年、小柴昌俊教授にノーベル賞受賞をもたらした世界的なニュートリノ観測を成し遂げたのがカミオカンデで、この装置こそが日本のニュートリノ研究を切り開いたといえます。しかしその道のりは、平たんではありませんでした。そもそもカミオカンデは、ニュートリノ観測のために造られたものではなかったのです。

“失敗”をきっかけにニュートリノ観測へ

大気ニュートリノは地球上の大気で作られ、あらゆる角度から飛来している

大気ニュートリノは地球上の大気で作られ、あらゆる角度から飛来している  ©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「カミオカンデの建設当初の目的は、『陽子崩壊』を観測することでした。原子の構成要素の一つである陽子は、未来永劫壊れることはないものだと以前は思われていましたが、1970年代になると、実は寿命があって、いつか崩壊するはずだと予言されるようになりました。それが陽子崩壊です。確かめることができれば、現在の物理学の枠組みを発展させる大変な発見になります。『よし、これを観測しよう』と小柴先生の発案で造られたのがカミオカンデでした。大量の水をためて、その中にある莫大な数の陽子をじっくり観察して、崩壊する様子を捉えようという計画です」

――なぜこの場所に?

「地球には常に、『宇宙線』と呼ばれるさまざまな粒子が、宇宙から大量に飛んできています。陽子崩壊のようなまれな現象を地上で観測しようとしたら、宇宙線が邪魔して観測ができません。ところが、地下1000メートルまで潜ると、宇宙線は岩盤などに阻まれて約10万分の1まで減ってくれます。それゆえ、このような場所に造る必要があったのです。特に池ノ山は、実験に必要な大量の水が山の中にすでにあること、飛騨片麻岩という硬い岩でできているため大きな空洞を造っても壊れないこと、その上、鉱山として機能していたために運営会社によって安全管理が行き届いているという、必要な条件がそろっていました」

カミオカンデが建設されて83年に実験が始まると、きっとすぐに何十個という単位で陽子の崩壊が見つかるはずだと考えられていました。しかし、そううまくは運ばないのが実験です。

「私が小柴研究室に入ったのは、ちょうどこの時代のことでした。陽子崩壊で論文を書くぞと意気込んでいました。しかしすぐ見つかると聞いていたのに、その気配もありません。『だまされた』と思いました(笑)。その段階で『カミオカンデは失敗だった』ということで終わってもおかしくなかったのですが、そうはなりませんでした。小柴先生が新たな提案をしたのです。陽子崩壊の発見にはカミオカンデは小さすぎるようだけれど、では、ニュートリノを捉えられるようにしようじゃないか、と」

それが、この施設でのニュートリノ研究の始まりとなったのです。

長年の試行錯誤の末に起きた奇跡

ニュートリノとは何か? それは、物質を構成する素粒子の一つです。素粒子とは、これ以上分けることができない物質の最小単位で、現在17種あるとされています。そのうち「電子ニュートリノ」「ミューニュートリノ」「タウニュートリノ」の3種類を総称してニュートリノと呼んでいます。

ニュートリノは138億年前に宇宙が生まれたときに大量に生まれ、その後も太陽や、その他の星の中で常に生まれ続けています。特に地球には、太陽で生まれたニュートリノが大量に飛んできています。なんと毎秒数百兆個もが私たちの身体を通り抜けているとか。私たちの身の回りは、まさにニュートリノだらけなのです。

「そんなに大量にあるにもかかわらず、ニュートリノは目に見えない上、なんでも通り抜けてしまうため、その存在は感じられず、非常に捉えにくいのが特徴です。50年代に存在することが初めて確認されはしたものの、80年代になっても多くの謎に包まれたままでした。その謎の一つが『太陽ニュートリノ問題』です。実際に太陽から飛んでくるニュートリノ(=太陽ニュートリノ)の数が、理論的予想よりもかなり少ないという報告がありました。ただし理由は不明。そこで、カミオカンデでも太陽ニュートリノを捉えて確かめてみようということになったのです」

カミオカンデには、3000トンの超純水が入っています。ニュートリノはそのほとんどが水槽内の水とも反応せずに通過しますが、ごくまれに水の分子と衝突して別の粒子をたたき出すことがあり、それを観測する方法はあります(後述)。カミオカンデを少し改造することで、その観測が可能になりました。

87年には太陽ニュートリノの観測を行える状態になり、データの取得が始まりました。そうして新たな目標が生まれました。ところがその直後のこと、誰もが予想しなかった大転機が、突然訪れたのでした。

「87年2月23日に大マゼラン星雲で超新星爆発という現象が起きて、そこで生まれたニュートリノがカミオカンデで観測できたのです。超新星爆発とは、寿命のきた星が最後に爆発することです。正確に言うと、爆発が起きたのは16万年前で、そこから16万年かけて飛んできたニュートリノが地球を通過したわずか10秒間ほどの信号を捉えることができたのです」

1987年2月23日、大マゼラン雲における星の爆発により発生した超新星SN1987A(左)、星が爆発する前(右)© 1989-2010, Australian Astronomical Observatory, photograph by David Malin.

1987年2月23日、大マゼラン雲における星の爆発により発生した超新星SN1987A(左)、星が爆発する前(右)© 1989-2010, Australian Astronomical Observatory, photograph by David Malin.

超新星爆発のニュートリノを捉えるのは、世界で初めてのことでした。超新星爆発自体、その前に観測されたのは約350年前で、それがこのとき、カミオカンデがニュートリノ観測に向けて動きだした直後かつ、小柴先生が退官される直前に起きたのです。驚くべきタイミングです。長年の努力と試行錯誤が呼び寄せた奇跡であるようにも感じます。

小柴先生は、この成果によってノーベル賞を受賞することになりました。ちなみに、そのときにカミオカンデのデータを解析したのが中畑先生なのです。

データ解析に使用した貴重な資料を見せていただいた

データ解析に使用した貴重な資料を見せていただいた ©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

 

ニュートリノ振動を確認する

その後88年には、カミオカンデは太陽ニュートリノの観測にも成功し、他の研究者の観測と同様、理論値よりも数が少ないことを確認しました。

一方、並行して観測していたのが「大気ニュートリノ」です。これは宇宙から飛んできた宇宙線が地球の大気と衝突するときに生じるニュートリノで、実はこれも理論値より少ないことが、カミオカンデによる観測からわかってきました。

「つまり、太陽ニュートリノも大気ニュートリノも、理論より観測の方が少なかったのです。その原因として考えられていたのが『ニュートリノ振動』という現象でした」

ニュートリノには電子型、ミュー型、タウ型の3つの種類があると書きました。ニュートリノ振動とは、飛行している間に3種のうちの別の種類のものに周期的に「変身」する現象です。もともとミュー型だったものが、飛んでいる間にタウ型に変身する。タウ型は観測がとても難しいため、そのような変身が起きていれば、あたかもニュートリノが減ったかのように見えるのではないか。そう考えられたのです。しかし確実な証拠はありませんでした。

「そこで、カミオカンデよりもっと大きい装置でたくさん事象を集めれば証拠が得られるのではないかと、新たな計画が動きだしました。そうして同じく神岡の地下施設に造られたのが、容積でいえば10倍以上となるスーパーカミオカンデです。建設着工が91年、装置の稼動を開始したのは96年。そして2年ほどデータをためたのち、98年に、はっきりと大気ニュートリノにおけるニュートリノ振動が確認できました」

スーパーカミオカンデ

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

スーパーカミオカンデには、上空からも地球の裏側からもニュートリノが飛んできます。どちらも同じく宇宙から飛んでくるので、数は同程度のはずですが、地球の裏側から来る方が、数が少ないことが観測されました。これは、地球の裏側で生じたミュー型が、上空から来るものに比べて地球の直径分に当たる約1万3000kmを余計に飛行する間に、タウ型に変身してしまったためです。カミオカンデでも同様の観測がなされていましたが、スーパーカミオカンデになって観測できる事象の数が桁違いに多くなり、確実にそういえるようになったのでした。ニュートリノ振動が確かに起きていることが分かりました。

鉱山を利用して建設されたスーパーカミオカンデの全体像

鉱山を利用して建設されたスーパーカミオカンデの全体像 ©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

ニュートリノ振動は、ニュートリノが質量を持っていないと起こり得ない現象です。それゆえこれが、ニュートリノに質量があるという決定的な証拠になったのでした。2015年に梶田先生がノーベル賞を受賞されたのは、この成果によってです。

「では、実際に現地に行ってみましょうか」

神岡研究施設が歩んできた壮大な歴史を1時間ほど伺ったあと、中畑先生のご案内のもと、いよいよスーパーカミオカンデを見学させてもらうことになりました。

いざ、スーパーカミオカンデへ!

施設入り口

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

施設入り口

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「ここが施設の入り口になります」

研究棟から車で10分も走ると、池ノ山の側面、実験施設の入り口に着きます。そのまま車で真っすぐ延びる真っ暗な坑道を入っていくと、約1.7km先にスーパーカミオカンデの入り口がありました。車を置いて扉の中へ。そして数十メートル進んでいくと、円形のドーム状の空間に到着しました。

スーパーカミオカンデ水槽上側

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「ここがスーパーカミオカンデの水槽の上側です」

立っているのは、直径39.3メートル、高さ41.4メートルの円柱形の水槽の上。水槽の中は5万トンの超純水で満たされ、その壁面には、光電子増倍管と呼ばれる光センサが1万1000本余り設置されています。水槽のふたは、ここ10年ほど開けられておらず、中を見ることはできませんが、まさにこの足元で、いまこの瞬間もニュートリノや宇宙線が検知され、データが蓄積されているのです。

光電子増倍管と呼ばれる光センサに埋め尽くされた壁面

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「ニュートリノなどが水分子に当たると、電子やミューオンといった電気を持った粒子がたたき出されます。それらの粒子が水の中を走ると、チェレンコフ光と呼ばれる光が発生します。光電子増倍管は、その光を捉えて電気信号に変換します。その信号によって、ニュートリノなどが入ってきたことがわかるのです」

光電子増倍管

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

それがカミオカンデ、スーパーカミオカンデに共通する原理です。光電子増倍管で得られた信号は、水槽上面にある信号処理のための部屋に送られます。約1万1000本分のデータが、4つの部屋に分けられて処理されます(写真・下)。

光電子増倍管から伸びたケーブルがつながった装置

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「光電子増倍管一本一本が、ケーブルでいずれかの部屋へとつながっています。送られてくる信号がすべて同じタイミングで得られるように、ケーブルの長さは等しく70メートルになっています。ここまでの距離が最も長い水槽の底面中央に設置された光電子増倍管にあわせてあるためです」

つまり、ケーブルの長さだけを合わせても700km以上という長さに! その大量のケーブルが棚の中に収納されているのが見え、この空間をいかに膨大なデータ量が行き来しているのかが想像できたのでした。

再び来た道を戻り、入口近くのコントロール室へ。先の4つの部屋で処理されたデータが集まってくる場所です。

データを見守る

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

モニター

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

「朝8時から夕方4時まで、送られてくるデータを、当番の職員がここで見ています。チェレンコフ光のパターンの違いをモニタの図で見ることで、飛んできたのがニュートリノなのか宇宙線なのかといったことがわかります。1秒間に2回ほど、宇宙線の信号を得ます。そのうちニュートリノによるものは、1日30個ぐらいです」

新たなデータを表示し続けるモニタを見ていると、まさにいまこの瞬間、スーパーカミオカンデが動いているのを実感できます。

最後に超純水製造装置へ。山の中を流れる水をくみ上げて、この装置で極限まで余分な成分が除去されます。それを循環させてきれいに保つことで、5万トンもの超純水が供給され続けるのです。できた水は100メートル先まで見えるほどの高い透過率を持っているとのこと。透明度は世界一かもしれません。

巨大な実験装置

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

巨大な実験装置

©東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設

この巨大な実験装置が、いかに精密な設計のもとに造られたのか。そのことを実感しながら、再び約1.7kmのトンネルを抜けて外へと出てきたのでした。

「世界初」のほとんどすべてが神岡で

スーパーカミオカンデの活躍は、ニュートリノ振動の発見にとどまりません。その後も次々に成果を上げています。

その一つが、人工的に作ったニュートリノを用いてニュートリノ振動を確認した、K2K(KEK to Kamioka)実験です。つくば市のKEK(高エネルギー加速器研究機構)の加速器で作られたニュートリノを、約250km離れたスーパーカミオカンデで観測し、数が減っていることを確かめようという試みです。99年から2004年にかけて行われ、自然界の大気ニュートリノの振動と同様の現象が確認されました。

さらに、2009年に始まったT2K(Tokai to Kamioka)実験では、茨城県東海村のJ-PARC加速器で作られたニュートリノを、295km離れたスーパーカミオカンデで受けるという実験を行い、ここでもまた別のニュートリノ振動を確認しました。

「こうして、3種類のニュートリノすべての振動を解き明かしたことになります。カムランド(カミオカンデの跡地に造られた東北大学の研究施設で、原子炉から飛んでくるニュートリノのニュートリノ振動を確認)による成果も含めて、ニュートリノに関しては、ほとんどの現象が、この神岡で最初に確認されています。ニュートリノ研究は、まさに日本が世界をリードしてきた分野だといえるでしょう」

さらなる宇宙の理解へ向けて

中畑先生

ニュートリノ振動が解き明かされたものの、解明すべきことはまだいくつも残っています。神岡の施設での研究は、これからどのような方向を目指すのでしょうか?

「一つは、87年にカミオカンデが捉えた超新星爆発のような現象を、スーパーカミオカンデでも観測することです。実現すれば、カミオカンデの時以上の成果が期待できます。ただ、爆発が起きなければ観測はできません。チャンスは30~50年に一度程度なのですが、なんとか近いうちに起きてくれないかと願っています」

もう一つ、いま進んでいる計画としては「SK-Gdプロジェクト」があります。

「宇宙全体では概ね1秒間に1回、超新星爆発が起きています。その爆発によって生まれたニュートリノが、毎秒数十個ほど我々の手のひらを通り抜けていて、それは『超新星背景ニュートリノ』と呼ばれています。宇宙空間に漂う過去のニュートリノです。それを捉えようというのがSK-Gdプロジェクトです」

SKはスーパーカミオカンデ、Gdはガドリニウムという金属の一種。ガドリニウムをスーパーカミオカンデの水槽内に溶かすと、ニュートリノの検出効率が上がり、これまではノイズに埋もれて見えなかったニュートリノも捉えられるようになります。そうすれば、超新星背景ニュートリノを捉えることができるかもしれないのです。

「これは、宇宙の初期のニュートリノを観測するプロジェクトです。成功すれば、宇宙の成り立ちについて大いに理解を深められるはずです。まだ準備段階ですが、近々実際に始められるめどが立ってきています」

ハイパーカミオカンデ計画

最後に、将来に向けてのさらに大きなプロジェクトについて。それが「ハイパーカミオカンデ計画」です。これは一体どういったものなのでしょうか?

「カミオカンデの当初の目的は、陽子崩壊を観測することでした。しかしスーパーカミオカンデに至っても捉えられていないこの現象をハイパーカミオカンデで見つけようというのが、一つの大きな目的です。ただ、それだけではありません。もう一つは、宇宙の成り立ちに関わる問題の解明です。138億年前にビッグバンでこの宇宙が生まれたとき、宇宙は、物質も何もないエネルギーの塊だったと考えられています。エネルギーの塊から物質が生まれる場合、その反対のものが必ず生まれます。つまり、粒子に対する反粒子です。電子に対しては反電子、陽子に対しては反陽子が、必ず同じ数だけ生まれなければなりません。

しかし、宇宙を見渡すと、粒子ばかりで反粒子がありません。それがなぜなのかは今もわからぬ宇宙の大きな謎の一つですが、そこにニュートリノが関係しているのではないかといわれています。ニュートリノの振動と反ニュートリノの振動を調べれば、何か違いがあるのではないか。そんな予想がされています。それを解明しようというのが、もう一つの大きな目的なのです」

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一つの水槽の体積は26万トン。二つの水槽でスーパーカミオカンデの20倍の性能を持つ © ハイパーカミオカンデ研究グループ

宇宙とは、どういう場所なのか? 私たちの存在の根本を問う謎に神岡研究施設は挑み続け、世界をリードしてきました。その根本を支えている精神は何なのでしょうか? 尋ねると、中畑先生はこう答えてくれました。

「根源的なところを理解したいという気持ちを持ち続けることが大切です。最近はなんでも、3年や5年といった短い期間で成果を出すことを求められがちですが、大切なところにたどり着くのは、とても時間がかかります。長い時間をかけて根源的なところを目指す気持ちを、常に大事にしていかなければならないと、私は強く思っています」

TEXT:近藤雄生