「未来を知りたければ、その未来に対して影響力を持つ方々と会話をすればよい」

テクノロジーの進歩に伴い、グローバル化・ハイスピード化が進む世界のビジネス。その営みの先に、どんな未来が広がっているのかを予測することは、これまでにないほど難しくなっています。
しかし、厳密かつ独創的な手法を用い、これからのビジネスに必要な要素を浮き彫りにする意欲的な調査結果が公開されました。その名は「グローバル経営層スタディー(IBM Global C-Suite Study)」。「未来を知りたければ、その未来に対して影響力を持つ方々と会話をすればよい」という考えのもと、10年以上にわたって行われてきたIBMのCxOスタディー・シリーズ。その17回目の調査レポートです。
世界のCxOが考える変化する環境への適応今回の調査の特徴は、CEO(最高経営責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)など、世界70カ国、総勢4,183人の「CxO」と呼ばれるビジネス・エグゼクティブへの徹底したインタビューを通じて、企業がこれからの世界で成功を収めるための秘訣を探っていること。過去の調査と異なり、ほかのCxO、たとえばCEOとCIO(最高情報責任者)の関係など、「つながり」に着目している点にあります。個々のエグゼクティブの考え、そしてそれが他の経営層におよぼす影響。この2点に着目することで、より深い洞察が展開されています。
では「個客価値の共創」というタイトルがついたこのレポートが示す、成功のカギとなる3つの主要なテーマを、簡単にご紹介しましょう。

コラボレーションが成功をもたらす時代の到来

1つめのテーマは「顧客の影響力を受け入れ、経営に活かす」。
インタビューした過半数のCEOが、顧客が自社に与える影響力は大きいと回答しています。面白いことに、この傾向は高業績企業が低業績企業に比べ24%も高い、という調査結果が示されています。先進的な企業は、顧客の声を聞くアドバイザリー・ボードの設置や、ソーシャル・メディア上の声をマーケティングに活かすなど、自社の課題やアクションに関する重要な情報を直接顧客から得ようとしています。
調査結果には、顧客に自社の戦略策定へ参加してもらうためには、顧客中心型ではなく「顧客との共創型」の組織を目指すべきであると提言されています。そのために必要なのは、重要な意思決定に顧客の意見を反映させる、経営陣の覚悟だとレポートは語っています。

2つめのテーマは「デジタルと実世界の統合、このイノベーションの先駆者となる」。
特にCMOを中心に、有効なデジタル戦略の策定は、顧客接点を再考するにあたって喫緊の課題だという認識は、経営層の多くが持っているもののようです。一方で、調査対象のうち3分の2の企業は、デジタルと実世界の統合に関する戦略を全く持っていない、あるいは曖昧なものしかないと回答しています。ここでも、高業績企業であればあるほど、デジタルと実世界を統合するイノベーションの先駆者であることがデータで示され、その重要性が述べられています。

そして3つめとして「魅力ある顧客体験をデザインする」というテーマが挙げられています。
前述した、顧客の影響力をより強く意思決定に反映させるべき、という方向性。これを実現させるために重要なのが「魅力ある顧客体験」だとレポートは説きます。しかし多くの企業では、顧客体験向上のための施策にあたって、ソーシャルの優先度は低く見積もられているのが現状だ、というデータも示されます。一方で先進的な企業は、ソーシャル上のデータに深い分析を加え、顧客の価値判断基準や、生活内のイベントの把握、つまり「デジタルと実世界の統合」を行い、有効な顧客体験向上策を打ち出しています。このような取り組みを積極的に行っていくことは、競合他社と差別化して自社が成功を手にするために、とても重要な手段であることが、レポートでは主張されているのです。

エグゼクティブ層の言葉から、いくつもの重要な示唆を示してくれている本レポート。しかし、現在公開されているのは、実はまだ総論的な内容に過ぎません。今後、各CxOの役割ごとに深められた議論をもとに「CxO別レポート」も準備されているとのこと。多くのビジネスマンにとって、必読となることは間違いないこの詳細レポート、一刻も早い公開が待たれます。

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