学生の成績から出席率まで把握するWatsonの、ドロップアウト防止策

米国教育省の調べによれば、米国内の全学生の1/3が大学入学後に補習などを必要とし、多くの学生が勉強についていくことができず、途中でドロップアウトしてしまうことが分かっています。

このような事態を食い止めるための手段として、近年、IT技術を活用した教育革新に期待が集まりつつあります。

Watsonの技術で生徒の姿を浮き彫りに

米国テキサス州のコペル・インデペンデント・スクール学校区(以下、CISD)も、そうした新たな試みに積極的に取り組んでいる教育機関の一つ。CISDでは、教師は「デザイナー(Designer)」、生徒は「ラーナー(Learner)」と呼ばれ、開放的な環境のもとで両者が協調し合い、ユニークな手法を取り入れながらより良い教育の形を模索しています。

取り組みの一環として、CISDではIBMが開発した「IBM Watson Element for Education」という教育機関向けの新しいアプリを採用しました。IBM Watson Element for Educationは教育者向けにアレンジされたアプリで、生徒に関するさまざまな情報をスマート端末の画面上で統合的に閲覧・利用することができます。

簡単な操作で生徒の関心、強みや弱み、学業成績、出席率、これまでの学習活動の履歴といったありとあらゆる情報を呼び出すことができるほか、将来的には他校の事例データなどと連携し、生徒の課題解決のための最良の戦略を瞬時に導き出すといった使い方も可能となっていくでしょう。

全ての生徒に「カスタマイズされた教育」を

近年、バーチャル・リアリティーやMOOCS(大規模オープンオンライン講座)といったさまざまな新しい技術によって、教育界にもテクノロジーの波が押し寄せています。しかし、「生徒の特性に応じた指導の実現」という、本来もっとも重視されるべきポイントが見過ごされがちでした。Watsonを代表とするコグニティブ技術の活用は、この欠けていたピースを埋める新たな一手となることでしょう。

マーケティングの世界には、顧客を深く理解し、企業と顧客の間に1:1の関係を築く「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」というアプローチが古くからありますが、教育の領域においてもコグニティブ技術の助けを借りて「ワン・トゥ・ワン・エデュケーション」が実現しつつあります。

生徒一人ひとりに対してカスタマイズされた教育が実現し、学力不足によりやむなくドロップアウトする学生が一人でも少なくなることを願って止みません。

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