汚染食品で命を落とす3000人を救う、危険予測アルゴリズム

食品の安全性に対する関心は、年々高まる一方です。

食中毒、アレルギー、食材の汚染や産地偽装といった食品に関するさまざまな問題が引きも切らず発生し、消費者の要求は日々厳しくなってきています。

汚染食品がもたらす甚大な被害に立ち向かう

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の調べによれば、毎年6人に1人のアメリカ人が汚染された食品や飲料が原因で健康を損ない、年間約3000人が命を落としているそうです。また、米国農務省は、こうした疾病対策にかかるコストは年156億ドルに及ぶという調査結果を発表しています。

米国における食品のリコール発生率も増加の一途をたどり、2016年4月から6月にかけてのリコール件数は、同年1~3月を80件も上回りました。

こうした問題に取り組むため、最新の技術を活用した新たなリスク対策の手法が、積極的に研究されています。

問題発生に先駆ける「予測的アプローチ」

IBM Research所属のLaxmi Parida博士のチームは、データ駆動の「予測的アプローチ」を用いて、この問題に取り組んでいます。

従来、食の安全性への取り組みは発生した問題に都度対処する形で行われてきましたが、博士のチームが採用したアプローチでは、大量のデータをもとに、食品に潜む危険性を「予測」する手法が取られます。

食材や微生物、病原菌などに関する多種多様な情報をデータベースに蓄積し、これらをベースとしてアルゴリズム法により危険を予測するのです。アルゴリズムはデータを精査し、データから浮かび上がるパターンを捉えて学習し、明確なリスクの兆候が表れていない段階で危険を予測します。

博士はこのプロジェクトに先駆けて、がん患者に対しパーソナライズされた治療法を提案するための仕組みを構築していますが、その際にも同様のアルゴリズム法が採用され、システムにはIBM Watsonのコグニティブ技術が活用されているそうです。

アルゴリズム法の長所は、状況に応じて適宜アプローチを調整しつつ進んでいけるところだと、博士は述べています。

パートナーの動きに合わせ即興でステップを踏むタンゴ・ダンサーのごとく柔軟に形を変えていく危険予測のアルゴリズムは、食品関連業者を助け、消費者の安全を守る強力な武器となることでしょう。

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