米国小売業界の巨人ウォルマートが世間を仰天させる行動に出たのは2011年。シリコンバレーに拠点を置くスタートアップ企業買収を皮切りにはじめたのは、“小売 + ソーシャル + モバイル”によって小売業界に革新を起こすことでした。オンライン小売業の雄Amazonへ挑戦状を、ウォルマートの戦略に迫ります。

業界を震撼させた驚きの買収劇

「世界最大の売上を誇るスーパーマーケットチェーン・ウォルマートが、シリコンバレーの新興企業Kosmixを買収する」とのニュースは、世界に衝撃をもたらしました。Kosmixは、Google本社と同じマウンテンビューに拠点を置くスタートアップ企業。“オリンピック”“アメリカ大統領選挙”など人々が話題にするテーマに関して、重要なツイートのみをフィルタリングしPC上で閲覧できる“TweetBeat”などのソーシャル・フィルタリング・サービスで注目を集めていました。WEB上に存在するあまたの情報をテーマごとに整理し、オンライン上での人々の発言から重要なものだけを自動で抽出するツールを着々と開発していた矢先の出来事でした。

一見まったく脈絡がなさそうに見えるウォルマートによるKosmix買収劇。しかし、Kosmix創業者2人の過去を振り返れば納得できるはず。Venky HarinarayanとAnand Rajaramanの2人はかつて、Jugleeと呼ばれる比較ECサイトを世界に先駆けて開発し、たった2年後の1998年にAmazonへ約2億5千万米ドルとも言われる金額で売却したという経歴の持ち主なのです。

ウォルマートによる買収を受け、Kosmix創業者の2人はウォルマートのグローバルeコマースのシニア・バイス・プレジデントに就任(当時)。ウォルマートの一部となったKosmixは「@WalmartLabs」として名称も変更され、最新テクノロジーを駆使した新しい買い物体験を提供するための開発拠点として生まれ変わりました。“小売の未来を創る”挑戦がはじまったのです。

Amazonへの2つの秘密兵器とは?

実店舗での小売業界においては不動の地位を誇るウォルマートですが、オンラインでのプレゼンスは今ひとつ。そこはeコマースの巨人Amazonが牙城を構える市場です。この圧倒的存在に対し、@WalmartLabsが考える2つの対抗策について、当時Anand Rajaramanに対して行われたインタビューをもとに考えます。

1つ目は、Kosmixが開発を進めていたテクノロジーによる、顧客分析領域における差別化です。ユーザーのソーシャル上でのつぶやきなどを、その背景にある意味を中心として分析し、より深いインサイトを得ることでニーズの理解を高めることができます。Amazonが自社サイト内でのユーザー行動のみをベースにそのリコメンド機能などを提供しているのに対して、WEB全体におけるユーザーの発言を分析できるのが特徴です。

2つ目は、スマートフォンと実店舗を組み合わせたいわゆる“O2O(Online to Offline)マーケティング”を活用したユーザー体験における差別化です。例えば専用アプリをダウンロードさえしておけば、最寄りのウォルマートに入店した際に自動でオススメ商品をプッシュ通知してくれる、そんなシームレスな買い物体験を実現するポテンシャルを秘めているのです。

“小売 + ソーシャル + モバイル” の力で小売業界を変えるウォルマートの挑戦はまだはじまったばかり。シリコンバレー発、@WalmartLabsの挑戦に今後も目が離せません。

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