医療、金融、流通からホテルなどのサービス業まで、さまざまな分野で活躍しているAIである「IBM Watson」。スポーツの領域でも興味深い事例が報告されています。

たとえば、カナダのオンタリオ州・トロントに本拠を置くNBAチーム、トロント・ラプターズ(以下、ラプターズ)では、ユニークな形でWatsonの力をチーム強化に役立てています。

ドラフト指名選手の決定に、Watsonの知恵を拝借

NBAチームにとって、ドラフト会議での選手指名はチームの将来を左右する重要なイベント。チームの競争力を強化するためには、限られた予算の範囲内で、有能かつチームのカラーに溶け込める選手を獲得しなくてはなりません。選手指名は長期にわたってチームに影響を及ぼすため、失敗は許されません。

そのため、スカウト担当者の責任は重大で、チームにとって最良の選手を経験や勘だけで選び出すのは容易ではありません。そこでラプターズは、Watsonの強力な分析力を組み込んだIBM Sports Insights CentralというIBM Cloud とWatsonで構成されたコグニティブ・プラットフォームをドラフト指名選手の決定に活用しています。

チームにマッチする人材を、データ分析で見極め

上記の動画では、選手のパフォーマンスを評するバスケットボール通の男性2人に混じって、Watsonが独自の分析を披露しています。

このように、Watsonの各種コグニティブ APIを活用して、現メンバーのプレイを分析することで、今、チームにどんなスキルが欠けているかを洗い出し、ドラフト候補の中から、必要なスキルを持つ選手を選び出すことができます。例えば、テキストデータから書き手の性格を推測する「Watson Personality Insight」を利用すれば、候補選手のSNSアカウントやインタビュー記録などの分析に基づき、そのキャラクターの特徴をつかみ、よりよいチーム運営に生かすこともできます。

チームプレイに必要なのは、単に技術にのみ秀でた選手ではなく、メンバーと共にチームを勝利に導くことのできる協調性をあわせ持つ選手です。Watsonの助言により、スカウト担当者は技術と個性の両面でフィットする選手を見極められるようになるでしょう。

最終的にどの選手を選ぶのか決断を下すのは人間ですが、Watsonとの連携により、指名選手の決定にかかる時間や労力を短縮できるのは非常な大きなメリットとなります。仮に1位指名した選手が何らかの理由でチームをはなれても、次に指名すべき選手をWatsonが推薦してくれるので、迅速かつスムーズな対応が可能となるはずです。

今後はWatsonの分析力はドラフト指名のサポートだけでなく、長期的にはトレーニングやコーチング、選手たちの健康・体調管理などスポーツ運営に必要な情報をワンストップで集約していくことにも役立てられそうです。

「ドラフト指名選手をAIに推奨させる」というのは、一見、冒険的な試みに見えるかもしれませんが、他のチームがやらない取り組みに果敢にチャレンジしていくことこそが、勝利への扉を開ける鍵となるのではないでしょうか。

 


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