ネットワーク上に生まれる、超高性能コンピューター

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。1人では良い考えが浮かばなくても、3人集まれば、知恵を司る文殊菩薩に匹敵するようなすばらしいアイデアが生まれる、という意味の言葉ですが、実は、このことわざを体現するような技術が存在しています。それは、グリッド・コンピューティング。グリッドとは英語で「電線や回線などの敷設網」を指す言葉で、グリッド・コンピューティングは、複数のコンピューターをつなげ、ネットワーク上に高性能な仮想コンピューターをつくり出す技術です。一台のPCでは性能や記憶容量が足りずにできないような、大掛かりな処理や記録が、グリッド・コンピューティングによって可能になりました。

空き時間で、世界を変える

グリッド・コンピューティングを利用したプロジェクトは世界中に数多く存在しています。その多くが、電源が入っているPCが持ち主の休憩などで作業に使われていない間に、たとえば新薬開発のための解析や、農業が盛んな地域の天候モデリングなどに使われる、といった形態をとります。有名なプロジェクトとしては、World Community Grid(WCG)が挙げられるでしょう。「がん克服支援」「デング熱の治療薬を見つけよう」「ヒトたんぱく質解析」「FightAIDS@Home」「アフリカ気候モデリング」「効率的な太陽電池の開発」などの開発実績を持つこのプロジェクトには、IBMがハードウェアやソフトウェアの提供や運営・保守の面で支援を行っています。

グリッド・コンピューティングが先駆けとなり生み出したクラウドの波

ところで、この「コンピューターを複数つないで、それによってできる大規模なリソースを活用する」というコンセプト、何かに似ていると思いませんか? そう、グリッド・コンピューティングは、クラウド・コンピューティングの先駆けとなった技術なのです。では、クラウドとグリッドの違いとはなんなのでしょうか。
一般的には、「プロビジョニングが簡単・高速かつ効率的にできるか否か」だと言われています。プロビジョニングとは、ユーザーの希望によって適切にリソースを配分すること。たとえば、いきなり大規模な情報データが出現し、高い処理能力が必要になったときには、つないであるコンピューターのリソースを即時追加したり、逆に負荷がピークを過ぎたら、リソース使用量をすぐに変更したりすることができます。この機能によって、大規模処理をスムーズに行うことができますし、余計なリソースを常に確保しておくコストを削減することもできるのです。つまり、グリッド・コンピューティングに柔軟性を加えたものがクラウド・コンピューティングである、ということができるのです。

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