ウガンダで進行中のUNICEF(ユニセフ)によるプロジェクト「U-report」。若者と政府の架け橋となるこのSMSシステムにIBMのテキストアナリティクス技術が使われています。

広がりをみせるテキストメッセージシステム

2011年に運用が開始されたU-report(ユー・レポート)は、SMSベースのレポートツール。ウガンダの若者に政府への発言機会を、という考えのもとではじまったプロジェクトです。フリーダイヤルへテキストメッセージを送信し、いくつかの情報を入力するだけで、携帯端末を持っている人なら誰でも「U-reporter(ユー・レポーター)」として参加が可能。週に1回ほど送られてくる世論調査に答えたり、身近で起きている問題の報告や意見を自由に送信したりすることができます。調査のトピックは、健康問題や教育、インフラや差別問題までさまざま。結果はサイトやSMSを通じて人々に広く公開されるほか、毎度国会議員に対しても共有されており、政策を進めるうえでの重要な判断材料として使われています。

U-reportの登録者は24万人を突破(2013年10月現在)。しかしながら、U-reportが成長するにつれ、ある問題が浮上してきました。レポーターから日々送られてくる膨大な量のデータに対し、ユニセフのスタッフだけでは処理が追いつかなくなってしまったのです。この課題を解決すべく、IBMとユニセフ米国基金によって新たな技術が導入されました。

膨大な情報を処理するテキストアナリティクス技術

ユニセフがひと月に受信するメッセージはなんと17万通。これらのメッセージを項目ごとに分類し、緊急性のあるメッセージをスタッフの手だけで選別するのは困難を極めます。そこで新たに投入されたのが、IBMの「A-クラス」というテキスト分類システム。もともと別の用途で開発されていたテキスト分析と機械学習技術をU-report用に適用することで、メッセージの解析と振り分けを従来よりも格段に早く、そして正確に行うことに成功したのです。

A-クラスのテキスト分類モデルは最新のマシン・ラーニング(機械学習)、テキストマイニング(文章の分析・情報抽出)、そしてキーワードマッチングの技術を組み合わせて開発されています。IBMのワトソンで使われた機械学習技術のように、A-クラスにおいても5万4千通のメッセージを用いての訓練が行われ、分析精度は約85%に達しました。

新システムを取り入れたU-reportはすでに様々な実績を残しています。昨年5月に起きたカセセ地区での洪水では、送られてきたメッセージの緊急性を即座に判別、救援にあたる人々へ情報をリアルタイムで共有し、スムーズな援助を実現しました。A-クラスの導入により、情報の海から重要度の高いメッセージをいち早く察知し、迅速な対応をとることが可能になったのです。ウガンダでの成功を受け、現在は近隣のアフリカ諸国や中東の国々でもU-reportを導入する動きが広がっています。

国の将来を担う若者達の声。それらをただ集めるだけでなく、適確に整理・分析することで、人々の生活を支えるための重要なデータとなります。一人ひとりの意見が生かされるシステムが、世の中をより良く変えていく手助けとなることでしょう。