システム・トラブル解決率100%! ――緊迫した現場に、笑顔をもたらすトラブルシューターに聞く

小学生の頃からプログラミング大好きだった少年が、成長してシステムを支えるトラブルシューターになり、それを専門とする会社を起業した。そして、「まるで名探偵のような問題解決力!」と称賛されている。システム・トラブル解決率100%を誇る技術集団Airitech(エアリテック)株式会社 代表取締役の山﨑政憲氏だ。
「基本的にコンピューターというのは、非常にシンプルな原理で動くものです。人間が指示を与えれば、その通りにコンピューターは動く。トラブルが発生する時は、人間の指示が間違っているのです。だから、どんな難しいトラブルに向き合う時も、『必ず解決できる』という信念を持って対応しています」
そう胸を張る山﨑氏に、トラブルシューターとしての心意気やエピソード、将来展望などについて伺った。

プログラミング大好き少年からトラブルシューターへ

――どうしてシステムのトラブルシュートを専門とした会社を起業しようと思われたのですか?

山﨑 就職して2年目くらいでしたか、担当していたプロジェクトとは別のシステムで性能が出ないと困っているチームがありました。同じお客様を担当していたので、ちょっと呼ばれて行ってみたところ、第三者の冷静な視点で見るとトラブルの原因と解決策がよく分かったのです。
それ以来、何か困ったことがあると「山﨑に聞け」ということになって、以前の職場でトラブルシュート専門の部署が作られ、そこに配属されました。
多くの人が悩んでいたり、困っている現場に入ってトラブルを解決すると、結果的にお客様から感謝されます。こんなに人から頼りにされ、感謝される仕事って他にあまりないんじゃないかと嬉しくなりました。考えてみると、仕事というものはできて当たり前で、なかなか感謝されることはありませんからね。

山﨑政憲氏

もう1つ、トラブルシュートでは、さまざまなシステムに携わることができます。業種も毎回変わり、フロントエンドのECサイトから基幹系システム、物流、通信とありとあらゆるシステムに関わることができます。これはエンジニア冥利(みょうり)に尽きますね。
あらゆる業務のデジタル化は進み、データ量は増えていく。エンジニアはいつも人手不足です。ここに大きなビジネス・チャンスがあると思い、起業しました。会社を立ち上げた最初の1年は大変だよと言われましたが、これまでのお客様が信頼して指名してくださり、ありがたいことに私には最初からお客様がいました。

――もともとコンピューターがお好きだったのですか?

山﨑 子どもの頃からプログラミングをやっていました。当時、家庭用コンピューター・ゲームが流行していて、自分でもゲームを作ってみたいと思い、両親にパソコンをねだって買ってもらいました。パソコン雑誌や全国の中高生がプログラムを書いて投稿する雑誌などを買って勉強し、「技術って本当に面白い!」と夢中になったものです。BASICから始めて、C言語、アセンブラと勉強していきました。当時のパソコンは遅かったので、いかにメモリーを使わずに速く動くゲームをプログラミングするかということに燃えていましたね。いわゆるオタク少年です。

マイコンBASIC

トラブル解決に必要なもの、それは知識、経験、そして人を巻き込む力

――山﨑さんは、ピリピリとした現場に乗り込んで行って、トラブルを解決。そして皆を笑顔にして去って行く。まるで名探偵のような人だと言われていますね。

山﨑 皆が笑顔になるには、大前提として皆で解決しようという方向に向いていないとダメだと思うのです。誰かが責められている現場だとどうにもなりません。マネージャーにもエンジニアにも働いてもらわなければなりません。皆が動いて解決するから、皆でやって良かったねと、そこに笑顔が生まれるのです。

――ITの知見やスキルだけではなく、マネージメントも含め人を巻き込んでいく能力も必要ですね。チームのメンバーは、そんな山﨑さんを見て育っていくのではないでしょうか。

山﨑 ピリピリした現場では迅速に解決策をお示しして、お客様の中のシステムを担当している人にも、そうでない経営層の方にも安心してもらう。その時に最も大切なのは、きちんとした調査結果を自信をもってご説明する姿です。
トラブルの原因は無数に挙げられますが、考えられるすべてを挙げてお客様に余計な不安感を抱かせても仕方がありません。証拠に基づいた原因を指摘し、余計な憶測はさせず、必ず解決できるというスタンスで臨む。そうしたことを部下や同僚に身をもって示すようにしています。お客様に喜んでいただかないと次の仕事はありません。苦しかった、辛かったなんて姿は見せませんよ(笑)。
「私たちが来たから、もう安心ですよ」、と言えるのは信頼されているからです。それがシステム・トラブル解決率100%に結びついています。

山﨑政憲氏

――近年、IoTであらゆるものがシステムに接続されています。トラブル解決は難しくなっていませんか。

山﨑 システム・トラブルには難しいものもありますが、人間が作ったものであるかぎり、絶対になんとかなると考えるようにしています。確かに端末、デバイス、家電などさまざまなものがシステムに接続されています。いったいどこでトラブルが起きているのか、担当者も自身の環境にどんな端末があるのか把握するのが難しくなってきています。しかし、どうでしょう?一見複雑になっているようでも、トラブルの原因は既知の範囲を超えていません。問題は、それがどこにあるかです。

全員が前向きになる、それがトラブルシュートの秘訣

――お客様からは、どういったタイミングでトラブルシュートの依頼を受けるのですか?

山﨑 トラブルが多発するのは、プロジェクトの最終工程のテスト局面です。個々のチームで開発してきたプログラムを、イザつなげたところ、うまく動かない。また、本番稼働してからというケースもあります。テスト時の少ないデータでは問題なく稼働したのに、本番の大量データで運用したらパフォーマンスが出ない、遅い、わずか1週間で停止したなどです。

しかし、そうなってすぐに私どもにお声がかかるわけではありません。まずはプロジェクト・メンバーでなんとか解決しようとされ、それでも解決できなかった場合に依頼が来ます。だいたいトラブル発生から、2~3カ月後が多いですね。お客様も自ら開発したプログラムが原因ではないかと思って依頼されるとは思うのですが、そうはおっしゃらず「何が原因か分からないので調査してほしい」と相談されます。私たちも開発プログラムが原因という前提をおかずに、基本的なことから全てを1つずつ確認していきます。

開発したプログラムの不具合、オペレーション・システム(OS)やミドルウェア、ネットワークやサーバーなどの物理的なハードウェアの障害もあります。そこの切り分けはきちんとお手伝いします。ただ、OSやミドルウェア、ハードウェアが原因だった場合、すぐに修正プログラムや部品がメーカーから提供されるとは限りません。そうした場合の回避策や代替策も提案します。今困っているお客様を助けたい、私たちの想いはそこにあります。

――トラブルの原因が分かってすぐに解決できるものもあれば、別の要因で時間がかかることもありますよね。設計自体に問題があったとか。

山﨑 そうなんですよ。どう考えても上流工程の設計にミスがあり、作り直さなければならないケースもあります。しかし、実際にそれが直ちにできるお客様は多くはありません。
そういった場合は、追加のコストがかかるが根本的に解決できるパターンと、目の前のトラブルをなんとか回避させるパターンの双方をご提案します。お客様が後者を選んだとしても、ゆくゆくは根本的な解決をしましょう、と根気強く説得は続けます。
また、トラブルが発生すると原因究明がとにかく犯人探しになりがちですが、そうではなく、状況を冷静に把握して1つずつ紐解くこと、そしてそれをチーム全員で共有することを心がけています。

こんなこともありました。あるECサイトでセールのたびにシステムのパフォーマンスが悪くなる。原因を調査してみると明らかにメモリー不足。100万円でメモリーを追加すれば即解決だったのですが、ハードウェアの追加は社内稟議を通さねばならず時間がかかる。そのため「今ある要員でなんとかしてほしい」と。その結果、それに何人/月もエンジニアのワークロードを使ってしまい、あっという間に数百万円のコストがかかってしまいました。結局、1年かかってようやくメモリーを購入すると、トラブルが即解決。「それまでにかかった人/月コストはいったいなんだったの?」ということになりますよね。 

これは決してお客様のせいだけではなく、私どもの問題でもあります。お客様の担当者が上手に上層部に説明できる資料作りのサポートや、「長期的展望で見れば、あきらかにこうするべきです」と私自身がもっともっと強力に説得できるようにならないといけないと思いました。

山﨑政憲氏

部下の能力を引き出す、それがマネージャー

――発達障害がある社員の方と積極的に向き合って、一緒に仕事をされてきたと伺いました。

山﨑 これまでの経験で、発達障害がある社員が現場に配属されると全く仕事ができない、本人もどう解決していいか分からないので困惑してしまう、という状況を何度か見てきました。ここで重要なのが、マネージャーが「この人はダメだ」と突き放すことではなくて、「まだ得意分野が見つかってないだけだ」と前向きに考えることです。その社員にとってベストなパフォーマンスが出せるところに配置すると、必ず成果が出ます。それが見つかると一緒に喜べる。
プログラミングはできなかったけれど、統計や分析では成果を出し、大学の講座に通って勉強したいと言ってくれ、さらにスキルを上げた発達障害のある社員もいます。

エンジニアにプログラミングだけでなく、お客様との交渉力やプロジェクト・マネージメントも身につけさせて総合力を発揮してもらおう、そういうパターンももちろんあります。でも、交渉とかマネージメントは苦手だけど、プログラミングでは他を圧倒するパフォーマンスを出すのであれば、それでいいじゃないですか。得意なことはしっかり伸ばしてあげましょうよ。さらに、それを支えるマネージャーとしては、作業の指示だけは気をつけてあげる必要があります。大抵の場合は、勘違いで物事が進んでしまったために結果がついてこないケースが多いので、ちょっとやったら進捗状況を聞いてあげる。何か問題がないか、正しく理解できているか確認しながらやっていくだけで、メキメキと力を発揮してくれるようになります。管理職は、そうした部下の力を引き出すことも重要な役割だと思います。

――御社では採用についてどんな人材戦略を取られていますか。

山﨑 1度だけの面接でその人のすべてを見極めることができるわけがありません。だからどんな人でもウェルカムです(笑)。
採用してからその人の力を引き出せるのが楽しいです。こんな能力があったのかと、驚きの方が多いですね。
日々の仕事が楽しく、それで給料をもらえて誇りが持てる、そんな会社にしていきたいです。

山﨑政憲氏

トラブルシュートで社会のインフラを支える!

――今後の御社の展望を教えてください。

山﨑 現在、社員は約40名ですが、この内の12名がミャンマー人です。そして、今後毎月のようにミャンマーから入社してきます。彼らは大学での授業が英語なので、英語もできます。これを突破口にして海外でもビジネスを展開していきたいと思っています。また、社員を200人、300人と増やしていきたいですね。私が社長業に専念するためにも(笑)。

もう1つ、トラブルの解析にAIを導入することも考えたいですね。今後、数多くのトラブルの解決策が記録され蓄積されていきます。その膨大なデータを解析して切り分けや原因の予測をAIでできれば、トラブルの早期解決につながり、人材不足にも対応できます。また、こうしたデータを活用して、設計など上流工程でトラブルを未然に防止するためのコンサルティングができるのではと考えています。
加えて、親会社が「ヒンシツ大学」という研修の枠組みを持っていたので、そちらに「トラブルシューティング講座」を組み込みました。基本をしっかりと身につけて、現場での経験に生かします。

ヒンシツ大学資料

――ところで、今でも仕事以外で趣味のプログラミングをされているのですか?

山﨑 つい最近まで休日はプログラミングざんまいでしたが、昨年子どもを授かりまして、今は子育てに励んでいます。プログラミング以外にこんなにもステキな幸せがあるのかと気付かされました(笑)。

TEXT: 栗原 進

山﨑 政憲(やまさき・まさのり)

Airitech株式会社 代表取締役。1975年、高知県生まれ。2000年に高知大学大学院(化学専攻)を修了後、アクロクエストテクノロジー株式会社に入社。エンジニアとして活躍。同社内でトラブルシュート事業を立ち上げ、約600件のシステムのトラブルを解決。国内におけるトラブルシュートの第一人者となる。その後、トラブルシュートを専門に行うため、2017年5月、Airitech株式会社を設立し、代表取締役に就任。社名には「エアリー(風通しがいい)+テック(技術)」という意味が込められている。