古材の「ストーリー」を価値に。リビルディングセンターに学ぶサステナビリティ

株式会社ReBuilding Center JAPANは、住居や店舗の解体現場に出向き、自らが剥いだ古材や古家具を販売している。代表の東野唯史氏は、妻の華南子さんと共に、空間デザインユニットmedicala(メヂカラ)として古材を利用した店舗デザインを手掛けていた2015年、新婚旅行で訪れたポートランドのReBuilding Centerに感銘を受け、すぐさま企画書を送って交渉。名称やロゴの使用許可を得て、2016年秋、長野県諏訪市にReBuilding Center JAPANを設立した。解体に伴う廃棄物の削減や資源の有効活用とともに、古材に残る家主の思いを汲み取ったデザインを提案している。今回、活動を通じて描く、持続可能な社会のあり方などを伺った。

デザイン性だけではない、古材が持つ「価値」

――ReBuilding Center JAPAN(以下、リビセン)の活動を始めて3年になります。リビセンでは、古材や古道具を引き取りに行くことを「レスキュー」と呼び、活動の軸としていますが、その言葉にはどのような思いが込められているのでしょうか。

東野 「レスキュー」という言葉は、妻が、リビセンを始める1年ほど前から自然と使いはじめたものですが、レスキュー自体はもっと前からしていました。レスキューで救済できるものが「材料としての古材」だけじゃないという、「古材の本当の価値」に気づいたのも、山口県の萩市に「ruco」というゲストハウスをつくっていた2013年頃です。ヘリボーン模様(長方形を斜めに組み合わせた柄)になっている「ruco」の2階の床は、萩市にあった酒屋の木のパレット(荷物を運ぶために使う荷役台)で作られています。施工メンバーの友人である酒屋さんが店を閉じることになり、その時に処分することになった大量のパレットを引き取って再利用しました。

荻ゲストハウスruco

荻ゲストハウスruco

関係性のあった酒屋さんの思いや歴史が詰まったパレットだからこそ「ruco」で使う意味がある。そうなると、他のパレットでは代わりがきかなくなるんですね。それは、古材が持っている価値が、見た目の表情や木の種類という、デザイン性とは全く違うところに置かれる瞬間だと思います。僕は、それまでは古材を、デザイン性がある、ただのかっこいい木材としか見ていませんでした。エイジング加工をされた木材がこれだけ出回るということは、日本のデザイナーの多くも同じように考えていると思います。歴史だったり所有者の思いだったり、ストーリーを内包している木材というものが古材の本当の価値なんじゃないかと気づいて、古材の使い方も変わりました。

「いい空間」を作るために、元家主の思いに寄り添うリノベーションを取り入れるようになったんです。リビセンの近くにある「マスヤゲストハウス」は、明治に建てられた旅館をリノベートして運営されていますが、リノベートの際、元家主の方から、この木はモミジ、ここはトチノキなど、使われている木材の説明とともに旅館への思いなんかも伺うことができました。業態が変わるので、かなり工事をする必要があったのですが、建物から出た廃材をなるべくその建物に戻すことをデザインの中で優先しました。他の古民家から持ってきた古材では代わりがきかないと考えるようになっていたからです。

東野氏

――今仰った、「いい空間」というのは、どのようなものなのでしょうか。

東野 最初の頃は、作り出す空間の隅々まで所有者の意識が反映されている空間が「いい空間」だと考えていたんですが、もっとシンプルに「愛されているかどうか」という結論に至りました。つまり、いい空間は、その空間の所有者にちゃんと愛されているということです。店舗なら店を運営する人、住居なら住んでいる人ですね。愛されていない空間に比べ、愛されている空間は、まとっている空気が気持ちいいなって思えるし、その人の意思みたいなものが伝わってくるんです。

ポートランドのリビセンを訪れた時に、最高に「いい空間」だと感じたんです。5,000㎡の広さに40人の従業員が働き、ボランティアも年間3,000人くらいやってくる。古材や古道具を扱うから、もちろん散らかっています。でも、そのお店を構成する看板一つにも試行錯誤の過程が見えて、「こういう事を伝えたくて、こういう解決策を出したんだな」ってことが読み取れる空間だったんです。「いい空間」ってやっぱり、そういう愛みたいなものが伝わってくるのです。僕は、「いい空間」のお店や施設を作ることは、いい街やいいコミュニティにつながる第一歩になり得ると思っています。

――しかし、解体現場に出向き自分たちで古材や古道具を運び、ストーリーを内包したまま扱うのは大変ではないでしょうか。

東野 結構大変です(笑)。リビセンで扱っている物には「レスキューナンバー」という管理ナンバーを貼っています。古材をストーリーとともに管理するために、現場からレスキューしてリビセンに運んだら番号をラベラーで貼ってしまう。その後、プライスを決めるという仕組みを作って管理しています。

古材につけられたレスキューナンバー

リビセンの古材には「レスキューナンバー」がつけられている

リビセンは、扱っている古材を自分たちで剥がしてレスキューしています。お客さんから、これはどこで使われていた木材ですかとか、この家具はどういうお宅にあったんですかとか聞かれたとき、僕らは家主の話を聞きながらレスキューしているので、その木材が家のどこでどう使われたか、どういうお宅で大事にされていた家具だったのかなどをお伝えすることができます。そこが普通の古材屋さんと違うころであり、リビセンの価値ではないでしょうか。

活動を継続し、思いを根付かせるための「サポーターズ」

――効率性と反するレスキューという行為を企業として成り立たせるために、リビセンはどのような体制で活動しているのでしょうか。

東野 設立当初は「古材部、カフェ部、デザイン部」というわかりやすい名前でしたが、現在は、「Builders Center」「Culture Center」「Design Center」という3つのチーム編成で活動しています。「Builders Center」は古材や古道具をレスキューして販売したり資材として提供したりするなど、リビセンのベースになる活動を行い、「Culture Center」は、リビセンに併設されたカフェや、ワークショップなどを通じてリビセンの考え方を広める活動を行っています。「Design Center」は、レスキューしてきた古材の新たな可能性を探り、依頼いただいた空間のデザインなどに再利用しています。その他に、「サポーターズ制度」という一般の希望者が活動に参加できる制度を設けています。

リビセン店舗内

リビセンでは古材だけでなく、家具や食器などの古道具も販売している

――「サポーターズ制度」は、リビセンの仕事に参加して作業ができるボランティア制度という位置づけと伺いました。

東野 そうですね。ポートランドのリビセンには、年間3,000人くらいのボランティアが参加しています。だからあれだけの物量を低価格で販売でき、援助を受けずにNPOとして自立できている。その背景には、アメリカにおけるボランティア意識――休日に時間があるからちょっとボランティアに行こう、古材の釘を抜いたり、古材の加工を手伝ったりしたら、自分も技術を身につけられる――みたいな、ワークショップ的な考え方で気軽に活動する文化があると思います。

一方、日本では、ボランティアを災害時など特別な時の活動と捉えている方が多いように感じます。ボランティアという言葉が持っているイメージが、僕らが求めているカジュアルに関わってほしいという考えとミスマッチだと思い、リビセンでは「サポーターズ」という名称にしました。

東野氏

一般的に、そこで働きたい人は、社員やバイトなどで採用される必要があります。とはいえ、採用面接に通らないと手伝えないのは参加のハードルが非常に高いですよね。僕らはこのレスキューという考えをもっと広げたいし、もっといろんな人に関わってほしいと思っているので、やりたいという人は拒みたくない。そういう人の受け皿、僕たちの活動を広めるための仕組みとして、「サポーターズ」があり、スタッフとお客さんの中間と位置づけています。古材に関するスキルを身に付けたい人はもちろん、モラトリアムな若者、転職を考えている人、学生も来ますよ。嬉しいことに、年間200〜300人の方々にお手伝いいただいています。

また、サポーターズに参加してくれる方がいないと、新たにスタッフを雇わなければいけなくなり売価が上がる可能性があります。すると販売の回転率が悪くなり、レスキューできる物量が減るし、僕らが目指す未来から離れてしまう。サポーターズの存在はリビセンの活動を継続していくためには不可欠な存在だと捉えています。

サステナブルな社会のために、自分なりの正義を

――リビセンの考え方は、話題に上がることの多い「持続可能な社会」に貢献することにもつながります。

東野 世間を見渡すと、社会問題に対する意識は高まってきていると感じます。身近なところでは、プラスチックやストロー問題が世界的なムーブメントとなっていますよね。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)――言葉自体は1年前に知りましたが――内容はリビセンの活動と通じるところが多いと思いました。明文化され、女性誌で特集を組まれるなど、マスコミでも大きく取り上げることで、SDGsへの取り組みが社会に浸透してきているのではないでしょうか。

――とはいえ、やはり「家」となると、ハードルはまだ高いと感じます。

東野 一般的に日本の住宅は、建てた時の価値が一番高い。そこから減価償却され、家の価値がどんどん下がるので、古い家は価値がなくなっていきます。住宅を取り巻く税制度や価値観、さらに人口減少や間伐材問題など、日本独特の事情を鑑みて社会問題に対応していかなくてはならないと思います。

リビセン店舗内

たとえば新築物件を建てる時に、断熱性能が高い環境負荷の少ない家を建てようとしている人たちがいたら、それはそれで正義だと思います。一方で断熱性能は高くないかもしれないけど、化学系の物質を使わないで無添加住宅を作っている人たちもいて、それも正義です。みんなそれぞれの視点で環境問題に取り組んでいるので、一概にどの活動がベストと言うのは難しいです。僕らなりの正義としては、日本にこれだけ住宅のストック(空き家)があるのに活用できておらず、新しく家を建てるのは勿体ないというのがあります。解体されるストックの場合、家一軒で10トン以上の産業廃棄物になるんですが、それを再利用しようよっていうのが、僕ら古材屋としての仕事だと考えています。

実際問題として、全員が、「アメリカのかっこいい古材より、日本の古材は環境負荷が少ないからこちらを買おう」となるのは難しいでしょう。ただ、日本の古材のかっこいい使い方を提案できれば、使ってみようと思う人がでてくるかもしれない。そんなイメージ戦略が必要かもしれません。

――諏訪まで来てサポーターズに参加することはできないけれど、自分サイズでできる活動をしたい、興味があるという人は、どのようなことを実践すればよいでしょうか。

東野 そうですね、物を買うときに、その製品の環境負荷を考えたらいいと思います。洗剤を買う時に、ボトルを買うか詰め替え用を買うか。もっと突き詰めると、液体と粉末どちらを選ぶのか。液体の製品は粉末を水に溶かしている物として、水や運送に無駄な負荷がかかっていると言う人もいるでしょう。添加物の有無、国産、外国産、デザインなど選択のポイントは多岐にわたりますが、自分の価値観や経済状況を鑑みて、製品のどの部分にフィットさせるか、一つの買い物でも考えることが沢山あると思うんです。

たとえば、これはMiiRというブランドのボトルです。断熱性など性能面はもちろん、ボトルを買うと東南アジアやアフリカにおける浄水システムの建設支援など、55種類以上の水問題に寄付される仕組みになっています。ボトルにギブコードがついていて、水に関する「どのような問題」にいくら寄付されたかHPで追跡することができます。

リビセンオリジナルボトル

MiiRとコラボレーションした、リビセンオリジナルボトル

反面、これはステンレスでできているため、環境負荷が高いと言う人もいます。僕は、経済状況や買いやすい物の中で、これを選択しました。自分のできる範囲でカジュアルに取り組むことが大切で、突き詰めすぎたら何も買えなくなってしまう。だから、ステンレスに問題があることは覚えておき、いつの時代か環境負荷や劣化が少なく自分がいいと思える金属のボトルが発売されたなら、そちらに変えたっていいと思っています。

「価値」がつながり、未来を作る

――リビセンは「ReBuild New Culture」という経営理念を掲げていますが、その理念のもと今後はどんな展開をしていきたいとお考えでしょうか。

東野 古材を使った空間を持つお店のデザインにこだわるのは、お店の運営者が古材に詳しくなり、古材の本当の価値を知ってほしい、そういう空間に身を置くことで、古材に関心を持つ人が少しでも増えてほしいと思うからです。さらに、お店のお客さんとのコミュニケーションを通じて古材の知識や考え方が広まっていけばいいですよね。

東野夫妻

リビセンの古材でないと、その空間は実現できないということでは決してありません。僕らの活動や考え方が全国に波及すればいい。リビセンにかっこいい古材や古道具があったけれど、あれっておじいちゃん家の納屋にもあったよね、だからあれを使ってみようと考える人が増えればいいんです。

解体に伴い大量に発生する古材や古道具を廃棄物にしないで、可能な限り再利用する。形や用途は変わったとしても、家主の思いやストーリーとともに、これまでの価値から新しい価値、その先の価値へとつながっていく。そんな「Culture」を作れたらいいと思います。

TEXT:小林純子

東野唯史(あずの・ただふみ)

株式会社ReBuilding Center JAPAN 代表取締役。1984年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒。2014年より空間デザインユニットmedicalaとして、妻の華南子と活動開始。全国で数ヶ月ごとに仮暮らしをしながら「いい空間をつくる」を合言葉に店舗のデザイン・施工・運営アドバイスを行う。2015年夏、新婚旅行でいったポートランドでReBuilding Centerに出会い、2016年秋、建築建材のリサイクルショップReBuilding Center JAPANを長野県諏訪市に設立。