芸術鑑賞のハードルを下げる――美術館に行きたくなるAIアプリって?

美術館を訪れて絵画を鑑賞し、コンサート会場でクラシックの演奏に耳を傾ける――芸術を愛する人にとっては至福のひとときです。しかし一方で、そうした芸術に関するイベントに参加することをためらう層も一定数存在するようです。

2018年にポーランドで行われたある調査では、79%の回答者が過去一年の間に一度も劇場へ足を運んでいないことが明らかになりました。また、同じく一年間アートギャラリーを訪れていない人は75%、コンサートに行っていない人は65%にものぼります。

「背景」を知るほどに作品理解が進む?

人々が芸術に対して壁を感じてしまう理由の一つに、「知識不足を恥じらう気持ち」があると考えられています。「私には芸術作品を理解するために必要な知識が欠けている」と感じ、その引け目から、自分が芸術とは縁遠い存在だと考えてしまうのです。

とすれば、欠けている知識を何らかの形で補うことで、人々と芸術の間に立ちはだかる壁を取り去ることができるのではないでしょうか。

アンディ・ウォーホルが描くキャンベル・スープの缶の何がそんなに面白いのか、モナ・リザのミステリアスな微笑みは誰に向けられたものなのか、ベートーベンの交響曲五番が世界中で親しまれるフレーズとなったのはなぜなのか――実際、作者の人となりや作品が作られた時代などの背景理解が進むほど、鑑賞体験はより満足のいくものになるといわれています。

そこで、人々と芸術の「橋渡し役」になってくれるAIアプリが登場しました。

モバイルアプリが美術作品の理解を手助け

2020年1月にポーランド・ヴロツワフの美術館で行われた展覧会でお目見えしたこのアプリは、IBM WatsonとIBMのクラウドサービスを活用して作られており、観客の作品理解を手助けします。

展覧会に訪れた観客はアプリがインストールされた端末を配布され、作品についてアプリ上で質問することができます。質問はWatsonの自然言語処理APIで解析され、蓄積されている情報の中から適切な答えが即座に返されます。アプリのプラットフォームには、質問に対して柔軟な答えを返すことができるよう、アーティストの情報や作品が作られた背景、著名な批評といったさまざまな情報があらかじめ登録されています。

大量に蓄積された情報の中から適切な答えを探し出すのは、AIの得意とするところです。今回のアプリで活用されたAI技術は、古典的な芸術のみならず、一見難解なモダン・アートを理解する上でも有用なものとなるに違いありません。

「芸術は頭ではなく『心』で楽しむものである」と考える人もいるでしょう。しかし、作品の背景を頭で理解した先に広がる世界もあります。芸術のさまざまな楽しみ方を、AIをはじめとしたテクノロジーがサポートしてくれる未来がすぐそこに来ているのです。

photo:Getty Images

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