洗剤不要、マグネシウムが汚れも臭いもスッキリ落とす――しかも洗濯排水はおいしい有機野菜を育てる

マグネシウムの特性を生かして洗濯物をきれいにする「洗たくマグちゃん」が売れている。メッシュの袋に入った純度99.95%のマグネシウムの粒が、洗浄・消臭・除菌の効果を発揮し洗剤の役割を果たしてくれる。洗剤を使わなくても汚れをスッキリ落とすだけでなく、汗臭い運動着や部屋干しのいやな臭いを取り、除菌効果を発揮してくれると評判だ。
開発したのは、金属加工の株式会社宮本製作所(本社:茨城県古河市)代表取締役の宮本隆氏。マグネシウムの削りくずを入れたドラム缶の水で、作業員が油まみれの手を洗っている光景にヒントを得た宮本社長が、試行錯誤の末に商品化にこぎ着けた。
マグネシウムを入れた洗濯水は弱アルカリ性になり、洗濯槽や排水ホースの除菌・洗浄効果もある。排水には生命の必須ミネラルであるマグネシウムの他に、窒素・リン酸・カリウムという3大栄養素を含み、植物に与えればそのまま肥料になる。合成洗剤と違って環境に悪影響を与える心配がない。提携農家ではマグちゃんを使用した洗濯排水でおいしい有機米や野菜を生産しており、百貨店でも好評だ。健康な眠りを促す「マグネシウム・ピロー(枕)」の特許も日米などで取得した。
長年の下請けから脱皮し「自分で値段を付けられる仕事をしたい」との一念でつかんだヒット商品「洗たくマグちゃん」。次々と湧き出るアイデアの実現化に挑戦している宮本社長に、開発の歩みや今後の夢を語っていただいた。

宮本 隆(みやもと・たかし) 

株式会社宮本製作所 代表取締役
1949年東京都生まれ。先代亡き後に宮本製作所を承継し、新規事業開発優先の経営戦略にかじを切る。2008年に経済産業省「元気なモノづくり中小企業300社」に選ばれる。2013年洗濯補助用品「洗たくマグちゃん」発売開始。2020年 3月しんきんものづくり大賞「2020優良企業表彰」にて【最優秀しんきんものづくり大賞】受賞。2020年9月、洗たくマグちゃんシリーズ販売累計600万個突破。

マグネシウムの特性を生かして洗濯物をきれいにする「洗たくマグちゃん」が売れている。メッシュの袋に入った純度99.95%のマグネシウムの粒が、洗浄・消臭・除菌の効果を発揮し洗剤の役割を果たしてくれる。洗剤を使わなくても汚れをスッキリ落とすだけでなく、汗臭い運動着や部屋干しのいやな臭いを取り、除菌効果を発揮してくれると評判だ。
開発したのは、金属加工の株式会社宮本製作所(本社:茨城県古河市)代表取締役の宮本隆氏。マグネシウムの削りくずを入れたドラム缶の水で、作業員が油まみれの手を洗っている光景にヒントを得た宮本社長が、試行錯誤の末に商品化にこぎ着けた。
マグネシウムを入れた洗濯水は弱アルカリ性になり、洗濯槽や排水ホースの除菌・洗浄効果もある。排水には生命の必須ミネラルであるマグネシウムの他に、窒素・リン酸・カリウムという3大栄養素を含み、植物に与えればそのまま肥料になる。合成洗剤と違って環境に悪影響を与える心配がない。提携農家ではマグちゃんを使用した洗濯排水でおいしい有機米や野菜を生産しており、百貨店でも好評だ。健康な眠りを促す「マグネシウム・ピロー(枕)」の特許も日米などで取得した。
長年の下請けから脱皮し「自分で値段を付けられる仕事をしたい」との一念でつかんだヒット商品「洗たくマグちゃん」。次々と湧き出るアイデアの実現化に挑戦している宮本社長に、開発の歩みや今後の夢を語っていただいた。

マグネシウムで自動車部品や熱帯魚用の商品を作るが、失敗

――洗たくマグちゃんは2013年の発売以来、この9月で累計売上600万個を突破しています。金属加工が専門の御社が、マグネシウムの洗濯用品に注目された経緯や、商品開発のご苦労をお聞かせください。

宮本 当社は1965年に、私の父が中古旋盤1台を25万円で購入して、金属加工を手掛ける会社を創業しました。その2年後、高校を卒業した私は、会社を手伝うことにしました。生産量も売り上げも、こんなものだろうと納得していましたが、毎年3月になると、必ず元請けからコストダウンの要請が来るのです。
当社は他の会社が作れない部品を選んで製造していたので、コストダウンの打撃は比較的少なかったのですが、いつかはジリ貧になる、自分で値段を付けられる仕事に切り換えないとだめだと考えました。17年前に父が他界したのを機に、儲かる仕事だけ残し、儲からない仕事はすべて受けるのを辞めました。その結果、2億8千万円あった売り上げは1億円に激減してしまいました。

株式会社宮本製作所 代表取締役 宮本隆氏

自動車部品の金属加工現場

自動車部品の金属加工現場

宮本 では、何をしようか。最初に思い付いたのは、35年前から扱っていたマグネシウムを素材にした自動車部品の製造でした。マグネシウムは比重が1.74と炭素繊維並みに軽く、自動車の燃費が向上すると考えたのですが、アルミニウム(比重2.7)よりコスト高になり、採用されませんでした。マグネシウムの振動吸収性を生かした機械部品も作りましたが、これも期待したほど売れませんでした。
次に、大勢の人が使ってくれそうな商品として開発したのが「グッピーストーン」です。熱帯魚の水槽の底に敷く砂利の中にマグネシウムの粒を入れておくと、水槽に藻が付かないことに気付いたのです。熱帯魚の問屋さんから「売らせてほしい」と言われ、1週間後の展示会に出品するために準備万端整えました。ところが展示会の当日に、あの東日本大震災が起きたのです。
地震の被害により多くの熱帯魚店や家庭で水槽が壊れ、当社では3000箱の在庫を抱えてしまいました。最近、水耕栽培の野菜工場の水路にまくと水が腐らないことが分かったので、再度営業してみようと思っています。

ドラム缶の水で手洗いする工員の言葉にひらめく

――洗たくマグちゃんの開発に至る前に、いろいろ悪戦苦闘があったのですね。

宮本 そうなんですよ。そのころマグネシウムの削りくずは、工場の外にあるドラム缶に入れていました。雨水がたまりましたが、水は透明なままで、ボウフラも湧かずきれいでした。
一方、鉄くずを入れたドラム缶の水はサビで赤茶色に濁り、ステンレスくずを入れたドラム缶の水は透明でしたが、両方ともボウフラが湧きました。
「マグネシウムは面白いなあ」と思っていたら、仕事を終えた工員が手洗い所の混雑をさけて、マグネシウムのドラム缶の水で油まみれの手を洗っていました。聞くと「油がよく落ちる」と言うのです。
その理由は分かりませんでしたが、洗剤の代わりに使えるのではないかと、何かがひらめきました。さっそく100円ショップで買ったメッシュ状の袋にマグネシウムの粒を入れて洗濯機を回してみると、衣類の汚れが本当によく落ちるのです。

宮本隆氏

ホルムアルデヒドが出ないメッシュ袋を使う

――思いがけずヒントをつかんだ瞬間だったわけですね。

宮本 でも、それからが大変でした。実験に使ったマグネシウムは純度が94%。残り6%には亜鉛やアルミニウムが混じっており、環境に良くないと判断しました。もっと高純度のものをいろいろ探した結果、100%に近い高純度のマグネシウムを入手できました。試作品を知人たちに使ってもらったら、「すごいよ、これ!」「洗剤を入れなくても、臭いも汚れもちゃんと落ちている」という高い評価が返って来たのです。
ところが、メッシュ袋の製造を頼んだ会社の社長から「100円ショップで売っているメッシュは、洗濯すると発がん性のあるホルムアルデヒドが出てくる」と言われました。メッシュを白くするために脱色剤としてホルムアルデヒドを使っていたのです。
私は「赤ちゃんにも安心して使えるやさしい商品」を目指していたので、これでは使えません。ホルムアルデヒドを使ったメッシュとそうでないメッシュの見分け方を社長に教えてもらい、旭化成フュージョンを使うことにしました。高級ホテルのスイートルームのベッドなどに使われるメッシュです。値段は7倍も高いのですが、これで納得のいく商品づくりのめどが立ちました。
2013年に発売して2~3年は売れませんでしたが、15年に第2弾の「ベビーマグちゃん」を売り出したころから、価値を認めてくれたお母さんたちの口コミで徐々に売れ行きが伸びていきました。今年9月には累積で600万個を超え、更に売れていくと確信しています。

洗たくマグちゃん

洗たくマグちゃん

ベビーマグちゃん

ベビーマグちゃん

――ところで、「洗たくマグちゃん」という商品名は、とても親しみやすくてかわいいですね。宮本さんがネーミングされたのですか。

宮本 笑わないでくださいね。行きつけの料亭の大女将が、私が行くたびに「マグネシウム愛」を語るものだから、私のことを「マグちゃん」と呼ぶようになったのです。私もそのニックネームを気に入っていたので、いざ商品名を決める時にはありがたく拝借したというわけです。

弱アルカリ性の水と水素で汚れを落とし、細菌の繁殖を防ぐ

――マグネシウムの粒は、どのようなメカニズムで衣類の汚れを落としたり、消臭・除菌効果を発揮したりするのでしょうか。合成洗剤との違いも含め、分かりやすく説明していただけますか。

宮本 「洗剤」という名称は、消費者庁の規定で「界面活性剤を使う洗濯用品」のことを言います。界面活性剤とは油と水をなじませる化学物質のことで、合成洗剤はこれを主原料にしています。衣類の汚れはあかや皮脂という油分を含んでいるので、界面活性剤で油分と水を混ぜ合わせて汚れを落とすのです。
これに対し、洗たくマグちゃんはマグネシウムしか使っていないので、洗剤とは呼べませんが、合成洗剤と同等の界面活性効果を発揮します。
マグネシウム(Mg)と水(H₂O)が混ざると、水酸化マグネシウム(Mg(OH)₂)と水素(H₂)ができます。水酸化マグネシウムの水酸基(OH)によって、水はpH(ペーハー)10.5の弱アルカリ性になります。弱アルカリ性の水には元々界面活性効果があるので油分(汚れ)と混ざります。洗剤の界面活性剤を使わなくても、界面活性効果を得ることができるのです。
洗濯では、汚れを衣類からはがす力も必要になります。発生する水素は最小の原子なので、繊維と汚れの間に入り込み、汚れをはがしてくれます。つまり弱アルカリ性と水素の力が洗濯効果を高めてくれるのです。
最初にヒントを得たころは、こうしたメカニズムは理解していませんでしたが、実験を重ねることで1つ1つメカニズムを解明し、特許を取得することができました。

壁の2面にずらりと並ぶ表彰状や特許証など

壁の2面にずらりと並ぶ表彰状や特許証など

――洗濯物の消臭効果や、洗濯槽・ホースなどの除菌効果もあると商品説明書にあります。汗臭い運動着や部屋干しの臭いなどは主婦の悩みですが、こちらはどのような仕組みで効果を発揮するのでしょうか。

宮本 いやな臭いの原因は、細菌の繁殖にありますが、弱アルカリ性の水では、微生物や細菌は繁殖しづらいのです。人間と共生して生きてきた細菌を殺すのではなく、繁殖しづらい環境にして洗濯を終えるので、部屋干ししても乾くまで菌は繁殖しません。毎日マグちゃんで洗濯をしていれば、洗濯槽・ホースなどにも菌は繁殖しにくいのです。
消臭効果については、ある研究所に依頼して分析してもらいました。運動部の部室に漂う例の臭いがしみ込んだ衣類を洗濯したところ、非常に高い、臭いの除去率があることが分かりました。

ベビーマグちゃん生産中

ベビーマグちゃん生産中

洗たくマグちゃんの排水があれば、化学肥料はいらない

――洗濯排水の農業への再利用に挑戦されています。排水は野菜やコメの栽培や品質にどのような効果が期待できるのでしょうか。

宮本 マグちゃんの洗濯排水には必須ミネラルであるマグネシウム、あかや皮脂から出る窒素・リン酸・カリウムが含まれています。当社はマグちゃんの洗濯排水でグッピーを飼っていますが、栄養たっぷりなので10匹が24匹に増え、みな大きく元気に育っています。
この排水を農業に使えば化学肥料はいりません。また、マグちゃんを洗濯で300回使った後に、使用後の粒を畑や水田にまけば一層効果的です。その野菜や米を食べれば、マグネシウムを摂取できます。
江戸時代の農家は人のふん尿を肥料として買い、米や野菜を作って江戸に還流させるというサステナブル(持続可能)な農業を実現していました。マグちゃんの再利用はその再現と言えます。
再利用の効果を有機農業の現場で確かめるため、農家に洗濯マグちゃんで洗った排水で野菜を育てていただいていますが、おいしい有機野菜として消費者の方々の評判は上々です。
また昨年、山形県酒田市の3000坪ある無農薬の水田にマグネシウムの粒をまき、今春には田植えもしました。葉緑素(クロロフィル)の化学式の中心にはマグネシウムがあり、植物を青々と育てる上で欠かせない成分です。水田でイオン化されたマグネシウムはイネに吸収され、稲を丈夫にして有機米を実らせます。

マグちゃんを持つ宮本隆氏

コインランドリーの排水を集めて中近東に輸出する

――洗濯排水を輸出する事業のアイデアがあるそうですが、どのような内容なのか、お聞かせください。

宮本 今、全国31カ所のコインランドリーと提携してマグちゃんだけで洗濯してもらっています。その排水を水道料金の半値で買い集め、横浜港のタンクに貯めて中近東に輸出する計画を進めています。
中近東から原油を積んできたタンカーは、横浜港で空荷になります。帰りは船の安定を保つため、船底の油槽とは別の槽に海水をバラスト(重し)として積みます。この海水の代わりに洗たく排水を積むのです。運送費を払うので、タンカー会社は大喜びです。
ドバイ市場では、海水を脱塩した真水が石油の3倍の価格で取引されています。この真水には栄養分がないので、農業に使うと植物は枯れます。農業に適した水は今、世界で80%不足していると言われており、私たちが持って行く水は現地では石油の何倍もの価格で売れると思っています。もちろん国際的な環境基準を満たしてからの話になりますが。
日本人は、そのままでも飲める貴重な水を合成洗剤で汚して捨てており、これでいいのかと疑問に思います。全国のコインランドリーがマグちゃんで洗濯してくれると、その排水を世界各国に売って外貨を稼ぐことができます。
世界の投資マネーは戦後、石油資源に投資され、15年前からは穀物やエタノールに、そして今は水に集まっています。投資ファンドの間では、「水を牛耳るものは世界を牛耳る」「水は高い所から低い所に流れるのではない。カネのあるところに流れる」と言われています。日本も外貨を稼ぐ水ビジネスを真剣に考えなくてはいけません。

――東京慈恵医科大学の横田邦信教授は、宮本社長との対談で、マグネシウムが持つ医療・健康面での効能を紹介されています。これからどのようなビジネス展開を考えておられるのでしょうか。

宮本 開発している1つに「マグネシウム・ピロー(枕)」があります。マグネシウムの振動吸収性や電磁波遮へい性を生かした商品で、ソバガラの代わりにマグネシウムの小粒を枕に入れています。
人は頭寒足熱のとき眠りに入りやすいと言われますが、マグネシウムには熱しやすく冷めやすい性質があり、その環境を作り出してくれます。シカゴ大学のラットを使った実験で、眠りが深くなれば血流が良くなって脳内の老廃物を排出するので、認知症の予防に役立つことが知られています。安眠を促すマグネシウム・ピローは2年前に発売し、日本、米国、中国、イタリア、香港で特許を取りました。
また横田教授は、「現代人の糖尿病について、原因の1つはマグネシウム不足にある」と述べておられます。この点でもマグネシウムは重要です。

宮本隆氏

大きな利益を出して税金を納め、社会貢献できる会社にしたい

――宮本社長は、「いつかは下請けから脱皮して、自分で値段を決められるメーカーになりたいと考えていた」と述べておられます。企業経営者として、この言葉に込めた思いや、現段階での評価をお聞かせください。

宮本 多くの下請け企業が姿を消す中で、当社は長年の目標に少し近づけたと思います。今の目標は、もっと外貨を稼げる企業になり、2030年には時価総額1兆円を達成したいと思っています。日本の社会保障制度を維持するためにも、できる限り大きな利益を出して、たくさん税金を納め、社会貢献ができる会社にしたいのです。企業は社会の一員であり、その存在価値は自社の利益追求だけでなく、人々を幸せにすることに意味があると思っているからです。
ただ、困ったことに、このところマグちゃんを真似した商品が出回っています。当社は、時間をかけて洗濯や農業に使うと効果があるというエビデンスを専門家と1つ1つ確かめ、かつマグネシウムの純度やメッシュなどの素材の安全性にも徹底的にこだわって、特許を取り品質を保っています。
ところが模倣品は私どものエビデンスを許可なく流用し、品質を無視した商品を無責任に流通させております。
ともあれ、「洗たくマグちゃんで洗濯する文化」を創り上げ、世界の環境や健康に貢献したいと思っています。

TEXT:木代泰之、PHOTO:倉橋 正

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