各国大使館などの協力も得て
徐々に広がるペーパーミラクルズの活動

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こうしてスタートしたペーパーミラクルズの活動は徐々に広がり、イスラマバード郊外のシェルターで暮らす女性たちだけでなく、パンジャブ州やシンド州へと活動範囲を広げ、ビーズの作り手は今では180人ほどにまで増えた。報酬は歩合制。どれだけビーズを作るかは働く人次第で、ビーズ作りだけで家族の生活を支えている人もいれば、短時間だけ作業をし、副収入として役立てている人もいる。農作業などの過酷な肉体労働による収入は微々たるもので、政府が定める最低賃金よりも高く設定されたビーズ作りによって得る収入は、格好の内職になるという。 

当初は高垣さんが担当していたデザインも、デザイン班が生まれ、より組織的に商品が製作されるようになった。最初は事務所内で細々と行っていた販売も、各国の大使館が開催するイベントに次々と参加し、現在はイスラマバード市内5カ所で販売されている。日本では、横浜市内にある国連ウイメン日本協会のショップで購入が可能だ。

高垣 「毎年、ファンドレイジングの活動の一環としてチャリティー•ファッションショーを開催しています。今年も多くの各国大使、大使夫人にご協力いただき、華やかなファッションショーとなりました。在パキスタン日本国大使の猪俣大使には、セレブモデルとしてご登場いただいただけでなく、和太鼓の演奏も披露してくださいました。その迫力ある演奏は会場を魅了し、ほんとうに感動的でした。また、猪俣大使夫人には日本市場向けに新しいデザインをご考案いただくなど、多くの方々に支えられていることを幸せに思います」

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各国大使夫妻も出演して盛り上がった2015年5月2日開催のペーパーミラクルズのファッションショー。高垣さんと腕を組んでいるのは、ペーパーミラクルズ親善大使を引き受けてくださったアルゼンチン大使のルドルフォ•マーチン•サルビア氏。下記はファッションショーの動画:
http://www.papermiracles.jp/fashion-show-highlights2015.html

今後の課題は企業との連携と販路拡大

今後の事業の発展に目を向けると、やはり販路の拡大がポイントになりそうだ。ペーパーミラクルズは女性の自立支援が究極の目標。ビーズ作りの職人が増えれば増えるほど、自立に近づける女性は増える。

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高垣 「現在はパキスタンで月々の経費をカバーするだけの利益は出ています。ただし、これをさらに拡大するとなると、相当の量を売らなければなりません。そこで現在考えているのは企業との連携です」

例えばある企業が販促キャンペーンのイベントを開くとき、さまざまなグッズを客にプレゼントする。これをペーパーミラクルズが請け負うのだ。その企業がキャンペーンを張っている商品のシンボルカラーが赤であれば、それと同じ赤い色のペーパーを使うと赤いきれいなビーズが出来上る。このビーズを使ってキーホルダーやカフス、バッジホルダーストラップ、名刺入れや鉛筆立てなど、さまざまなグッズを作るというわけだ。

日本のある大手商社は、日本語の新聞紙のペーパービーズを使ったペーパーミラクルズの商品を使って、携帯ストラップを作った。高垣さんはこうした企業との連携を、今後の事業を支える1つの柱にしようと考えている。

もちろん同時に販路の拡大も進めていて、既に海外進出の足掛かりもできた。日本では昨年、東京ビッグサイトの展示会に参加し、東京・京橋のギャラリーで個展を開いている。昨年はイギリスの展示会で出店し、ヨーロッパでもドイツで開かれた「アンビエント」という世界有数の国際展示会に参加し、高い評価を受けた。ドイツ、フランス、イタリアからオファーをもらい、大きな励みになっている。今年に入り、ソーシャルプロダクツ普及推進協会主催のソーシャルプロダクツアワード2015で「特別賞(アイディア部門)も受賞した。ペーパーミラクルズのブランド認知度は少しずつではあるが、世界中で着実に上がっていると言えるだろう。

世界に広がれ、ペーパーミラクルズの輪

高垣さんのやる気もますます高まっている。

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高垣 「何が楽しいかというと、次に狙う市場のターゲットをどこに定めるかという議論をスタッフと真剣にできるだけの基盤が整ったことです」

現場にはビーズ作りをする女性たちに加え、ペーパーミラクルズを支えるさまざまなスタッフがいる。作り手の女性たちや信頼できるスタッフたちと夢を語ることは、何にも代えがたい喜びだ。ペーパーミラクルズは、イスラム教国のパキスタンでは珍しく、代表が女性、スタッフも7割以上が女性というチームで構成されている。さぞかし、活気溢れる議論が展開されていることであろう。

高垣 「かつて働いていたシリコンバレーは活気に溢れていました。みんな、自分たちの手で明日の世界を変えられると信じていた。今、私たちの工房にもそういう雰囲気があるんです。逆に言うと、そういう雰囲気を作り出さないと、私の意図する『ペーパーミラクルズ革命』の実現はありえません。スタッフ1人ひとりが『ただの不要紙だったものを活かして、世界を変える!』と心の底から本気で信じ、熱意を持って本気で挑戦しないと人の心を動かすことはできないし、アイデアも生まれてきません。

活動を始めたきっかけは、大地震で下半身に傷害を負ったシェルターの女性たちの自立支援でした。今後、ペーパーミラクルズのロゴともなっている「希望の樹」がさらにしっかりと根を張り、大きな木へと成長することを願い、1人でも多くの女性の自立支援に寄与できるよう活動の場を広げ、その輪を世界へ広げて行きたいと思います」

サフィアさんたちビーズの作り手の女性たちとスタッフたち、それをサポートしてくれる多くの人々の熱意が、「希望を紡ぐビーズ」となり、国境を越えてやがて大きな輪となったとき、本当に世界は変わるのではないだろうか。

TEXT: 渋谷 淳

高垣絵里

たかがき えり
高垣絵里 ペーパーミラクルズ 代表

東京都出身。慶應義塾大学、法学部政治学科卒。大学卒業後、米国シスコシステムズ社に就職。米国サンノゼ本社とシンガポールに駐在。発展途上国の発展に必要不可欠なネットワーク技術者教育環境構築、IT技術者育成の推進、情報技術格差(デジタル・デバイド)の是正推進を担当。国連開発計画や米国国際開発庁と連携し、官民協力の形態で開発援助に関わり、担当していた約70カ国のほとんどを訪れる。その後、開発援助の仕事に携わるため、バングラデシュに渡り、開発援助分野のコンサルタント会社を起業。2010年に米国開発機構のプロジェクトの教育の専門家としてパキスタンに赴き、開発援助分野の2社目のコンサルタント会社を起業し、現在約75名の社員がいる会社の代表を務める。その傍ら、2012年よりペーパーミラクルズの活動を始動。経済的・社会的に弱い立場に置かれている女性たちの社会への復帰を支援するエシカルビジネスを立ち上げた。2013年には社会貢献を主目的とする法人組織ミラクルズ•トラストを設立。現在180名以上の女性がペーパービーズ作りに携わっている。
・ソーシャルプロダクツアワード2015にて「特別賞(アイディア部門)」受賞(2015)
・国際女性デーに、パキスタン•コカカーラ社より「ウーマン•オブ•サブスタンス賞」を受賞(2015)
・国際展示会WEXNETで「最優秀出展者賞」と「イノベーション賞」を受賞(2014)
・国連事務総長夫人訪問時に「パキスタンを代表する女性起業家」に選出(2013)
・ロータリークラブ•イスラマバード•ルネッサンス会長(2014)、幹事(2013)を務める
■ペーパーミラクルズ:http://www.papermiracles.jp/index.html


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