マーケティングの専門用語で、「バリュー・プロポジション」というビジネスパーソンの常識になっている言葉がある。この言葉がよく使われるようになったきっかけは、2011年に発行された『100円のコーラを1000円で売る方法』という意表を突く題名の本だった。シリーズ3冊で計60万部を超えるベストセラーになった。
著者はマーケティング戦略アドバイザーとして活躍するウォンツアンドバリュー株式会社代表の永井孝尚氏だ。顧客の要望を何でも聞き入れる「顧客絶対主義」を戒める一方、自社の強みを生かして顧客に期待以上の満足を与える「顧客中心主義」を提唱する。これで価格競争に陥るのを避け、戦わずして勝つ。それがバリュー・プロポジションの極意だという。
「高品質なのに低収益」の体質から抜け出せない日本企業。組織に自分を高く売ることができないビジネスパーソンたち――。企業も人も自分の強みを発揮するにはどうすればよいのか。著者で元日本IBM株式会社のマーケティング・マネジャーだった永井氏に、事例を参考にバリュー・プロポジションの活用法を聞いた。

永井孝尚(ながい・たかひさ)
ウォンツアンドバリュー株式会社代表、マーケティング戦略アドバイザー

1962年、神奈川県生まれ。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBM㈱に入社。マーケティング・マネジャー、人材育成責任者として戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBM㈱を退社し、ウォンツアンドバリュー㈱を設立。執筆の傍ら、多くの企業や団体を対象に講演やワークショップ研修を実施。
著書に『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(KADOKAWA)、『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、『「あなた」という商品を高く売る方法』(NHK出版新書)など多数。
永井孝尚オフィシャルサイト http://takahisanagai.com

マーケティングの専門用語で、「バリュー・プロポジション」というビジネスパーソンの常識になっている言葉がある。この言葉がよく使われるようになったきっかけは、2011年に発行された『100円のコーラを1000円で売る方法』という意表を突く題名の本だった。シリーズ3冊で計60万部を超えるベストセラーになった。
著者はマーケティング戦略アドバイザーとして活躍するウォンツアンドバリュー株式会社代表の永井孝尚氏だ。顧客の要望を何でも聞き入れる「顧客絶対主義」を戒める一方、自社の強みを生かして顧客に期待以上の満足を与える「顧客中心主義」を提唱する。これで価格競争に陥るのを避け、戦わずして勝つ。それがバリュー・プロポジションの極意だという。
「高品質なのに低収益」の体質から抜け出せない日本企業。組織に自分を高く売ることができないビジネスパーソンたち――。企業も人も自分の強みを発揮するにはどうすればよいのか。著者で元日本IBM株式会社のマーケティング・マネジャーだった永井氏に、事例を参考にバリュー・プロポジションの活用法を聞いた。

コールセンター・ビジネスで、バリュー・プロポジションに目覚める

――永井さんはご著書の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)の中で、「顧客絶対主義」や「価格競争」の弊害を指摘し、バリュー・プロポジションの重要さを力説しておられます。バリュー・プロポジションとはどういうものなのか、説明していただけますか。

永井 一言で言うと、①顧客が望んでいて、②競合他社は提供できず、③自社が提供できる、そういう価値のことを言います。「図表1」にあるように3つの円を描いた時、赤く塗られている部分がそれに当たります。出発点は顧客ですが、その要望を全部受け入れれば良いわけではありません。大切なのは顧客が何に価値を感じるか、そのニーズを徹底的に絞り込むこと、そして他社と同じことはやらないことです。

バリュー・プロポジションとは

図表1:バリュー・プロポジションとは

私がバリュー・プロポジションという言葉を初めて聞いたのは、1998年に日本IBMで製品開発マネージャーからマーケティング職に異動した時でしたが、最初は意味が良く分かりませんでした。要するに「お客様がお金を出してどうしても買いたくなる理由」のことだと身をもって分かったのは、その後、マーケティング戦略を実際に考え、実施するようになってからのことです。
私はコールセンターソリューションを企業のお客様に開発・販売する事業部にいました。コールセンターはIT製品やサービスの塊なので、コールセンターの構築はITベンダーにとっては大きなビジネスでした。このコールセンター市場は当時、年20~30%で成長しており、ベンダーは日本IBMの他にもたくさんありました。そこでバリュー・プロポジションを念頭に置いて、他社には提供できないIBMだけができることはなんだろうと考えたのです。

当時のコールセンターは、「早急にお客様へ対応できる体制を作らなければ」と考えた大企業の各部門が、業務や場所ごとにバラバラに設置していました。このためお客様が電話するとたらい回しにされ、かえって満足度を下げているのが実態でした。
コールセンターには、あらゆる業務分野の問い合わせやクレームが、電話、ファックス、メールなどで飛び込んできます。大企業ではそれらを1つのコールセンターに統合することが急務でした。そして当時日本でコールセンターを販売するベンダーの中では、日本IBMだけが社内に経験とお客様にご紹介できる事例を持っていました。実際、幕張にある日本IBMのコールセンターには年間100社もの企業が見学に来られて、「ウチも同じことをやりたい」とおっしゃっていました。
私は「お客様は統合を望まれている。それはIBMしか提供できない強みである。これこそIBMのバリュー・プロポジションではないか」と気付きました。お客様の最優先課題を解決できるのが自分たちだけならば、価格競争は避けられますよね。そしてこのバリュー・プロポジションに基づき、IBMコンサルティング部門と一緒になってIBMのコールセンター統合経験をお客様に提供できるようにしたり、大企業のコールセンター長をお招きし定期的に大きなイベントを開催してIBMの知見をご紹介したり、コールセンター案件を持つIBM直販営業とタイムリーに情報共有する仕組みを作りました。
こうしてマーケティング・マネジャーの立場で、バリュー・プロポジションに基づいてコールセンターのビジネス関係者の力を結集できるようにし、ビジネスを成功させたことが、私の原体験になっています。

永井孝尚氏

ニーズをあれこれ聞く前に、ニーズを先取りして提案する

――『100円のコーラを1000円で売る方法』は、マーケティングの本には珍しく若い女性を主人公にした小説仕立てです。タイトルも「おっ!」と人目を引く。出版までにはどんな経緯があったのですか。

永井 当時流行し始めていたブログを、会社の了解を取って書き始めたのがきっかけでした。デフレが進行していた頃で、「価格勝負を何とか価値勝負に変えたい」と悩むビジネスパーソン向けに、マーケティング戦略の考え方を書いていました。反響があったので出版社に話を持ち掛けたら、「ブログと本は違う」と相手にされませんでした。それなら自分で出そうと2008年に自費出版し、それを小説風に書き直したのが『100円のコーラ…』(2011年)なのです。

すると経営者の方々から講演依頼が来るようになりました。皆さん、「社員が価格勝負ばかりやって、収益率が下がる一方だ」と深刻に困っておられた。しかし私は日本IBM社員として本業の仕事があり、お応えできませんでした。そこで講演・研修・執筆に専念しようと51歳の時に退社し、独立したのです。

――今でも「お客様は神様だ」とばかり、顧客絶対主義でビジネスをする人は多いと思います。どこに問題点があるのでしょうか。

永井 顧客絶対主義は、別の言い方をするとニーズ対応であり、受動的です。他社も同じようなやり方でやるようになると価格競争の消耗戦に陥ります。むしろニーズをあれこれ聞く前に、「本当はこういうものが欲しいのではありませんか」「こういうやり方もありますよ」と、ニーズを先取りして提案する。これが私の提唱する顧客中心主義です。いわば顧客絶対主義の対極にあると言えます。
講演会で「あなたはモノを買う時はどういう理由で選びますか」と聞くと、多機能だから買うという人はほとんどゼロ。低価格だからは5%ぐらい、残る95%は利便性とか自分の価値観に合うという理由で選んでいます。

ところが同じ人が売る側に回ると、「うちはどこよりも安くします」とか「どんな要望にも対応できます」とか、まるで逆の行動を取ってしまう。立場が変わると対応が180度変わっているのです。これは消費者の立場では「感動が欲しい。でも期待を超えるものは少ない」と考える人が、企業の立場になった途端に「ニーズに対応すればいい」と考えるからです。
お客様ニーズに受け身で対応するだけでは、お客様の期待は超えられません。お客様が感動し、お客様の方から「ぜひ買いたい」と思っていただくには、お客様の期待を超えることが必要です。

永井孝尚氏

都会のカップルをターゲットにした「日本一の星空」の村

――バリュー・プロポジションがマーケティングの現場でどのように活用されているのか、分かりやすい事例で教えていただけますか。

永井 まず長野県阿智村のケースをお話しましょう。この村では1970年代に温泉が発見されました。名古屋からちょうど開通直後の中央高速を走って2時間で来られる地の利もあって、中京工業地帯にある製造業の団体客が押し寄せ、1990年のバブル絶頂期まで急成長しました。ところが、その後は一進一退。2008年のリーマンショック以降は次第に客足が減り、20軒ある旅館同士が値下げ競争をするようになりました。

しかし阿智村の大多数の人は「そのうち何とかなる」と思っていたのが現実でした。そんな中、「このままでは子どもたちに阿智村を渡せなくなる」という強い危機感を持っていたのが、ある温泉旅館で企画課長をしていた松下仁さんです。松下さんは具体的に「どうすれば解決できるか?」と行動を始めました。そしてセミナーで、観光の観点で地域づくりをしているJTB中部の武田道仁さんと出会い、2人の挑戦が始まりました。

実はバブル期には全国で2200カ所ほどあった温泉は、温泉ブームで3000カ所余りに増えており、もはや「温泉」というだけでは売り物にはなりません。「何か売り物はないか?」と話し合っているうちに、近くにあるスキー場のスタッフが、夜中にゴンドラを動かして、山頂のスキー場で満天の星空を楽しんでいるらしい、という話が出てきました。実際に行ってみると満天の素晴らしい星空でした。実は阿智村は、環境省が2006年に「日本で一番星空が輝いて見える場所」に認定していたのです。
そこで松下さんたちは、「この星空の強みを観光に生かしたらどうか」と目を付けたのです。ターゲットは都市圏などの若いカップル。そして夜、ゴンドラで標高1400mまで上がりロマンチックな星空を楽しむナイトツアーを展開することにしました。また、漆黒の闇と静寂の中を歩く「ナイト・フォレスト・トレッキング」、星の神話とロマンのトークバラエティ「ストーリー・オブ・スターズ」を始め、曜日によってはライブ演奏なども開催することにしました。
最初の年の来場者は6500人でしたが、昨年は11万人に成長しました。温泉旅館の稼働率は5割から9割以上に上昇し、常に満室。若い人たちやファミリーに大好評を博しています。自分たちの強みを発見することから出発し、阿智村ならではのバリュー・プロポジションを作って展開した結果、見事に成功した事例です。

永井孝尚氏

過去の成功体験から抜け出せない日本企業

――日本企業は「高品質なのに低収益」と言われます。マーケティング戦略の視点から見ると、原因はどこにあるのでしょうか。

永井 顧客のニーズに何でも応えようとするあまり、お客様が「どうしても欲しい」という肝心のバリュー・プロポジションを提供できていないことが原因だと思います。
最近我が家で、ある商品で実体験しました。ドライヤーです。先日妻が買ったダイソンのドライヤーは大風量が出るだけ。これがいいのです。普通のドライヤーの風量は大きくなく、熱風が出ます。でも熱風は髪を痛めるし、乾くのに意外と時間がかかります。ダイソンのドライヤーは大風量で早く乾き、熱風ではないので髪も傷めません。妻が使い始めて10日ほど経って気が付いたのですが、髪がつややかになっていました。これは「髪を大切にしたい」というターゲットの女性に、「少々高くてもどうしても欲しい」という買う理由を提供した好例ですよね。日本企業の中には、ここまで「どうしても欲しい」という理由を絞り込めないことから、いろいろな機能を切り捨てられないことが多いように思います。
このように、日本企業の課題はお客様を切れないことです。多機能なモノを安く大量に提供すれば、お客様に喜んでもらえるという過去の成功体験があるので、その発想からなかなか抜け出せない。意思決定の立場にある年上の人たちが割とそういう考え方をします。

もう1例はiRobotの自動掃除ロボット・ルンバです。実はある日本の大手家電メーカーがルンバより先に同じタイプの自動掃除ロボットを検討していました。
しかし、役員会で「もしモノにぶつかって何かを壊してしまったら、誰が責任を取るんだ?」といった議論をしているうちに、企画が流れてしまいました。すべてのお客様に完璧なものを提供しようとするあまり、タイミングを逸してしまったのですね。

ルンバは今、自動掃除ロボット市場の7割を占めています。他社の10以上の類似品は、全部合わせても3割。なぜこんなに強いのか。実はiRobotは家電メーカーではありません。「ロボットで世の中をよりよくしたい」と考えた創業者が始めた会社です。そして当初から、ルンバ以外に14個のビジネスモデルを考えていました。「原子力発電所の検査用ロボット」とか「血管で人体検査する極小ロボット」といったものまでありました。その1つひとつに仮説を立て、「お客様が買う理由」を検証しました。その中でお客様が喜んでお金を出すことが分かり、商品化して試行錯誤の末に新市場を生み出したのが、自動掃除ロボットのルンバだったのです。つまり現在のルンバは、仮説検証の膨大な蓄積が生み出した産物なのです。

若い世代にもっと権限を委譲し、失敗体験の共有を奨励する

――そういう企業の体質を変えるには、どのような経営変革が求められるのでしょうか。

永井 私たちの国、日本には根回しを重視する文化があり、みんなの合意を取り付けることが前提なので革新的なモノを作るのが難しいといった面があります。新しいことをやる時に根回しして上の人の承認をもらうのは、お客様の求める価値とは何の関係もないことです。海外企業で成長しているところは、そんなプロセスは飛ばしてまずは自分たちでやってしまいます。

日本企業も、志を持っているミドル層や若い人たちにもっと権限委譲して、少人数のチームでどんどんチャレンジさせるべきだと思います。阿智村のケースも、初めは松下さんたち数人が周囲の無関心や反対を押し切って動き出し、次第にいろんな人々を巻き込みながら協力を得て成功しました。
そして新しいことに挑戦し、失敗を奨励し、失敗から学び続けることです。
ルース・ベネディクトは著書「菊と刀」で、「罪の文化と恥の文化」について述べています。欧米の「罪の文化」では、過ちは告白や懺悔をすることで軽くなりますが、日本の「恥の文化」では、過ちは公になることでさらに重くなってしまいます。「失敗=過ち」と考えるから、日本人は新しいことに挑戦できないのかもしれません。
しかし本当は、失敗は恥でも何でもない。新しい挑戦には、失敗という「学び」はつきものです。そして日本人は「学び」が大好きです。「失敗は、貴重な学びである」と考えるくらいの方がいいのです。自動車のマツダの本社工場では「失敗大賞」というものがあり、チャレンジ精神を表彰しています。挑戦を楽しみ、失敗を表彰して皆で共有しているわけです。このように、組織として新たな挑戦をどんどん勧めて、結果としての失敗体験の共有を奨励するぐらいでないといけません。

永井孝尚氏

――世の中には時代の変化について行けずに没落する企業がある一方、発展する企業もあります。違いはどこから生まれるのでしょうか。

永井 コンフォート(快適)ゾーンから脱出できるかどうかがポイントではないでしょうか。株式会社セブン&アイ・ホールディングスの会長だった鈴木敏文さんは、「競う相手は他社ではない。お客様のニーズの変化である」と述べておられます。変化を無視してコンフォートゾーンに安住していれば、必ず没落します。

バリュー・プロポジションにも、必ず賞味期限があります。例えば冒頭のコールセンターですが、今はほとんどの企業ではコールセンターは統合され、当時のバリュー・プロポジションは役に立ちません。IBM自身もメインフレームから統合ソリューションへ、そしてクラウドとコグニティブカンパニーへと、たえずコンフォートゾーンから脱出して、会社の位置付けを変えてきました。

バリュー・プロポジションで戦わずして勝つ

――今年8月に上梓されたご著書の『「あなた」という商品を高く売る方法』では、個人のキャリア戦略として、企業と同じように「戦わずして勝つ」ことが極意だと強調されています。

永井 市場が細分化している今こそ、ビジネスパーソンのバリュー・プロポジションは大切になっています。例えば掃除機は、昔はひとくくりでしたが、今は吸い込み型、サイクロン型、ルンバにふとん掃除機などと特化し、トップシェアの会社はそれぞれ違う。市場や企業が細分化して行くのに合わせ、働く人たちもニーズに特化するべきです。そうすれば消耗戦に巻き込まれず、戦わずして勝つことができます。

入社間もない人も、チームの中で自分が得意分野を生かしトップになってやろうと強みを磨いて行けば、やがて課で1番になり、部で1番になり、会社で1番になり、業界で1番になれます。他人と同じ価値で勝負するのではなく、バリュー・プロポジションを考えて、自分が1番になれるエリアを決めて広げて行くことが大切です。

永井孝尚氏

AIで定型業務はなくなるが、生まれる仕事もある

――ところで、AIが急速に発達し、職種や仕事の中身がどんどん変化して、10年後20年後にはなくなる職種が増えると言われます。どういう心構えが必要でしょうか。

永井 よく言われているように、これからは定型業務ではなく非定型業務が中心になります。「ヨーロッパ最高の知性」と言われるジャック・アタリは著書『21世紀の歴史』の中で、「歴史上、人類は不便を緩和するために常にテクノロジーを発展させ、個人の自由に最大限の価値を置き、何ごとからも自由である状態を目指してきた」と述べています。蒸気機関車は駅馬車をなくしましたが、代わりに鉄道が生まれ、駅に隣接して百貨店が誕生しました。

AIやロボットも、何かをなくす代わりに別の何かを生み出すでしょう。自動車と競走して勝とうという人はいませんよね。急速に進化するAIやロボットと競争しても勝てません。変化を拒まず積極的に受け入れて、自ら進化することが大切です。

1例ですが、いま林業は伸びています。どの木を切ればいいかはレーザー計測が教えてくれ、伐採はロボットが行います。弁理士だと、過去の事例を調べる定型業務はAIに任せ、企業の競争力の源泉である特許や発明といった知財をいかに活用するかを企業に提案する知財コンサルタントに移行して行く。
栃木県にあるカメラチェーン店のサトーカメラは高収益で有名です。店員さんはお客様とじっくり話をし、写真のプリントを一緒に選びます。業績を伸ばすため、お客様とムダ話をするための研修までやっている。一見非効率ですが、コンピューターでは代替できないムダ話が付加価値になり、利益の半分はプリントから生まれています。

今は、自分で考え行動する「自律型人材」が求められる時代です。「図表2」にあるようなフレームワークを使って、自分がどうやって生きるかを考えてみるのもよいでしょう。

バリュー・プロポジションをつくるフレームワーク

図表2:バリュー・プロポジションをつくるフレームワーク

――永井さんはこれまでご著書を12冊上梓され、今年8月に出版された『「あなた」という商品を高く売る方法』も大好評です。今なぜ永井さんの本が共感を呼ぶのか、ご自身のバリュー・プロポジションをお聞かせください。 

永井 いま、この国全体が「自社や自分の価値とは、何か?」を知りたがっているからではないでしょうか。ここで役立つのがマーケティング戦略の考え方なのですが、現実には「マーケティング戦略は専門用語が多くて難しい」と敬遠されがちです。そこで私はマーケティング戦略全体をカバーしつつ、専門用語を使わずに難しいエッセンスを分かりやすく伝えることを心がけています。読者はビジネスパーソンに留まらず、企業の経営者もいれば小学生もいます。専門用語を取り払うと、後に残るのは本質的なエッセンスです。企業の経営者と小学生に共通するのは、本質的なエッセンスを見極めることですよね。私はもともとIBM大和研究所に所属していて、35歳まで製品プランナー、製品開発マネージャーなどを担当していたので、マーケティング部門に異動した時は苦労しました。仕事にすぐに役立つマーケティングを1から学びたい読者の視点に立てるところが、自分のバリュー・プロポジションかなと思います。

TEXT:木代泰之

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