黒田潤一氏

大学在学中に起業したスポーツスクールで、子どもの笑顔を記録するため手にしたドローン。その魅力に心を奪われた黒田潤一氏は、単身上京し、3カ月後には24歳の若さで「株式会社Drone Games」を立ち上げる。
間もなく東京・秋葉原で開催したドローンレースは話題を呼び、フジテレビ、ドワンゴ、Jリーグ、立命館大学など、名だたる大企業や団体とコラボレートし、エンターテインメントを中心としたドローンビジネスを次々と成功に導く。
ドローンビジネスにかける情熱はいかにして生まれたのか。若き経営者・黒田氏にドローンの秘めたる可能性や業界の動向について話を聞いた。

スターウォーズのポッドレースさながらのドローンレース

——「空のエンターテインメントを創出する」をキャッチフレーズに、エンターテインメントに特化したドローンビジネスを展開されていますが、日本で初めてドローンレースを企画したのも黒田さんなのですね。

黒田 はい、2015年に開催された日本初のドローンレース「Japan Drone Championship」の企画運営を行いました。きっかけは、YouTubeにアップされていたフランスのドローンレースの動画を目にして、これは非常に面白いと思ったことでした。最初に見た時には十数万回程度の再生だった動画の視聴回数がどんどん伸びていく傍ら、私もすぐにレース開催に向けて動き始めました。

——ドローンレースとはどういうものですか。

黒田 ドローンレースは2014年ごろから北米や欧州、オーストラリアなどでスタートした、新しいモータースポーツです。ドローンに搭載したカメラの映像を専用ゴーグルに無線で飛ばし、操縦士はその映像を見ながらドローンをコースに沿って飛行させ、タイムや順位を競います。ドローンに乗り込んで操縦しているような体験ができることがユニークです。また、100㎞を超える速度が出るため現実以上の迫力を体感できます。

さらに、加速度にも特徴があります。ドローンはバッテリーをエネルギー源とし、モーターに一気に電圧をかけることでプロペラを回すことができるので、速度は段階的に上がるのではなく100㎞まで瞬時に上がります。こうした動きは他のモータースポーツには珍しく、見る人を不思議な感覚にさせます。ドローンレースは、映画「スターウォーズ」のポッドレースのようだとよく表現されますが、実にその通りですね。

Drone Gamesと協力関係にある「THE DRONE RACING LEAGUE」のイメージ動画

——日本初のドローンレース開催にこぎ着けるのは大変だったのではないですか。

黒田 フランスのドローンレースのYouTubeを見て、ドローンレースの開催をどうしても実現させたいと考えた私は、大学在学中から関西で運営していたスポーツスクールを友人に託してすぐに上京し、実現に向けて動き出しました。

日本で開催されたことがないイベントだったので準備は色々と大変でしたが、逆に新しいモータースポーツということもあり、縛りが何もなかったことが幸いし、上京から3カ月でレースを開催することができました。ラジコンの老舗メーカー「京商」にもご協力と多くのアドバイスを頂きました。ラジコンショップにレースの宣伝用のチラシを置いてもらい、SNSでもどんどん発信しました。なにより、多くの有志の方々の支えがあってこその実現でした。

レース当日、会場はあっという間に満杯になりました。200人近く集まったと記憶しています。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でも放映して頂きました。秋葉原のラジコンショップが多いエリアにある「東京アーツ千代田3331」を会場に選んだことなどが、イベントが成功した要因だったと思っています。

黒田潤一氏

ドローンの魅力に取りつかれ、安定志向から一転

——在学中からスポーツスクールを運営されていたとのこと。昔から起業志向だったのですか。

黒田 いえ、安定志向でした。公務員になり、子どもは2人で、家を35年ローンで買おうと真剣に思い描いていたくらいです(笑)。大学では体育の先生を目指して学び、教員免許も取りました。

学生時代にスポーツスクールを起業したのは、そもそもは先生になるためだったのです。教員採用試験の面接でアピールできる経歴が欲しいと考え、2012年、20歳の時にスポーツスクールを起業しました。スクールは子ども向けのもので、アメリカのスポーツ科学の分野でも注目を浴びていた、自分の体を思いのままに動かす能力を向上させる「コーディネーショントレーニング」を中心に行い、多くの生徒が集まってくれました。

初めは学校の先生になる目的を達成するための起業でしたが、努力した分だけ生徒が増え、運動会で活躍できたことを感謝されるなど、ダイレクトに成果を受け取れることがうれしく感じました。思いついたアイデアをすぐに形にできることもエキサイティングで、気がつけば経営することの楽しさに目覚めていました。そうして、先生になることは辞め、起業家の道に歩みを進めることになったのです。ドローンとの出会いは、それからすぐのことでした。

黒田潤一氏

——ドローンの魅力に気づいたのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

黒田 運営していたスポーツスクールでは、他のクラブとの差別化を意識して、新しいテクノロジーを用いたさまざまなサービスを提供していました。その一つとして、子どもたちが運動している様子をドローンで撮影して、映像をご両親にプレゼントしたらきっと喜ばれるのではないかと考えました。そこで早速ドローンを購入し、練習のために自宅の庭でドローンを飛ばしました。すると、これがかなり面白かったのです。ドローンは操縦が簡単で、飛行が安定しているため、思い通りに動かせます。空飛ぶものを自在に操れることに純粋に感動し、夢中になって飛ばし続けました。

十分に練習をしてから、スクールに持って行き子どもたちの前で飛ばすと、「先生、魔法使ってるの?」「UFOが飛んでる!」とみんな大騒ぎしながら、ドローンをじっと見つめていました。その時、ドローンは流れ星やホタル、花火のように、人を釘付けにする魅力を持つものなのだと直感したのです。

そして、ドローンについて掘り下げて調べていくうちに、ドローンをプラットフォームとして、ハードウェアやソフトウェアを組み合わせると、広い分野で活用できる可能性があることを知りました。そこでいち早く取り組みたいという思いから上京し、2015年9月にDrone Gamesを立ち上げたのです。

黒田潤一氏

——なぜ、地元の関西ではなく東京でと考えたのですか。

黒田 新しく事業を立ち上げる場合は、未開拓の分野に乗り出すか、あるいは、すでにある事業分野で隙間を狙うか、のいずれかの選択が多いのではないでしょうか。私たちの事業は前者で、その利点を生かすためには、他社よりできる限り先行してビジネスを展開する必要がありました。東京は「ヒト・モノ・カネ」さらに「情報」が集中し、活発に流動しているので、スタートアップで何かを始めるなら東京が最も効率的だと判断しました。

——2015年頃ですと、ドローンの知名度はまだ低かったように思われます。起業することに不安はありませんでしたか。

黒田 そこまで大きな不安はありませんでした。人工知能やVR、フィンテックと並び、ドローンがこれから盛り上がっていくだろうということは、海外を中心に話題になっており、私もさまざまな情報に触れるなかでそう感じていました。そして、実際に営業するようになると、情報感度の高い人たちを筆頭にドローンの可能性を探っている人がたくさんいることがわかり、ドローンがビジネスになるという予感は確信に変わっていったのです。

また、ちょうどこの年に航空法の改正があり、「ドローン規制法」が施行されました。それまでドローンについての明確なガイドラインがなく、業界発展の足かせになっていました。法整備が進んだことで、業界参入する大手企業が増えていくと見込まれ、確信がさらに確固たるものになりました。

黒田潤一氏

「収録」が「生」を凌駕――空撮の驚くべき力を実感

——エンターテインメントに特化したビジネスを展開されていますが、なぜドローンの持つエンターテインメント性に着目したのですか。

黒田 まず、ドローンレースを純粋に面白いと感じました。加えて、エンターテインメントに対するニーズが、これから一層高まっていくだろうと考えてもいました。今後さまざまなことが自動化され、人々の可処分時間が増えると言われており、そうなると、人はエンターテインメントにより多くの時間を費やすようになると思ったのです。

どのようなエンターテインメントが求められるか。例えば、街中でプロレスを繰り広げる「DDTプロレス」など“絵力(えぢから)”、つまり見た目に迫力があり非日常を体験できるエンターテインメントにとりわけ可能性を感じました。ドローンレースもそういった種類の一つであり、エンターテインメントの立役者として活躍していくだろうと考えました。

——エンターテインメント事業以外に、コンサルティング事業も手掛けられていますね。

黒田 コンサルティング事業の中で印象深かったのは、「もしもしにっぽん」が毎年東京で開催している日本最大級のインバウンドフェスティバル「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL 」にてフジテレビと共同プロデュースしたドローン体験アトラクション「DRONE VISION」です。
ドローンを操縦する楽しみはもちろんのこと、ドローンによって撮影される不思議な空間やドローンが飛行する神秘的な光景を楽しんで頂くことができる「DRONE VISION」は、たくさんの外国人や女子高生に体験して頂きました。ドローンを用いたノンバーバルなエンターテイメントにより、本来なら届かなかった層にドローンの魅力を届けるこができました。

もう一つ、ドローン業界の発展という意味合いで手ごたえを感じたのが、ドローン操縦者として参加させて頂いた「パナソニック・エボルタチャレンジ」での体験です。エボルタチャレンジとは、電機メーカーのパナソニックが「エボルタ」という乾電池が、いかに長持ちするかを実証するために行っている公開イベントです。私が参加した2016年には、電池だけで飛ぶ有人飛行機が最長飛行距離にチャレンジする企画が行われ、その模様をドローンで空撮し、ニコニコ生放送で配信されました。

配信された飛行映像からは、現場で自分の目で見て感じた以上の迫力が感じられ、驚きました。例えば、ミュージシャンのライブなどでも、収録が生ライブを超えることはこれまで難しかったと思っています。どうしても現場で見る方が、臨場感もあり感動が大きい。ところが、このエボルタチャレンジの空撮では逆転現象が起こったのです。空撮だと俯瞰的な映像になるため、人はほんの小さくしか映らず、翼が巨大に見えます。すると、乾電池でこんなに大きなものを飛ばしているのだということが、より鮮烈に伝わるのです。つまりドローンを使った空撮には、視点を変え、現場で見る以上の新たな情報や感覚をもたらす効果があると実感しました。

黒田潤一氏

ドローンに触れてもらい、悪いイメージを払拭

——さまざまな可能性を持つドローンですが、なぜもっと急速に広まらないのでしょうか。

黒田 日本は世界に比べて、ドローンに関連するイメージがまだあまり良くないため、実証実験はされていても実用化に至っていない事例がまだまだ多いです。イメージの悪さが、普及に歯止めをかけているところがあるかもしれません。

また、航空管制システムが完成していないのも一つの要因でしょう。他のドローンや有人飛行機、建物などにぶつかることなく、飛行禁止区域を避けて飛ぶことができ、地上から航空交通の指示を出す仕組みづくりが必要です。現在、国内でも、航空管制システムの開発の動きがみられ、完成が待たれます。

一方で、日本で栽培されている食べられているお米のうち結構な量が、ドローンが農薬をまいて作られたものだったりするのをご存知ですか。農業や測量における活用など、じわじわと利用用途が広まってきているのも事実です。

——墜落事故など、ドローンのネガティブな面も取りざたされていますが、そういったこともドローンの普及を遅らせているのでしょうか。

黒田 確かに、ドローンは絶対に落ちないとは言えません。しかし、衝突回避センサーやRTH(自動帰還機能)など、安全性能は飛躍的にぐんぐん向上しており、いまや墜落させる方が難しくなってきているといっても過言ではありません。

さまざまな私の経験から、操縦体験等を通じてドローンに触れた大多数の方は、良いイメージを持ってくれる印象があります。ドローンに対する世間の誤解がなくなり、もっと活用したいという気運が高まれば、規制緩和への弾みにもなると思います。そこで私たちとしては、ドローンに触れてもらう機会を少しでも増やせるような活動をし、エンターテイメントからドローンの普及に努めたいと考えています。

——今後ビジネスで挑戦してみたいことはありますか。

黒田 2025年頃には、カジノを含む総合型リゾート「IR」が日本で数カ所オープンすると言われており、そこでドローンレースを開催してみたいです。IR施設全体に占めるカジノ面積は3%までとすることが決まっており、その他の面積ではカジノ以外のエンターテイメントショーが求められています。来場された方々にエキサイティングなドローンレースを観戦して頂き、楽しんでもらいたいと思っています。

また、ドイツの自動車メーカー「ポルシェ」がドローンタクシーの開発に参入するとのニュースも耳にしました。もしかすると近い将来、人を乗せたドローンタクシーが空を飛び交っているかもしれませんし、ドローンでしか実現できないビジネスは他にもたくさんあると思います。まさにドローンは可能性の宝庫なのです。

 

TEXT:大西由花(POWER NEWS)

黒田潤一(くろだ・じゅんいち)<br />
株式会社Drone Games代表取締役

1991年、兵庫県稲美町で生まれる。体育教師を目指し大学へ進学。大学在学中にスポーツスクールを開いたことをきっかけに、起業家の道へ。ドローンの魅力を伝えようと、2015年に株式会社Drone Gamesを設立。主にエンターテインメント事業やコンサルティング事業を行い、映像制作ではプロデューサーとしても活躍する。