1977年にエピソード4が公開されて以来、多くの熱狂的なファンを生み出してきた映画「スター・ウォーズ」。ダース・ベイダーなどの多くの魅力的なキャラクターや神話をモチーフにしたとされるストーリーもさることながら、作中に登場する近未来テクノロジーの数々も作品の人気を支える重要な要素です。

2018年6月にはスピンオフ映画「ハン・ソロ」の公開を控えていますが、本作の主人公であるハン・ソロが操る宇宙船ミレニアム・ファルコンの性能について、IBMが現代のテクノロジーで再現可能かどうかを検証しました。

IBM サイエンス&スター・ウォーズ

「IBM サイエンス&スター・ウォーズ」と題したWebページでは、スター・ウォーズに登場するテクノロジーとそれに迫る現在のテクノロジーとの比較検証を、動画を中心に行っています。エピソード1は劇中でおなじみの武器、ライトセーバーをレーザーによって再現し、エピソード2ではIBM WatsonのAPIを利用してドロイドを試作しました。いずれのエピソードでもファン必見のテクノロジーが紹介されていますが、中でもとりわけ興味深いのがエピソード8のスペース・トラベルです。

スター・ウォーズのようなSF映画の中では、宇宙船を駆って銀河系を旅する様子がごく当たり前のように描かれています。ハン・ソロが操るミレニアム・ファルコン号も、外見こそくたびれていながら光速の1.5倍の速度で航行することができる「宇宙最速のガラクタ」と呼ばれています。

ところが、21世紀初頭の現在、人類は銀河間どころか恒星間の航行すら満足に実現できていません。宇宙空間は私たちの想像を絶するほどに広大で、残念ながら現有するテクノロジーで銀河間航行を実現するのはほぼ不可能だろうと考えられています。

量子コンピューターの性能

とはいえ、そうした壁を突破すべくさまざまな取り組みが行われているのもまた事実です。「IBM サイエンス&スター・ウォーズ」 エピソード8で紹介されている量子コンピューターの活用もその一つ。 量子コンピューターとは、量子力学の原理をフルに活用して動作するコンピューターです。私たちが日ごろ目にしているコンピューターとは異なる原理で動作し、特に複数の要素の中から最適な組み合わせを選び出すような処理においてその力を発揮します。

「巡回セールスマン問題(※1)」などの例からも分かるように、ある要素群の中から最適な組み合わせを求めるための計算は構成要素の数が増えるほど複雑化し、そのために必要となる計算量も爆発的に増加します。量子コンピューターを使うと、こうした問題に対する最適解を従来のコンピューターよりも高速にはじき出すことが可能です。

(※1)「セールスマンが複数都市を1度ずつすべて訪問して出発点に戻る際、移動距離が最小になる経路」を求める問題。スーパーコンピューターなどを用いても最適なルートを求めることは困難とされている。

量子コンピューターがハイパードライブ航行を可能にする?

ミレニアム・ファルコン号には、宇宙船を異次元空間に突入させ、惑星間の距離でも瞬時に移動することのできる「ハイパードライブ」という機能が備わっています。ハイパードライブモードに突入する際には座標計算を行いますが、広大な宇宙空間に散らばる無数の座標の中から最適な航行ルートをはじき出すには、量子コンピューターに似たテクノロジーが活用されていると推測できます。

言い換えれば、量子コンピューターを用いて宇宙規模の座標計算を行うことができれば、いずれはハイパードライブのような超高速航行を支えるシミュレーション・システムが実現するかもしれません。 もちろん、仮にそうしたシステム開発に成功しても、すぐに銀河間航行が可能になるわけではありません。

それでも、人々を魅了して止まないスター・ウォーズのテクノロジーが、現在のテクノロジーからまったくかけ離れたものではないと言える可能性は残されています。 ともあれ、私たちが銀河系を自由に飛び回れる日が来るか来ないかは、「May the Force be with you(フォースとともにあらんことを)」の精神で気長に待つことになりそうです。

photo: Getty Images