サイを密猟から守る、IoT活用の仕組みとは?

IoT(Internet of Things)はしばしば「さまざまなモノをインターネットにつなげるための仕組み」と説明されますが、別の観点から見ると、それまでデジタルの世界の中でしか実現できなかったさまざまな「魔法」を、私たちが生きるリアルな世界に起こすための技術だと考えることができるかもしれません。

IoTテクノロジーは何をもたらしたのか

事実、近年のIoTテクノロジーの進化・発展によって、10年、20年前には想像もつかなかったようなことが可能になりました。

たとえば、工場やプラントなどでは、機械類に取り付けたIoTセンサーから稼働状況などのデータを収集・分析することで、機械が故障する時期を予測できるようになりました。また、医療分野では極小の半導体やセンサーを組み込んだ「スマート・ファブリック」と呼ばれる素材で作られた衣類を利用し、患者の体調や病状をリアルタイムでモニタリングする試みも活発化しています。

昨今、話題を集めている自動運転車にもIoTテクノロジーが応用されていますし、より身近なところでは電子レンジや冷蔵庫といった家電製品がインターネットにつながり、料理レシピの自動ダウンロードや食材管理の自動化といった機能が次々に実用化しています。

高速な演算やリアルタイムで行われる情報の保存・提供など、これまではデジタル領域の専売特許のように考えられてきた処理が、IoTというテクノロジーによって物理領域へと持ち出されつつあるのです。

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絶滅危惧種のサイをIoTで救え!

そんなIoTのユニークかつ有意義な活用事例の1つが、絶滅危惧種であるサイを救うための取り組みです。

サイには頭部に生えた2本の大きな角がありますが、その角が漢方薬の素材などとして高価な値段で取引されており、密猟が跡を絶ちません。密猟数は年を追うごとに増加し、南アフリカのヴェルハヴォンデン・ゲーム保護区では、過去10年間で7,000頭以上ものサイの命が、密猟者によって奪われたといいます。

このサイを救うために、IoTテクノロジーが活用されています。具体的には、同保護区内に生息するシマウマやインパラなどにIoTセンサーを取り付け、センサーが発信するデータをIBMクラウド上で記録・分析。割り出したデータをもとに密猟者の行動を補足し、密猟を未然に防ぐのに役立てています。

外敵に敏感なシマウマやインパラは、密猟者が保護区に入ると慌てて逃走します。この時の動きを補足・解析し、密猟者が接近した時の動作のアルゴリズム・パターンを割り出します。そして、特定の行動パターンを受けて警告システムが発動するシステムを構築し、被害を未然に防ぐ仕組みを実現しました。

広大な保護区を常に有人監視しつづけるのは簡単なことではありませんが、IoTテクノロジー、そしてシマウマやインパラのような草食動物たちの力を借りることで、スマートなセーフティーネットを張り巡らすことに成功したのです。このシステムはサイだけでなく、アフリカゾウやライオンといったその他の絶滅危惧種を救う手段にも活用できるかもしれません。

IoTがデジタル技術を「リアルな世界」へと拡張したことで、スマホやパソコンを使わない動物や植物にもテクノロジーの恩恵がもたらされる――それは我々にとっても、そしてこの地球にとっても、意味ある一歩だと言えるのではないでしょうか。

photo:Getty Images