callforcode

人類は科学を発展させることで高度な社会を築き上げましたが、今なお自然災害の猛威から完全に逃れることはできずにいます。一昨年2017年は、全世界規模で自然災害による甚大な被害が目立った年となりました。日本国内では、2018年にも豪雨による水害や地震などが発生しました。そうした中、自然災害という強大な敵を打ち破り、人々が安心して暮らせる社会を築き上げるため、グローバル規模の取り組み「Call for Code」が産声を上げました。

世界中の開発者が参加する「Call for Code」とは?

IBMは2018年5月24日、Linux Foundationを始めとするパートナー団体とともに、「Call for Code」という取り組みを発表しました。

Call for Codeとは、世界中の開発者が一堂に会し、さまざまな社会問題の解決に挑む試みです。2018年から5年間にわたって継続される予定で、この間、IBMが投資する年間3,000万ドルの資金は、開発者向けに提供されるツールやテクノロジー、無償で利用できるソフトウェアのソースコード、専門家による起業トレーニングなどの原資となります。つまりこの取り組みは、社会問題をテーマにした開発を促し、さらにそれを直接ビジネスにつなげることができるため、最新テクノロジーを活用した社会問題解決の気運を高めることがねらいなのです。

バーチャル・ハッカソン「Call for Code Challenge 2018」

2018年に開催された「Call for Code」の試み「Call for Code Challenge」のテーマは「自然災害」で、自然災害に立ち向かうためのソリューションの構築を目的として、グローバル規模のコンペティションをバーチャル・ハッカソン形式で行いました。

地震や台風、猛暑、酷寒といった自然災害そのものを人間が自在にコントロールすることは残念ながら不可能ですが、AIやブロックチェーン、ビッグデータ解析、IoTといった最新のテクノロジーや手法をうまく活用することで、災害に備え、被害から迅速に復帰する一助となるようなソリューションを開発することは可能です。

例えば、ブロックチェーンを利用して柔軟性のある金融ネットワークを構築すれば、有事に際して迅速かつ安全な取引を行えるようになるかもしれません。交通機関や気象情報に基づいて物流を改善するソリューションは、災害の影響を軽減するのに大いに役立つことでしょう。

開発者たちはこのコンペティションにインターネット経由で参加し、IBMの提供するさまざまなツールを駆使してアイデアを形にすることができます。独自のアイデアをゼロから形にすることも、IBMの提供する雛形をベースにソリューションを開発することも可能です。コンペティションで最優秀に輝いたチームには20万ドルの賞金が送られるほか、開発したソリューションを実現するための長期的なサポートが提供されます。

コンペティションへの参加費用はもちろん無料。18歳以上のデベロッパーやデザイナー、起業家などが1名から最大5名までのチームで参加でき、使用するプログラミング言語やオープンソースライブラリーに制限はありません。

初代優勝者が生み出したソリューションは、情報収集ネットワーク

2018年10月29日、「Call for Code Challenge」の初代優勝チームが発表されました。優勝したのは、災害発生時に第一対応者と被災者とをつなぐためのソリューションを構築した、Project OWL。彼らは、ハードウェア/ソフトウェアの2つの部分からなるソリューションを提供しました。

まず、ゴムのアヒルのように水に浮かぶことのできる小さな端末による「clusterduck」というネットワークを使い、音声ベースのコミュニケーション網を構築します。とても感覚的なインターフェースを使っているため、被災者は第一対応者にコンタクトしやすくなります。そして、ネットワークで得たデータはOWLの災害管理システムソフトウェアに集められ、さまざまなデータと予測分析をもとにしたダッシュボードが第一対応者に提供されます。第一対応者はその分析から、災害状況の把握、物資の調整、気象パターンの学習を行うことができます。このソリューションはIBM Cloud上に構築されたIBM Watson Studio、Watson Cloud APIs、Weather Company APIsで成り立っています。

「最悪の災害においては、混乱と誤報が広がるものだ。よりよい情報とよりよい分析によって、最もその物資を必要としている人に届けることができる。このような効率性が、救うことのできる人数に影響する」――Project OWLのリーダーであるブライアン・ノースはそう語りました。

地震や台風の発生自体を防ぐことはできなくても、世界中に2,200万人存在するといわれるソフトウェア開発者の力を集めて、社会に意義ある変化をもたらすことはできるはずです。自然災害に限らず、今後もあらゆる社会的な問題を打破する、あるいはそれとうまく共存していくための有意義なソリューションが、Call for Codeから生み出されるかもしれません。

photo:Getty Images